「前代未聞で容認できない」平和賞ピレイ氏が米のICC制裁非難
今年のノーベル平和賞受賞が決まった元国際刑事裁判所(ICC)判事のナバネセム・ピレイ氏(85)は10日、トランプ米政権によるICCへの制裁措置について「前代未聞で、容認できない」と非難した。ノルウェーの首都オスロのノーベル平和センターで開かれたイベントにビデオ出演した際に述べた。
ピレイ氏は米国の対応に関して「裁判官が出した司法命令だけを理由に制裁を発表した」ことを特に問題視。「ICCの存続を巡り、多大な緊張と不安がある」と語った。
一方、9日の受賞発表後に滞在先のドイツ南部ニュルンベルクで開かれた記者会見では、各国の指導者に対し「人権を守り、戦争を避ける法的義務を果たすよう求める」と訴えた。
ピレイ氏は受賞発表時、ニュルンベルクの法廷でのイベントに参加していた。1945~46年にナチス・ドイツの戦争犯罪を裁いた国際軍事裁判が開かれた場所だ。
そこで会見に臨んだピレイ氏は、受賞は「全く予想していなかった。素晴らしい驚きだ」と語った上で、米国のICCへの圧力を念頭に「国際法と人権が重大な政治的攻撃にさらされている」と指摘。「ニュルンベルク(国際軍事)裁判以降、苦労して築き上げられてきた進歩を危うくする動きだ」と苦言を呈した。
そして「受賞により、法の支配や独立した司法、主観ではなく原則に基づく国際的な法秩序を守るために団結しなければならないという確信がさらに強まった」と述べ、世界の平和のために国際法を守ることの重要性を説いた。
最後に記者からの質問に答える形で「最も望まないのはICCへの攻撃のような、ならず者国家が独断で行動することだ」と語り、改めて米国を暗に非難した。
南アフリカ出身でインド系のピレイ氏は、同国で有色人種の女性として初の高裁判事に就いた後、国際司法の要職や国連人権高等弁務官などを歴任。現在は、ミャンマーが少数派イスラム教徒ロヒンギャに対するジェノサイド(集団虐殺)の罪で提訴された事案を審理する国際司法裁判所(ICJ)の特別判事を務めている。【ロンドン福永方人】