マスク氏と衝突 安泰ではない国務長官の立場 トランプ氏もくぎ刺す
米紙ニューヨーク・タイムズは7日、トランプ政権が進める連邦政府の人員削減を巡る6日の閣僚会議で、ルビオ国務長官と「政府効率化省(DOGE)」を率いる実業家のイーロン・マスク氏が非難の応酬になったと報じた。
トランプ氏は、マスク氏の各省庁への「介入」に不快感を示したルビオ氏を擁護し、「人事権は閣僚ら省庁トップにある」との方針を明確にした。
ルビオ氏は政権内では「良識派」とみなされ、「急進派」のマスク氏とはそりが合わないとされる。トランプ氏は両氏とも政権運営に利用したい考えだが、不協和音が高まれば、どちらかと手を切る展開も予想される。
報道によると、ホワイトハウスで開かれた6日の会議で、ルビオ氏とマスク氏はテーブルを挟んで対角線上に座っていた。
政府職員の大幅な人員削減を提唱するマスク氏は「あなたは誰も解雇していない。クビにしたのはDOGEから派遣されたスタッフだけだろう」とルビオ氏に食ってかかった。
これに対してルビオ氏は、マスク氏が主導した退職勧奨制度に国務省職員1500人以上が応募したことを挙げ、「彼らのことは数に入れないのか」と反論し、自らが構想する国務省の機構改革の詳細を説明した。
だがマスク氏は納得せず「テレビ出演は得意だ」などとルビオ氏を皮肉ったという。
トランプ氏は椅子に深く腰掛け、腕組みしながらやりとりを聞いていたが、最終的に「ルビオ氏はすばらしい仕事をしている。外遊やテレビ出演、組織運営で忙しい」と擁護。会議後には人事の権限は閣僚にあり、マスク氏やDOGEはあくまでもサポート役だと明言した。
トランプ氏は7日に「衝突などなかった。2人はうまくやっており、どちらもすばらしい仕事をしている」と記者団に述べた。
ルビオ氏を含めてトランプ政権の閣僚らは、無駄や不正の根絶による歳出削減の必要性では一致している。しかし、マスク氏がトランプ氏の威光を背景に、各省庁の人事や施策に「介入」することには不満を抱いていると報じられてきた。6日の会議は前日夕に急きょ設定されたが、ニューヨーク・タイムズは「トランプ氏が閣内で高まる不満を気にしている証左だ」と分析している。
ただ、ルビオ氏の立場も安泰ではない。2016年大統領選の共和党候補争いではトランプ氏と激しく非難し合った。ロシアのウクライナ侵攻を巡っても、上院議員としてウクライナを支援してきたルビオ氏と、ロシア寄りの姿勢が目立つトランプ氏とでは温度差がある。
トランプ氏は4日の議会向け演説でもパナマ運河の管理権奪還に言及した際、「ルビオ氏が責任者だ。うまくいかなければ、誰が非難されるかは分かるだろう」と冗談交じりにルビオ氏にくぎを刺した。第1次トランプ政権(17~21年)ではトランプ氏に異論を述べた高官の罷免が相次いだが、ルビオ氏は入閣前から米メディアで「最初に罷免される最有力候補」に挙げられていた。【ワシントン秋山信一】