ワクチン接種の「戦闘一時休止」で合意 ガザでポリオ流行の懸念
世界保健機関(WHO)は29日、イスラエル軍とイスラム組織ハマスが、パレスチナ自治区ガザ地区でのポリオ(小児まひ)のワクチン接種のため、戦闘を一時休止することで合意したと発表した。ガザでは今月中旬、25年ぶりにポリオの感染例が確認され、国連が戦闘停止を呼びかけていた。64万人の子どもを対象に9月1日から開始する。
WHOでパレスチナのヨルダン川西岸・ガザ地区を担当するペーパーコルン医師は29日にオンラインで記者会見し、「期間中、地域ごとに人道目的で戦闘を一時休止する予備的な約束を得た」と述べた。9月1日から接種を始め、ガザの複数の地域で3日ずつかけて接種する。必要な場合は延長する可能性もあるとした。ガザ地区で流行を食い止めるためには、接種率を90%以上に上げる必要があるという。
ロイター通信によると、ハマス高官は「国際機関と協力して実施する必要がある」と歓迎した。
ポリオは主に5歳以下の子どもがかかることが多く、感染者の排せつ物などを介してうつる。発症すると手足に後遺症としてまひが残ることがある。
イスラエル軍の攻撃が続くガザでは、多くの住民が衛生環境の悪い状況に置かれ、現地で支援にあたるWHOは即時停戦を訴えている。8月中旬、ガザ中部で生後10カ月の乳児のポリオ感染例が報告され、流行の懸念が強まっていた。【ニューヨーク八田浩輔】