座長「なれ合い構造あった」 名古屋市教育委の金品授受問題報告書
名古屋市教育委員会が多数の教員団体から校長職などに推薦する教員名簿とともに金品を受け取っていた問題で、調査検証チームが28日に公表した最終報告書。記者会見したチーム座長の寺脇研・京都芸術大客員教授は、名簿や金品による人事への影響は否定したものの、20年以上続いた慣習の背景について「教員集団の閉鎖的・排他的な仲間意識、なれ合いの構造があった」と厳しく批判した。
この問題を巡っては、教員人事を担当する市教委教職員課が2017~23年度に、教員団体から計1312万円(商品券含む)の金品を受領していた。報告書でチームは「外部業者など第三者からの金品授受は許されないが、教員同士であれば問題がないと考えていたなど、なれ合いの構造」と非難。市教委が教員出身者のみで教員人事を決めていたことに触れ「教員出身者と行政職員の協働体制を支える組織形態を検討すべき」と強調した。
調査の過程では「昇任候補者が校長の顔色をうかがう職場環境を生じている」との意見が外部から寄せられた。これを踏まえ、チームは「昇任に必須な校長推薦を見直すべきだ」と人事評価基準の透明化を求めた。特定大学出身者への不当な昇任といった優遇措置は否定した。
チームは、教職員課長や教育長も務めた前市長の松原武久氏へもヒアリング。松原氏は「名簿や金品の授受、(市教委が教員OBに人事異動案を事前に見せる)内覧については知らない。大変驚いている」と回答したという。
市教委教職員課では、受領した金品について職員のタクシー代や飲食経費などに使っていた。寺脇座長は推薦名簿の提出を受けた教員団体からの金品受け取りを「言語道断」と指弾。市の倫理規定運用の見直しや教員の倫理意識醸成のための取り組みの必要性を訴えた。【川瀬慎一朗】