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1942年に生まれた野口さんは3歳のとき、旧ソ連兵が侵攻した島から船で脱出。家族と共に北海道・知床半島東部に位置する現在の羅臼町に移った。その後、元島民らでつくる「千島歯舞諸島居住者連盟」に所属。80年代から返還活動を始めた。
小学生や修学旅行生に語り部の活動を行う傍ら、ビザなし交流などにこれまで30回以上参加。経験がない若い人を交流事業に参加してもらうなどし、2、3世らを同連盟の活動につなぎ留めようと尽力してきた。
だが、交流事業は2020年度以降、新型コロナウイルス禍で中断。さらに今年、ロシア側が事業停止を一方的に表明し、再開のめどは立っていない。洋上慰霊の際、慰霊の文面を読む野口さんは「北方領土に行って読むのと海の上からとでは思いが違う」と無念さをにじませる。
同連盟によると、終戦直後、約1万7000人いた元島民は約5400人まで減少。平均年齢は86歳を超え、高齢化が進む。「元島民が動けるうちに、何とか墓参に連れていってあげたい」。こうした思いを胸に、8月4日に洋上慰霊に参加する。 (了)
【時事通信社】
〔写真説明〕北方領土・国後島で生まれた元島民の野口繁正さん=12日、札幌市