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◇2州を例示
「地理的目標が変わった」。ロシアのラブロフ外相は20日の国営メディアのインタビューで、目的は親ロシア派支配地域のあるドンバス地方の「解放」にとどまらないと明言し、「(南部の)ヘルソン州やザポロジエ州などもある」と例示した。
ロシア軍は、侵攻開始から間もなくヘルソン州全域とザポロジエ州の一部を制圧した。支配を固定化する目的で、ロシアへの編入に向けた「住民投票」を強行するとみられてきたものの、反ロシアの民意も根強く、実現していない。
プーチン大統領は5月の演説で、完全支配を目指すドンバス地方について「歴史的な土地」だとの見解を示した。南部2州の占領に関しては「大義」を明確にしてこなかったが、ラブロフ氏は「非軍事化」のためにも支配の強化が必要だという立場を打ち出した。
◇「帰属棚上げ」撤回か
ロシアが南部情勢に神経をとがらせるのは、米国が供与した高機動ロケット砲システム(HIMARS)を警戒しているためだ。
「ロシアからウクライナ南部に兵器を送り込む拠点になっている」。ウクライナ国防省高官は今月16日、南部クリミア半島に対するHIMARSを使った攻撃を示唆した。
HIMARSをめぐっては、バイデン米政権が提供に当たり、プーチン政権を過度に刺激する事態を避けようと、ロシア領を攻撃可能な長射程の地対地ミサイルではなく射程約80キロのロケット弾に使用する弾薬を限定した経緯がある。
ロシアは約8年前に併合を宣言したクリミアを「固有の領土」と主張するが、ウクライナは、自国領に居座る「占領軍」を攻撃することは欧米も容認すると踏んでいる可能性がある。
ただ、ゼレンスキー政権は3月の停戦交渉時、クリミアの帰属問題を棚上げし、外交交渉で取り戻す考えを示していた。仮にクリミアを攻撃すれば、方針の撤回となる。
◇「終末の日」警告
ラブロフ氏はHIMARSの配備を念頭に、イスタンブールで停戦交渉が行われた3月末から「状況が一変した」と強調した。今月17日にはメドベージェフ前首相が、クリミア攻撃なら「『終末の日』が訪れる」と核兵器使用を警告した。
ゼレンスキー大統領は「脅迫は受け入れない」と強気の姿勢を貫くが、ロシアによる核使用の危険が現実味を増せば、欧米もウクライナ支援に及び腰になる恐れがある。 【時事通信社】
〔写真説明〕ウクライナ南部ザポロジエ州メリトポリの穀物貯蔵施設で警戒に当たるロシア兵=14日(AFP時事)