【ワシントン時事】全米各地で乳児用粉ミルクが供給不足となり、深刻な事態に陥っている。大手メーカーの操業停止が直接的な要因だが、事態を重く見たバイデン大統領は、軍需物資調達が本来の目的の「国防生産法」を発動してまで増産を促し、粉ミルク確保に躍起となっている。 「安全な粉ミルクを十分に確保するため、あらゆる手を打つ」。バイデン政権は18日、メーカーに粉ミルクの原材料を優先的に回すため、国防生産法を発動した。 全米で粉ミルク不足に陥ったのは、大手の医療関連メーカー、アボットのミシガン州の工場の操業停止が背景だ。同工場でつくられた粉ミルクを摂取した乳児4人が細菌の感染症にかかり、うち2人が死亡。2月に操業停止し、製品の自主回収に乗り出した。 同社の工場は、全米における粉ミルク供給の5分の1を担っていたとされる。新型コロナウイルス禍に絡んだ供給制約も影響し、小売店の棚から粉ミルクが無くなる事態が各地に広がった。 19日には、国防総省契約の商用機で、スイスから粉ミルク最大150万パックを輸送すると米政権が発表。「従来の物流ルートを回避することで輸入を速める」(政権高官)ことが狙いという。 一方、粉ミルクの製造は厳しく規制され、メーカーも限られるため、迅速な増産は容易でないとみられる。アボットは、米食品医薬品局(FDA)から指摘された品質管理問題の解消に努め、操業再開を目指しているが、再開できても「製品が店頭に並ぶまで6~8週間かかる」との見通しを示している。 【時事通信社】 〔写真説明〕粉ミルクが極度の品不足で入手困難となっている米国の小売店=16日、米メリーランド州アナポリス(AFP時事)