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富士山 は分かっているだけで10万年以上前から噴火を繰り返し、今の姿になった3000年前頃から江戸時代までにも20回以上の噴火の記録が残っています。今のところ最後の大噴火は1707年(宝永4年)12月に南東の斜面で起きたもので、山腹が大きくえぐれ火口には小山(宝永山)ができました。この噴火による火山灰は100km以上離れた房総半島にまで降り注ぎ、江戸の町は夜のように暗くなり、数日間太陽が顔を出さなかったといわれています。降灰量は川崎で5cmにもなりました。
一方で富士山は噴火活動をしていない期間も長く、その美しい姿から庶民憧れの山でした。真偽のほどは不明ですが、日本武尊(やまとたける)、聖徳太子、役行者(えんのぎょうじゃ=山岳信仰の祖)、空海(弘法大師)、親鸞上人、日蓮上人などそうそうたる歴史上の人物や宗教家などが富士山に登頂したと語り継がれています。
富士講(ふじこう)と呼ばれる富士山信仰はその後江戸に広まり、江戸時代中期には庶民の間で大流行します。白い行衣を着用し、金剛杖などを持った多くの人々が集団で富士山頂を目指しました。登山口のある本宮大社や東口、北口などの浅間神社は大変な賑わいにだったそう。
浅間神社の主祭神は女性の神様、木花咲耶姫 (このはなのさくやひめのみこと)です。富士山の噴火を鎮めたといわれていますが、優しくなだめたのか強く一喝したのかは定かではありません。どちらにせよ女性にしかできなかったのでしょう。3人の子を産んだことから、 家庭円満・安産・子安にご利益 があるとされています。また、 五穀豊穣や水の守護神 でもあります。木花という名前から桜がご神木です。
主祭神のほかに相殿神(あいどのしん/主祭神とともに祀られている祭神)を祀っている神社もあります。相殿神は神社によってそれぞれです。神様はそれぞれ異なった霊力があるとされていて、神社ごとにそれぞれ違うご利益が授かれます。さらに神社境内には富士山がもたらしてくれるさまざまなパワーが宿っているので、同じ浅間神社といってもそれぞれの持っているパワーも違います。富士山の麓に鎮座する浅間神社を巡る価値はそこにあります。
今回ご紹介するのは、 東口(須走)の冨士浅間神社 、北口(富士吉田)の 北口本宮冨士浅間神社 です。
冨士浅間(ふじせんげん)神社 は、 東口本宮冨士浅間神社 と呼ばれることが多い神社(正式名称:冨士浅間神社)で、富士山の東麓、御殿場市と山中湖の中間あたりにありに位置する須走登山口に建っています。
冨士浅間神社のご祭神は、木花咲耶姫と相殿神として大己貴命(おおなむちのみこと)、彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)が祀られています。 大己貴命 は出雲大社のご祭神 大国主命(おおくにぬしのみこと) と同一神とされていて、 大黒様 とも呼ばれる神様です。大黒様は『因幡の白兎』の物語にあるような、薬に長けていて優しい人柄で、そこが意中のお姫様の心を射ることができたということから、 縁結びの神様 として知られています。
彦火火出見尊 は木花咲耶姫のこどもで、母が火の中で出産したという逸話から、鎮火の神様といわれています。また、『海幸彦(うみさちひこ/海彦)・山幸彦(やまさちひこ/山彦)』の昔話に山彦として登場することから、 五穀豊穣にご利益 があります。
冨士浅間神社は、富士山東麓の緑豊かな森の中にあり、鳥居から社殿までは500mほどの参道が続いています。鳥居の手前には富士山の湧き水が流れ落ちる小さな滝 [信しげの滝] があり、マイナスイオンを感じます。鳥居をくぐるとその先には [神門(随神門)] があり、門を入るとさらに神聖な空気に満ちあふれた境内へ立ち入ります。正面に社殿が見えますが、その手前にある亀のような形をした [長壽亀石] は、その名の通り健康長寿のパワースポットです。
社殿の左側には2本の杉の木 [夫婦杉] が立っています。2本の杉は根を絡ませ、片方の木には赤ちゃんがいるような膨らみがあり、それを撫でると赤ちゃんが無事育って 安産 になるそうです。杉の木の間には石の上に祠が置かれています。この石は 貫通石祠(かんつうせきし) といって、こちらも 安産 のお守りです。
安産の前には、まず恋愛成就しなくてはその願いは遠いものになってしまいますね。社殿から裏参道を行くと、左側に根が盛り上がって、一部反対側へ抜けられるトンネルのようになっているモミの木があります。 [根上がりモミ] といって、まさしく縁結びの木です。ちょっと男性寄りの 縁結びパワースポット かもしれません。
[車]東名・新東名高速道路御殿場ICから国道18号線を富士吉田方面へ約30分、また中央自動車道富士吉田IC接続東富士五湖道路経由須走ICから約1分
[公共交通機関]JR御殿場線御殿場駅から須走浅間神社方面行き路線バスで約22分、須走浅間神社バス停下車すぐ
https://higashiguchi-fujisengenjinja.or.jp/
北口本宮冨士浅間神社(きたぐちほんぐうふじせんげんじんじゃ )は、吉田登山口に鎮座している、富士山の山梨県側を代表する神社です。781年にあった富士山大噴火の後に建立されました。ご祭神は、木花咲耶姫と彦火瓊瓊杵尊(ひこほのににぎのみこと)、大山祇神(おおやまづみのかみ/大山積神)です。
彦火瓊瓊杵尊 は、冨士浅間神社(東口本宮)の彦火火出見尊の父親で、天照大神(あまてらすおおみかみ)の孫にあたります。木花咲耶姫とは夫婦で、その愛情の深さから 夫婦和合、夫婦円満の神 として知られています。
大山祇神 は、瀬戸内海に浮かぶ大三島(愛媛県今治市)に鎮座する「大山祇神社」の主祭神で、瀬戸内海を支配していた村上海賊(村上水軍)の守り神として崇拝されました。もともとは山を支配する神様で、富士山も大山祇神の管理下にあります。木花咲耶姫の父親で、 ご利益は安全祈願、病気平癒、健康 などとされています。
両側に大きな杉と石灯籠が並んだ長い参道の奥に、国の重要文化財に指定されている本殿があります。本殿左側にある2本寄り添ったような木は [冨士夫婦檜] と呼ばれているヒノキの巨木です。根元から3mほどまで2本が合体しています。そこから上は一度2本に別れ、また12m位のところでまた一緒になるという本当に仲の良い木です。樹齢は約1,000年といわれ、 夫婦円満の象徴 として崇められています。
北口本宮冨士浅間神社にある旧吉田登山口(標高約850m)は、標高2,300m付近の富士スバルライン5合目に現吉田登山口ができたため、今は利用する人はあまりいません。しかし登山道は残っていて、5合目登山口から1合目北口本宮冨士浅間神社までを歩いて降りる“富士山下山ツアー”があります。ツアーガイド付きで全く登りのない山歩き。安全安心で見所もいっぱいで大人気です。
[車]中央自動車道河口湖ICから国道139号線で約5分
[公共交通機関]中央本線大月駅乗り換え富士急行線(特急)で約50分、富士山駅下車山中湖・御殿場方面行き路線バスで約20分、浅間神社前下車
北口本宮冨士浅間神社が最も賑わうのが、8月下旬に開催される“ 吉田の火祭り ”です。
吉田の火祭り は、毎年8月26日、27日に行われる北口本宮冨士浅間神社と浅間神社境内に鎮座する摂社(せっしゃ/本社の主祭神にゆかりのある祭神を祀った神社)諏訪神社共同のお祭りで、26日の夜は町内に置かれた高さ 3m以上もあるタケノコ型の松明(たいまつ)約90本に火が入れられ、富士吉田の夜空を赤く染めます 。
祭りは26日の午後3時頃、浅間神社で始まりの神事が行われ、午後5時頃に、浅間神社と諏訪神社の神輿2基が、本町通にある御旅所(おたびしょ/休憩所)に向かって出発します。神輿は町内を巡航した後、午後6時半頃には御旅所に到着。いよいよ松明の点灯です。松明は金鳥居(浅間神社第1の鳥居)から浅間神社までの間、一直線に伸びた約1kmの通りに並べられていて、祭りは最高潮に達します。
27日は午後2時に神輿が御旅所を後にします。その後金鳥居で神事が行われ、神輿は2手に分かれ町内を巡航。再び合流して浅間神社に帰り、終わりの神事で祭りは終了です。
この吉田の火祭りは、日本三奇祭に数えられていて、国の重要無形民俗文化財(指定名[吉田の火祭])に指定されています。
[車]中央自動車道河口湖ICから国道139号線で約5分
[公共交通機関]中央本線大月駅乗り換え富士急行線(特急)で約50分、富士山駅下車
https://fujiyoshida.net/event/154
余暇プランナー
雑誌などの取材や撮影で日本全国まわっていたら、いつのまにか47都道府県制覇してました。取材して歩く中で必ず行くのが神社。というのも祖父が仏式から神式に変えたため、行事はいつも神社か神主が来て祝詞を上げるという家柄、お寺には縁がなく、どうしても神社に親しみを感じてしまいます。参拝すればやはりお願い事は必須です。でも神様だって得手不得手はあるので、その神社の神様が一番叶えてくれそうなお願いをすることにしています。
【山梨・静岡】須走から富士吉田へ~世界遺産富士山浅間神社を巡る~