公開経営指導協会の理事長・喜多村豊氏が、世界を元気にする挑戦者たちと日本の将来について語り合うリレー対談。第18回目は、株式会社SAMURAIマーケティング代表取締役の竹原甲斐斗さんをお迎えし、インフルエンサーマーケティングの重要性や可能性についてお聞きしました。

ニュージーランドで感じた、日本人との仕事への価値観の違い

喜多村:本日お迎えした竹原さんは、マーケティング専門の会社を経営されています。現在27歳、若くして起業されていますが、何かきっかけはあったのですか?

竹原:僕は高校の3年間、単身ニュージーランドに留学していたのですが、ニュージーランド人と日本人では就職に関する考え方が全く違うなと思ったんですよね。自分の認識では、日本だとSPIを受け、大学を卒業して、大手企業を片っ端から受けていくようなイメージだった。どこかの会社に入り、人に雇われることが当たり前です。

ニュージーランドではクラスで将来やりたいことについて話し合う機会がたくさんあり、「僕は消防士になるよ」とか「僕はペットトリマーをやる」みたいに、一応雇われる形ではあると思いますが、業種で考えていることが多く、サラリーマンは前提にしていないんです。

喜多村:なるほど、そのニュージーランドでの経験が大きかったのですね。

竹原:ええ。18歳からは日本の大学に入学したのですが、いざ日本に帰ってきたらYouTuberを仕事にする人がどんどん出てきて。「これって日本が遅れていただけじゃないかな」という考えに結びついた感じですね。自分の家系に経営者や自営業が多かったこともあって、雇われるのが当たり前という考えには抵抗があったんです。

喜多村:確かに、日本人は会社に入って仕事を割り当てられるというか、会社が求めることはわかるんだろうけど「自分のやりたいことはなんだろう」「それがどう世の中に認められるんだろう」という視点はあまり持っていないのかもしれませんね。作業を仕事と勘違いしちゃってて。だから自分でマーケットを創出するような発想も乏しい。

竹原:そうですね、学校やバイトの延長線上のような。現状維持が最大値みたいな印象をすごく受けます。

喜多村:マーケティング会社を立ち上げたのは、どのような経緯だったのでしょうか?

竹原:大学1年生のときに友達数人と学生イベントを始めたんですね。今の仕事もその延長線上にあると思っているのですが、イベントをフェスという形にして開催することになり、開催に当たって有名人やインフルエンサーが必要だと。でも、外部から誘致するのはなかなか難しい年齢だったので、中から作ってしまえということになり、インフルエンサーのマーケティング領域に踏み込むことになったという経緯です。

インフルエンサーの社会的な地位の向上が求められている

喜多村:私も小売・流通業のマーケティングが専門なのですが、昔はいわゆるマーケティングリサーチを行って、マーチャンダイジングを行って…というようなことを習ったりしますよね。竹原社長のおっしゃるマーケティングというのは、どのような手法でしょうか?

竹原:もちろん3C分析ですとか、マーケティングの基本的な考え方があるのはわかるのですが、僕らはたくさんのイベントを開催して、手売りによる集客をめちゃくちゃ頑張ってきたという経験があるんですよね。それをSNSに変えたらどうか、YouTubeからの流入に変えたらどうか。デジタルとの掛け算をすることで、手売りの何十倍も早く効果が上げられるよね、という考え方です。

これは自分自身も体感してきたことですし、まさに企業が困っているところだと思うんですよ。SNSのようなデジタルプラットフォームからのインバウンド流入をどのように起こすかというのは、弊社の得意とするところですね。

喜多村:私、早稲田実業の評議員や校友会の副会長をやってたのですが、母校の校舎を建て替えるときに「お別れ会をやろうよ」ということになったんです。そのとき若い後輩が「ネットで1000人くらい繋がってるから声かけますよ」と情報を流してくれた。ところが、そこから来たのは5人程度だったんです。ネットの反応とリアルな集客には乖離もあるようにも感じます。

竹原:SNSは効果を上げるものですが、ラクするものではないと思うんです。SNSは手軽なぶん「じゃあ、どこどこに来てね」で済ませがちですが、リアルに直接会って話すときは、相手にどれだけ熱意が伝わるかが大事ですよね。同様に、SNSを使う際も、熱を込めることは非常に重要だと思います。

SNSの活用を謳っているマーケティング会社には、ただ単に投稿・発信して伸ばしましょう、みたいな会社も多いのですが、弊社の場合は、投稿も隅から隅まで見て改善点を加えたり、DMでどう熱意を込めてアプローチするかだとか、他がやらない特殊な運用で効果を上げることを重視していますね。

喜多村:先ほどインフルエンサーの話がありましたが、インフルエンサーのマネジメントに関するビジネスも立ち上げているそうですね。どのようなビジョンをお持ちですか?

竹原:古くは歌舞伎役者であったり、昭和の時代はアイドルだったり、どんな時代も誰かの称賛や憧れの的になる「推し」の文化は消えることがないと思います。これから活躍するインフルエンサーを量産していけるようなプラットフォームを作ることも頭の片隅では考えていますね。

一方で、インフルエンサーやライバーと呼ばれる職業は、大手芸能事務所のようにリスクを負ってマネジメントしてくれるような仕組みが確立されていません。インフルエンサーをめざす人はすごく多いのですが、やはり、できたばかりの職業であって、先輩もいない、教科書もないという世界です。

喜多村:億単位を稼ぐライバーさんでも銀行がお金を貸してくれないとか、信用度の問題もありますよね。

竹原:インフルエンサーの方々は稼ぐのには貪欲な一方で、利用されているケースも多い。PRの表示義務のことをよく理解せずに、興味のない商品をファンに向けてステルスマーケティングしていたり、言い方は悪いのですが騙すような行為をしているクリエイターさんもいるんですよね。

単に「仕事を紹介するよ」とか「登録者数を伸ばそう」だけでは、社会的に強い存在にはなれないと思っています。ですので、例えばきちんと確定申告をするですとか、SNSのスキルを生かして会社に就職したいというクリエイターさんがいれば、ニーズのあるクライアントさんをマッチングさせて、企業の側にSNSの運用スキルをインハウスさせたり…インフルエンサー1人ひとりの人生に歩み寄ったサポートができればと考えています。

人生そのものを能動的に楽しむ。そうした人たちが増えてほしい

喜多村:とても素晴らしいビジョンですね。それは御社の事業として展開されるのですか?

竹原:現在、日本インフルエンサー協会という団体を立ち上げている段階でして、もともとは任意団体だったのですが、規模感も大きくなり、理事に芸能プロダクション経験者が入っていただいているところです。こちらは利益のためではなく、インフルエンサーの方々の社会的な地位を高めていくことを一番に展開していければと思っています。

喜多村:今やゲームのCMにもYouTuberさんがどんどん起用されるような時代になっています。その協会が、企業とインフルエンサーがWin-winの関係になれるようにマネジメントできるといいですよね。

竹原:そうですね。それと、クリエイターが収益を上げ続けるためには現状維持で同じことだけをやっていてはかなり厳しいと僕は思っていて。じゃあどうすればいいのかといったら、ビジネスをやるしかないんじゃないかと思うんです。ファンマーケティングをして商品を展開するとか、オフラインの交流イベントを開くとか。そういった発想がクリエイターには少ないので、将来的にはそうしたサポートもしていければ面白いなと思っています。

喜多村:最後に、竹原さんはこれからの時代、どんな人財が日本を支えていくと思いますか?

竹原:日本というと範囲が大きいですが、一つの会社や家族といった視点で見ても、能動的な人間が少なくなってるように感じます。「上司に言われたから」とか「親に言われたからこうしました」みたいな。ニュージーランドでの経験も影響していると思うのですが、僕にはそれがちょっと違和感を覚えるんです。

仕事にしても「何時から何時まで出勤したからいくらもらえる」ではなく「お客さんにありがとうと言ってもらえるようにこうしよう」という方が、本来のあり方ですよね。ただ、Z世代にもクリエイティブな人間や、芯のある人間はいますし、やはりそういう人は能動的に動いています。自分の人生そのものを能動的に楽しもうという人たちが増えていけば、日本もいい国になるんじゃないかなと思っています。


◆竹原甲斐斗(たけはら かいと)
株式会社SAMURAIマーケティング 代表取締役
所在地:東京都千代田区一番町13ー5
URL:https://bushi-marketing.com/

一般社団法人日本インフルエンサー協会
〒150-0002
東京都渋谷区渋谷2-12-19 東建インターナショナルビル別館9F
URL: https://日本インフルエンサー協会.com

◆喜多村豊(きたむら ゆたか)
一般社団法人 公開経営指導協会 理事長
株式会社ティーケートラックス 代表取締役社長
学校法人早稲田実業学校 前評議員理事・前校友会副会長
公益財団法人音楽鑑賞振興財団評議員
元法政大学大学院客員教員

一般社団法人 公開経営指導協会
所在地:東京都中央区銀座2-10-18 東京都中小企業会館内
URL: https://www.jcinet.or.jp/

情報提供元: アーバンライフメトロ
記事名:「 世界を元気にする日本人の誇りを持つ熱き挑戦者たちリレー対談 日本の将来はあなたによって創られる! <第18回>インフルエンサーを社会的地位のある職業へ。若い世代が能動的に活躍できる社会を創りたい