『Visual EXPO by BRANDED SHORTS 2026』授賞式が開催!
今年から『Visual EXPO by BRANDED SHORTS』として名称と開催時期をリニューアルし、2026年9月29日に赤坂インターシティコンファレンスで授賞式が開催されました。
ブースやワークショップなどを通じて、業界を超えた交流や体験の場を提供した同イベント。
ノミネート作品、審査員トークセッション、各賞の発表の模様をレポートします。
ノミネート16作品の紹介・観光映像大賞ノミネート
・岐阜県飛騨市『暮らし息づくこのまちに』
人口約2万人、岐阜県最北端の町の作品です。
制作で大切にしたのは、「飛騨市らしさとは何か」を問い直すこと。
観光地としての華やかさではなく、おばあちゃんの何気ない声かけのような、失われたら二度と戻らない日常の美しさを丁寧に積み重ねたと言います。
・『食紡ひとひと~熊倉誠之助が彩る、命の体温~』
新潟の温泉地を舞台に、レストランのシェフと師匠を約1年かけて取材したドキュメンタリーです。
松宮大輔監督は、炭火で焼いたステーキの周りをそぎ落とし、芯の部分だけを振る舞うシーンが印象的で、自分たちのものづくりにも通じると語りました。
・釧路商工会議所『Cool Stay 釧路』
夏の平均気温が18.5度という強みを掲げ「釧路の涼しさが日本を救う」と大上段に構えたPR作品です。
杉村荘平氏は朝一番の飛行機で駆けつけ「真夏の釧路で、身も心もクールダウンしてほしい」と釧路の魅力を伝えます。
・須崎市『INSIDE A PHOTO 写真の中へ』
日本人ではないドキュメンタリー監督が、約10年前の来日後に日本中を旅して感動した体験を、同じ目線で届けたいと制作した作品です。
たまたま通りかかった町の素晴らしさに、泣きそうになったことがあると話しました。
・福島県総合情報誌『ふくしままっぷ』ブランドムービー『ふくふくの地図』
実在する総合情報誌「ふくしままっぷ」をモチーフにしたアニメーションです。
監督は『この世界の片隅に』の片渕須直氏で、テーマは「祝福」
東日本大震災から15年半、向き合うべき課題がある一方で、文化を受け継ぎ育む福島の今の姿を知ってほしいという思いが込められています。
HR部門ノミネート
・近藤工業有限会社『やせ我慢』
人と人との交流が難しくなった時代に、「触れ合いは大切だ」と伝えたい作品と紹介されました。
・株式会社ティア『最期の、ありがとう。#32~34「鬼の目にも涙」』
葬儀社ティアの創業者のエッセイを基にしたドラマです。
創業者が体験した、ヤクザの組長との「男同士のプライドの戦い」のエピソードがドラマ化されました。
宮武由衣監督は「実話だからこそ実現できた葬儀の精神と物語の美しさが共存している」と語りました。
ナショナル部門ノミネート
・トヨタ自動車『どうか、おわらないで』
クリエイティブディレクターは、お金を払ってでも広告をスキップする人が増えている現状に触れ、
「わざわざ見たいと思ってもらえるブランデッドムービーに選んでいただけたことが本当に嬉しい」
と語りました。
・日本イーライリリー株式会社『日々をつなぐ』
乳がんの再発を宣告された女性の物語です。
再発を経験した方への取材で聞いた、偶然の思い出との出会いをきっかけに絶望から希望を見出した話が土台になっています。
・講談社『LIGHT HOLE』
作家と編集者の関係を、ストップモーションで表現した作品。
想像力の世界には、誰もが知るIPがたくさん描かれていて、何度も見返せる作りになっているそうです。
・東レ株式会社『一条の光』
企業の歴史を描いた骨太のドラマ。
山中有監督は「ブランデッドショートを作るコツは?」という質問に、
「クライアントを本当に好きになること。ラブレターを書くようなもの。」
と回答されました。
・株式会社radiko『radiko 15周年ブランドムービー「あの頃と今」』
日本のラジオ放送開始から100年の節目でもあり、昭和のラジカセから令和のスマホへ、手段は変わっても「人と人がつながる」価値は変わらないという思いが込められています。
・SOMPOひまわり生命保険株式会社『ひまわり荘へようこそ』
生命保険を若い世代に身近に感じてもらうため、商品の機能を説明せず、主人公がひまわり荘の住人たちと出会う物語で描いた作品です。
・トレンドマイクロ株式会社『彼らは彼らで』
題材は詐欺対策アプリ。
橘潤樹監督は、会場に詐欺対策をしている人はほとんどいないのではないかと投げかけ「そもそも必要なのか?」ということに気づいてもらうきっかけにしたかったと語りました。
・関西電気保安協会『関西電気保安協会ゲーム』
ゲームの舞台で電気の安全を学ぶ、少し不思議な世界。
細田佳宏氏は「伝えたいメッセージは、あまりない(笑)」と正直に語りつつ、見た後に世の中から漏電や不良配線が1件でも減ればと話しました。
・公益社団法人Marriage For All Japan『誰も悪くないのにね』
同性婚の実現を目指す団体が手がけた作品。
松中権氏は、15年前に両親へカミングアウトした当事者でもあります。
今日の出席を伝えると、82歳の祖父母が「いろんな家族に伝わるといいね」と応援してくれたと明かし、
「ブランデッドとは、誰かの幸せを誰かが大切に思うこと。」
と語りました。
パーソナルブランディングアワードのノミネート
個人部門は5名がノミネート。
会場には、世界中の言語を学び母語で交流する動画を発信するKazu Languages氏と、縦型ショート動画で映画の感想や解釈を発信するmaruta氏が登壇しました。
maruta氏は、
「登場人物の思考や行動の背景に向き合うことが、ひとつのものと向き合うきっかけになれば。」
と、活動への思いを語りました。
審査員トークセッション
審査委員長は、クリエイティブディレクター/ストラテジストの樋口景一氏。
映画監督の天野千尋氏。
音楽レーベルBlack Cat White Cat Musicの大槻 timo 光明氏。
慶應義塾大学医学部教授の宮田裕章氏。
博報堂 クリエイティブ・ディレクターの吉兼啓介氏。
5名が審査を担当しました。
樋口氏は審査の冒頭、
「すべての作品が、実はすでに勝者ではないか。」
と話し、ストーリーテリングの引力で人を惹きつける挑戦をした時点で、企業にとって大きな資産になっていると語っていました。
インターナショナル部門について、天野氏はジーンズメーカーの作品『恋の行方』に言及。
鼻をほじる男性と、それを見る女性を交互に映す演出について「全作品中いちばん笑った」と語りました。
宮田氏は『触ってみて』を紹介。
見終わると手のひらで何かに触りたくなる、アート作品のような啓発だといいます。
こうした審査を通じて深まった基準が「シェアードバリュー(共有される価値)」です。
樋口氏は、価値とは「世の中になかったものの見方を提示できるかどうか」とコメント。
反射神経で消費されるものではなく、“人の心に深く刺さるものが求められているのではないか”という議論もあったそうです。
ナショナル部門では、吉兼氏は『誰も悪くないのにね』のタイトルの語尾「ね」に注目し、誰かに語りかけるような言葉が共有されやすいと語りました。
宮田氏は、ダイバーシティをコンプレキシティ(複雑性)として捉え直す国際的な動きに触れ、ポジティブなメッセージだけでは扱えないざらつきをそのまま扱う姿勢を、この作品が先取りしていると評価しました。
『食紡ひとひと~熊倉誠之助が彩る、命の体温~』は天野氏が「単純にこのお店に行きたくなった」と語るほど、PR色のない素直な作品として挙げられました。
変わる視聴環境のなかで、樋口氏は手段が目的にすり替わると良いものは生まれないとし「届けたいメッセージと、その人にとって観る意味」から出発すれば、どんなデバイスが来ても大丈夫だと締めくくりました。
BRANDED SHORTS 2026 アワードセレモニー
エグゼクティブプロデューサーの別所哲也氏は、
「Visual EXPOは映像コミュニケーションについて議論し、出会いが生まれる場として誕生しました。」
と挨拶。
会場を提供する日鉄興和不動産の三輪社長は、ブランデッドショートの支援が8年目となり、品川国際映画祭など拠点が3か所に増えたと紹介しました。
第15回観光映像大賞は福島県『ふくふくの地図』
最初の発表は、15周年を迎えた観光映像大賞。
5つの地域のファイナリストから、観光庁長官賞に福島県『ふくふくの地図』が選ばれました。
片渕須直監督は、ロケハンで桜の名所を訪ねたものの、まだ咲いていなかったと振り返ります。
そこで、
「桜は咲いていないけれど、桜を想像する人を描こう。」
と考えたそう。
画面に描かれていない福島の人々や歴史・文化を想像することが、作品につながったといいます。
木村観光庁長官は、赤べこが導くストーリーを通じて旅の魅力を再現した作品だと評し、福島県の観光再生に期待を寄せました。
「YOKOHAMA blues」作品上映・話題賞は『THE CINEMA』
SEKAI NO OWARIのデビュー15周年ドームツアー『THE CINEMA』のプロジェクト。
ショートフィルム「YOKOHAMA blues」を巨大スクリーンで特別上映し、生演奏や演出と完全に同期させた、映画とライブの融合が評価されました。
映像作家で俳優の池田大監督は、制作期間が約2年に及んだと語ります。
普段のミュージックビデオは2か月ほどのため、
「本気で向き合って、本気で苦しんで、本気で楽しんで作ったものは、ちゃんと人に届く。」
と実感したそう。
映像を背景素材にはせず、メンバーの演奏映像を挟むなど、映像から生の演出につながる構成を意識したといいます。
パーソナルブランディングアワード
個人が自らの魅力や生き方を映像で発信する取り組みを表彰するアワードでは、Kazu Languages氏が受賞しました。
世界中の言語を学び、母語で交流する動画を発信しているKazu Languages氏は、
「国と国の架け橋になり、偏見や誤解をなくしたい。」
というミッションを語りました。
HR Best Short Award
株式会社ティア『最期の、ありがとう。#32~34「鬼の目にも涙」』が受賞。
宮武由衣監督は「死をまっすぐ見つめることで、生が輝く」というメッセージを込めたと語ります。
ティアの加藤加奈子氏はYouTubeで50話、TikTokで60話まで展開されていることを紹介し、
「すべての仕事には意義や意味、価値がある。」
というメッセージを次世代に伝えたいと話しました。
Branded Shorts of the Year 2026
今年は国内外から654作品が集まり、25作品がノミネート。
インターナショナル部門は、checkyourbreasts.today『触ってみて(Feel)』
ジュディス・フェーネンダール監督からは、
「スクリーンを超えて変化を生み出すきっかけになれば。」
というコメントが寄せられました。
ナショナル部門は、マリッジ フォー オールジャパン『誰も悪くないのにね』
松中氏は、全国のLGBTQ+当事者から募ったエピソードの1つをベースに生まれた作品だと明かし「結婚の自由をすべての人に」とコメント。
同性婚訴訟が来年にも最高裁で判断される見通しのなか、動きを後押しするきっかけになればと語りました。
プロデューサーの小林祐介氏は、最初はこの問題を深く考えられていなかったと振り返り、
「生きづらさを感じている方々に、少しでもあったかい風になれば。」
と話しました。
樋口審査委員長は、当事者の中に自分たちも含まれているべきだと語り、誰もが関われる状態を作れるかどうかが一番大事だと講評。
審査員が語った「共有される価値」と、深く心に残ること。
その物差しは、社会課題に向き合った2作品がグランプリに選ばれた結果とも重なっているように思えます。
私自身、映画や映像に関わる立場として「広告かどうか」ではなく「誰かの心に何が残るか」という視点がとても印象的でした。
手法やデバイスが変わっても、誰かを思う気持ちから生まれた映像は、これからも長く記憶に残っていくのだと感じます。