JOC・JPCがアスリートを守るSNS誹謗中傷対策「#言葉に6秒深呼吸」を発表
SNSを通じた応援がアスリートの力になる一方、心ない言葉や誹謗中傷が選手を傷つけるケースも問題となっています。
日本オリンピック委員会(JOC)と日本パラリンピック委員会(JPC)は、愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会における、誹謗中傷からアスリート等を守る取り組みに関する発表会を名古屋市内で開催。
会場では、SNSモニタリングや法務支援などの対策に加え、新たな広報・啓発活動「#言葉に6秒深呼吸」を発表し、元サッカー日本代表の柿谷曜一朗さんを交えたパネルディスカッションも行われました。
JOC・JPCがアスリートを誹謗中傷から守る取り組みを発表!「#言葉に6秒深呼吸」も始動
本発表会の前半には、日本オリンピック委員会(JOC)理事で、JOC・JPCインテグリティ統括事業推進リーダーを務める谷本歩実さんが登壇。
近年、SNS上での誹謗中傷がアスリートの心身に大きな影響を与えている現状を踏まえ、愛知・名古屋2026アジア・アジアパラ競技大会に向けた対策について説明しました。
大会では、選手やスタッフが安心して競技に集中できる環境を整えるため「SNSモニタリング・削除申請」「法務支援」「セーフガーディングオフィサー、ウェルフェアオフィサーとの連携」という3つの柱でサポートを展開。
大会期間中は弁護士が常時駐在するほか、誹謗中傷などの被害を受けた選手・スタッフがすぐに相談できるよう、新たに「LINE相談窓口」も開設されています。
SNSモニタリングでは、XやInstagram、Yahoo!ニュースなどの投稿・コメントを対象に、複数のAIツールによる自動収集に加え、専門スタッフが目視で内容を確認。
その後、弁護士が法的観点から精査し、悪質と判断された投稿について通報・削除申請や証拠保全を行う体制を構築しています。
実際にアジア競技大会期間中には、9月17日12時時点でAIが17,872件の投稿を検知し、そのうち41件について削除申請を実施。
TEAM JAPANへの前向きなコメントが大多数を占める一方、選手のルーツに対する差別的な投稿や、女性選手の容姿に対する悪意ある投稿なども確認されたといいます。
さらに、誹謗中傷が起きた後の対応だけではなく、事前の防止につなげる広報・啓発活動として「#言葉に6秒深呼吸」プロジェクトを本格始動。
「スポーツに熱くなり、思わず何か言いたくなることは自然なこと」とした上で、その言葉がアスリートを傷つけるものにならないよう、SNSへ投稿する前に一度立ち止まり、言葉を見直すことを呼びかけます。
同プロジェクトでは、元サッカー日本代表の柿谷曜一朗さんが出演する啓発動画や特設WEBサイトを制作。
「#言葉に6秒深呼吸」のハッシュタグを活用した発信に加え、Google / YouTube、LINEヤフー、Meta、TikTok、Xなどのデジタルプラットフォーマーや、LIVE BOARD、JR東海、名古屋鉄道などから発信協力を得ながら、アスリートを温かい言葉で応援する輪を広げていくとしています。
柿谷曜一朗×谷本歩実理事が語るSNSの「言葉の重み」アスリート300人の意識調査も発表
発表会の後半では、柿谷さんと谷本理事によるパネルディスカッションを実施。
JOC・JPC所属のアスリート300人を対象に行った「SNS利用に関する意識調査」の結果をもとに、SNS上で寄せられる応援や誹謗中傷がアスリートに与える影響について意見を交わしました。
調査では、81.3%のアスリートがSNSを通じてファンから「応援や励ましをもらっている」と回答し、60.3%がSNS上の応援や励ましによって「競技を続ける力をもらった」と回答。
SNSが選手とファンをつなぎ、競技を続ける上で大きな力になっている実態が明らかになりました。
自身も現役時代にSNSを通じて多くの声を受け取ってきた柿谷さんは、
「直接届く応援は本当に勇気をもらえます。」
と振り返り、プレーがうまくいかなかった時に寄せられた「柿谷らしくて面白かったよ」という言葉について、
「“らしくて”という言葉が僕の中で一番の支えになりました。」
とコメントしました。
一方で、59.3%のアスリートが「少数の否定的な言葉でも、多くの応援より強く残ることがある」と回答しており、SNS上の言葉が持つ負の側面も浮き彫りに。
柿谷さんは、否定的な言葉で傷ついても「気にしていないフリをして隠してしまいます」と選手の心理を明かしながら、
「本当は傷ついたことを言っていいし、1人でもメンタルが落ちている選手がいるなら僕たちがサポートしてあげないといけないと思っています。」
と語りました。
谷本理事も、
「100件中たった1件でも否定的なコメントがあったら今まで準備してきたものが全部崩れてしまい、見なくなってしまいます。安心して力を受け取れる環境を整えたいです。」
と応じました。
さらに、約3人に1人となる33.7%が、誹謗中傷を避けるため「投稿を控えた」「当たり障りのない内容に変えた」など、何らかの回避行動を取っていることも判明。
柿谷さんは、こうした状況について「自分が誹謗中傷されていると認めることがまず第一歩だと思います」と語り、
「一人で抱え込まずもっと誰かに頼っていいと思っています。乗り越えなくていいし、甘えていい。助けてくれる人は必ずいる。」
と、後輩の選手たちへメッセージを送りました。
最後に谷本理事は、ただ誹謗中傷と戦うだけではなく、
「誹謗中傷のない世界を目指してお互いに理解を深めながらSNS空間を作っていく必要がある。」
と強調。
「単に言葉を減らすだけでなく、6秒の深呼吸を経て、温かい応援の輪を社会全体に広げていきたいです。」
と締めくくりました。
アスリートを傷つける言葉を減らし、応援の気持ちを力へと変えていく「#言葉に6秒深呼吸」の輪が、愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会をきっかけにどのように広がっていくのか注目です。