「AIを使う」だけでは変わらない?チェンジHDグループが掲げる“実装力”とAI時代の新戦略
生成AIの急速な進化によって、企業や自治体でもAI活用が広がる一方で「導入したものの業務で十分に使いこなせていない」という課題も浮かび上がっています。
こうした中、株式会社チェンジホールディングスは「AI戦略記者発表会」を開催。
同社 代表取締役兼執行役員社長の福留大士さんが、独自調査から見えた「AI実装格差」やグループのAI戦略を説明したほか、AI開発会社「アウターク」のグループ会社化、自治体向けAIエージェントなど、新たな取り組みを発表しました。
AI活用の鍵は「導入」ではなく“実装力”!福留大士代表が語るチェンジHDグループのAI戦略
発表会の冒頭には、株式会社チェンジホールディングス 代表取締役兼執行役員社長の福留大士さんが登壇。
チェンジHDグループが創業以来向き合ってきた人口減少や地方の労働力不足といった社会課題を振り返りながら、AI時代におけるグループの戦略について説明しました。
同社は「Change People, Change Business, Change Japan.」をミッションに掲げ、人と技術の力で「生産性をチェンジする」ことを目指してきた企業。
福留さんはDXについて、単にアナログなものをデジタルへ置き換えたり、業務を効率化したりするだけではなく、その先にある「トランスフォーメーション=変革」につなげることが重要だと強調します。
「すべてを変えればいいというものではなく、変えてはいけないものが日本にはたくさんあると思います。文化や歴史、人の習慣、これまで培ってきた伝統など、変えてはならないものがあるからこそ、変えないといけないこともいっぱいあると思っています。」
そう語った福留さんは、その変革をAIの力で進めていくと説明しました。
一方、AI活用が急速に広がる現在でも、個人の利用と企業での実装には大きな隔たりがあるといいます。
チェンジHDグループが20〜59歳の就労者を対象に行った独自調査では、業務でAIを利用したことがある人の72.9%が「もっと活用したい」と回答。
一方で「十分に活用できている」と答えた人は16.9%にとどまりました。
「これは『個人としては大事だと思っているし、業務でも使いたい』と思っているけれども、実態としては追いついていないというようなことを表しているんじゃないかと思います。」
また、AI活用への不安として「情報漏えい・著作権侵害等のリスク」が49.1%と最も多く、AIそのものの性能だけではなく、情報管理やガバナンスなど職場環境の整備が課題となっていることも明らかに。
福留さんは、
「AIの利用が進まない原因は、個人ではなく組織、あるいは職場の環境そのものであるというのがリサーチからもわかっております。」
と分析します。
さらに地域別では「業務でAIを十分に活用できている」と回答した割合が東京23区の29.3%に対し、その他の地域では8.2%となり、3.6倍もの差が生じていると説明。
地方創生を事業の柱としてきたチェンジHDグループにとって、この「AI実装格差」は見過ごせない課題です。
福留さんは「AIをしっかり実装して、その力による恩恵を各地域が享受できるようにしていきたい」と語り、AIの恩恵を一部の企業や都市部だけに集中させず、地方の企業や自治体、生活者へ広げていく考えを示しました。
その実現に向けてチェンジHDグループが掲げるのが「攻めのAI」「守りのAI」、そして両者を現場につなぐ「実装力」です。
AIによって事業や仕事の進め方を変革する一方、サイバーセキュリティなどを通じてデジタル社会の信頼を守り、構想や技術を実際に現場で動く仕組みへ落とし込む。
この3つを三位一体で推進し、まずはグループ自身がAI活用の最前線を走り、そこから顧客企業、地域・社会へと変革を広げていく方針を打ち出しました。
22歳のアウターク代表取締役CEO・西山瑞生をCAIOに登用!
発表会後半には、AIを活用したシステム開発や業務変革支援を手掛ける株式会社アウタークをグループ会社化し、同社代表取締役CEOの西山瑞生さんをチェンジHDグループのCAIO(Chief AI Officer)に登用することを発表しました。
今後は、アウタークが持つAIネイティブな開発手法をグループ各社へ展開するとともに、顧客向けAIソリューションの拡大や、チェンジHDグループが持つ各業界の知見とAI技術の融合を進めていきます。
アウタークは、製造業をはじめとした企業に対し、熟練者が持つ勘や経験、暗黙知をAIによって組織の資産へと変える「技術伝承・脱属人化」を軸に事業を展開。
社内に蓄積された図面や帳票などのデータをAIが扱いやすい形に整え、その上で業務に特化したAIを組み合わせ、導入後の改善まで一貫して支援しています。
自社の開発プロセスにもAIを全面的に導入し、従来手法やSIerと比較して約4分の1の期間・費用でAIソリューションを提供するとのこと。
登壇した西山さんは、企業にMicrosoft CopilotなどのAIツールが導入されるケースが増えていることに触れつつ、
「今はAIツールが個人の生産性を最適化するために使われるケースが多いですが、より重要なのは、業務全体をAI前提に組み替えていくことだと考えています。」
とコメント。
単純なツール導入にとどまらず、仕事の進め方そのものをAI前提へと変えていく重要性を語りました。
また、自治体向けのAIエージェント実装については、深刻な人手不足となっている地方の自治体をターゲットに選定。
「デジタル人材がいない」「予算が確保できない」「セキュリティをどう担保していいか分からない」という3つの実装を阻む大きな壁を乗り越え、AIと人が協働しながら業務を回していける状態にしていきたいと語りました。
さらに、イー・ガーディアンのAI関連の新サービスについて福留代表は、
「イー・ガーディアンは、ソーシャルゲームやプラットフォームなど、インターネット上の安全を守るための業務を受託している弊社のグループ会社です。今年初めに『AI戦略統括部』を新設し、AIエンジニアを参画してもらい、お客様の課題を解決したり、スーパーバイザー等のAI活用を支援する、といったことを行っております。」
と明かし、今後はインターネット上で侵害されているIPの保護などを、人とAIを掛け合わせて行っていきたいと語りました。
発表会後の質疑応答では、福留さんが西山さんをCAIOに登用した理由について「一番の要因は、西山さんをはじめ、アウタークのメンバーがまさに“AIネイティブ”であること」と説明。
急速に進化するAIの最新動向を捉え、その技術が社会にどのように実装されるのかを予見する力に期待していると明かしました。
さらに、これまでの経験や常識に縛られず、新たな発想でビジネスを設計できる点も大きな理由だといいます。
福留さんは、AIによって今後は一人でも大きな事業を生み出せる可能性が広がるとし、
「西山さんたちの世代で言うと、『経理も法務も総務も、全部AIにやらせればいいじゃないですか』という考え方で組織やビジネスを設計できる。」
と紹介。
人手やノウハウの不足によって、特に地方で新たな事業への挑戦を断念してきたケースでも、AIがその制約を取り払う可能性があると期待を寄せました。
AIを単なる効率化ツールとして導入するだけでなく、仕事の進め方や組織、ビジネスそのものを変えるところまで実装するチェンジHDグループとアウタークの連携が、企業や自治体、そして地域社会にどのような変革をもたらすのか注目です。