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草場一壽氏は1990年に、これまでの有田焼の常識では考えられない色彩の表現に成功された方。
絵付けと窒入(かまいれ)を10回以上繰り返し、色彩を表現するという「陶彩画」の技法を確立しています。
これは有田焼のこれまでの常識では考えられないことで、実際に1987年に陶彩画のアイデアを持って「陶彩画の研究」をするべく、有田焼の窯元※を訪ね歩いたものの、断られ続けるという過去もあるほど、当時の常識ではあり得ないことでした。
※窯元:陶磁器を作っているところや、その場所の主人のこと。
色彩表現の成功した同年に、佐賀県武雄市山内町に「工房」を開き、陶彩画の創作活動をスタートされ、唯一無二のアーティストとして活躍されています。
陶彩画制作の傍ら、保育園での絵画教室の経験をもとに、2004年に制作した絵本「いのちのまつり」を出版。
この絵本は異例の売り上げを記録し、シリーズで5冊を上梓(出版)。小学校の道徳の教科書にも全ての絵本が採用されている程の、高い評価を受けています。
この度、有田焼の伝統技法を絵画に用いた唯一無二の芸術「陶彩画」を描く草場氏は、約1年ぶりに東京にて個展(陶彩画展)を開催。
数ある作品の中でも、およそ30年もの間描き続けてきた「龍」をモチーフとする新作『はじまり』のほか、神話シリーズ最後の大作となる新作『国常立命(金龍)またの名をニギハヤヒ 艮の金神』「くにとこたちのみこと(きんりゅう)またのなをにぎはやひ うしとらのこんじん」が登場。
そして、本陶彩画展に先駆け大阪で開催した個展で、来場者を魅了した新作「豊穣の女神 ラクシュミー」が東京初のお披露目となります。
2022年12月9日、個展開幕の前日にメディア向けにいち早く作品を見ることが出来るイベントを開催。当日は製作者である草場氏も駆けつけ、作品の解説や自身についての話などを語って頂きました。
「陶彩画の絵付けは焼く前はグレー色をしていて、焼くと初めて色が出てくるんです。焼くまでどんな色が出るか分からないところが、私が長い間(陶彩画に)チャレンジ出来た要因かな、と思います。」
と、陶彩画についてコメント。釜に入れてから3日程で焼き上がり、それを待つまでの時間が楽しいのだと話します。
「基本は目も当てられないものばかりなんですが、1年に1〜2回イメージを超えた色が出たり、泣きたくなるぐらい美しい色と出会えたりする。それが楽しくてしょうがないんです。」
と、ふと訪れる「自分のイメージを超えた作品」との出会いが楽しくて今でも続けているとのこと。
「イメージ通りに出来ても、感動って無いんだなってつくづく思います。」
と、自身の創作活動の根幹にある想いを話されていました。
作品名:『はじまり』
サイズ:1200mm × 600mm
龍の最新作『はじまり』は、「これからの未来が思いやりのある世界であるように」という願いで制作された作品。青を基調とした意図は、青という色が精神の色を表していることに由来。
水面を心の膜とし、そこから飛び出しもう一段階高い精神の世界へ行く様が描かれています。「静から動へ」、多くの人が精神性を上げることが、多くを想いやる気持ちへ繋がり、より良い社会になればという願いが込められています。
作品名:『国常立命(金龍)またの名をニギハヤヒ 艮の金神』「くにとこた ちのみこと(きんりゅう)またのなをにぎはやひ うしとらのこんじん」
サイズ:530mm × 900mm
龍作品とともに制作を続けてきた日本神話シリーズ。本作は、草場氏の神話シリーズを締めくくる作品です。国常立命(クニトコタチノミコト)は、天地開闢の際に出現した最初の神々のうちの一柱です。一般的に国常立命は、歴史の中から消され、長らく祟り神とされてきた古い神とされています。
この作品に草場氏が込めた想いは“和解“。これまでの不都合なものを封印することで綺麗なストーリーを形作っていた過去をしめくくり、新しい未来への「物語」を紡いでいくための自分や他者との“和解“をテーマとしています。
作品名:『瀬織津姫』(せおりつひめ)
サイズ:730mm × 533mm
日本書紀や古事記などの歴史書には何一つ出て来ないがゆえに、さまざまな異名を持つ謎多き女神「瀬織津姫」。時代の流れとともに、その時々の権力者が自身を神格化するために表舞台から存在自体を消されたり、名前を変えられているとも言われています。
瀬織津姫は日本書記の原書とされている『ホツマツタエ』には登場しており、草場氏は「縄文より人々が抱いた自然界の万物に対する畏敬や畏怖の念が託された女神なのではないか」と考え、陶彩画にこの女神を映し出したとのこと。夫婦という一説もある国常立命=ニギハヤヒと初の同時展示となります。
作品名:『豊穣の女神 ラクシュミー』
サイズ:800mm × 650mm
製作に際し、イメージを固めるのに草場氏は「3年」掛かったと話した、大阪でも大人気だった本作。
美・富・豊穣、そして幸運を司るインドの女神を描いた作品『豊穣の女神 ラクシュミー』は、インドでは豊かさをもたらす神として金銀財宝が散りばめられた構図が多く用いられているそう。
しかし、草場氏は敢えて「金銀財宝」に代わって「種子」が溢れる様を描いており、
「豊穣という意味がどんな意味なのかということと、原典のラクシュミーがどういった形だったのかなということを知りたかった。」
と製作に至った想いを語られています。
本作品のレプリカは、2022年で国交70周年となるインドの大使館に飾られているそうです。
草場氏の永遠のテーマは「いのちの輝き」。草場氏が描く「いのち」とは、生きとし生けるものの命そのものや、その繋がり、存在することの喜びであり、「本当の豊かさ」を見つめ直す問いかけ。
そんな「いのちの輝き」を表現した艶感と立体感をもち、眩い輝きを放つ陶彩画。原画70点と複製画も含めて約100点を展示し、心が揺れ動く陶彩画の新たな魅力を発見する機会を提供します。
●「草場一壽 陶彩画新作展 東京」
会期:2022年12月10日〜12月18日
会場:日比谷OKUROJI
住所:〒100-0011東京都千代田区内幸町一丁目7番1号
※日比谷OKUROJIへのアクセス詳細
https://www.jrtk.jp/hibiya-okuroji/
開館時間:10時〜18時
入場料:無料
URL:https://kusaba-kazuhisa.com/post-event/7211/
草場氏が約1年ぶりに東京で開かれる、「いのちの輝き」をテーマにした陶彩画の新作展。写真では伝わりきらない、色合いの変化や輝き・美しさは、ぜひご自分の目で確かめてみてください。
「陶彩画新作展 東京」は、12月10日から18日までの期間限定で開催します。