昨夜は中秋の名月だったそうだ。 お月見を楽しまれた方も多いと思う。 ここ最近、熱帯夜からも開放されつつあるし、せっかくだから月を眺めつつあてもなくドライブ・・・。 用賀インターから首都高3号線で都心へ。 渋谷を過ぎ、青山トンネルを通過すると右手に六本木ヒルズが見えてくる。 土曜日の夜だ。 オフィスと思われる部屋の照明が落とされ、六本木ヒルズの照明はまばらだ。 どことなく寂しさすら感じさせる。 流れに乗り、谷町ジャンクションまできた。 右に曲がれば東京タワーを左手に眺めながら都心環状線内回りコース。 左に曲がれば高低差の多いコーナーが続く都心環状線外回りコース。 今回は右折して都心環状線内回りコースにしよう。 都心環状線に合流したらすぐ右手に見えるのがロッソスクーデリアのディーラーだ。 どんなフェラーリが置いてあるか素早くチェック。 向かいはミツワ六本木営業所だったが・・・いまやAPAホテルだ。 時代の流れとともにここはかつてポルシェのディーラーだったと知る人も減ってくるに違いない・・・。 ちょっとセンチメンタルな気持ちになったので気持ちを切り替えていこう。 東京タワーの付近に住んでいる人は間近で観られるのだろうが、移動する車内からチラッと眺めるそれもまた、オツなもの。 その後、右手に見えるコーンズサービス工場のターンテーブルに鎮座するマシンをチェックしてコーナーをクリアすれば、まもなく浜崎橋ジャンクションが見えてくる。 右折すれば横羽線コースか、レインボーブリッジコースかを選ぶことができる。 いまの気分でレインボーブリッジコースをチョイス。 視界の先にはレインボーブリッジ。 お月様もよく見える。 ものすごい勢いでR35GT-Rがカッ飛んでいったが、それ以外のクルマの流れは淡々としたもの。 レインボーブリッジをわたりそのまま首都高9号線を走っていると、右手にはお台場周辺の景色が、左手には晴海方面を一望できる。 有明ジャンクションで右折。 そのまま湾岸線に合流して東京港トンネルに入り、横浜方面へ・・・。 ただただ流れに乗り、ガソリンと、気力と、時間が許す限り、ここから先はどこへ向かおうと自由だ。 いっそ横横経由で鎌倉あたりまで行ってみようか・・・。 ・・・・・・・・・・・・実はこれ、妄想だ。ごめんなさい。 そもそも目の前に片付けなければならない仕事があり、家族があるいまの自分には、こんなアテのない深夜のドライブ自体がかなりハードルが高い、同時にとても優雅な過ごし方となった。 そしてそもそも「なんでわざわざ深夜に目的もなくドライブしなきゃならんのよ」と考えている自分がいる。 おそらく、仕事に余裕があり、独身で自由に使える時間があったとしても出掛けていないと思う。 それよりは、ウイスキー片手にようやく配信がスタートしたトップガン マーヴェリックでも観ながらのんびりと過ごしたい・・・。 要は億劫になってしまったのだ。 そう思えてしまう自分が悲しい。 高校生の頃、夜のドライブは未知の世界であり、憧れの時間だった。 そして運転免許を取得し、ある程度運転に慣れてくると、夜の都内を走り回った。 首都高は怖かったし、当時は700円だったけれど、馬鹿にならない出費だったから下道を走ったのだ。 カーナビなんて一部のクルマにオプション設定されているか、カー用品店で売られているモデルも安くて20万円以上、発売されたばかりのDVDナビなんて40万円近くもしたのだ。 貧乏学生にはとても手が出ない。 カロッツェリアからカーナビが発売されたばかりの頃、元F1ドライバーのジャン・アレジがフェラーリテスタロッサをドライブさせながら「道は星に聞け」なんてCMがあったっけ。 星(要はGPS受信)に道を聞くこと自体がえらくコストが掛かった時代だ。 だから、道は昭文社の地図と身体で憶えた。 努力の甲斐あって少しずつ点と線がつながり、未知の世界だった都内の道を憶えていったときの手応えは感動モノだった。 あれから20数年。 目的地はgoogle mapが最短コースを案内してくれる。 google先生はときどきとんでもないルートを案内することがあるので、Yahoo!カーナビと併用だ。 渋滞していれば瞬時に迂回ルートも案内してくれる。 新しく造られた道路の情報も反映してくれる。 もう気張って道を憶える必要もなくなった。 聞くかどうか分からないけれど、とにかくたくさんのCDやカセットテープを車内に持ち込んだこともあったが、いまやスマホ1台あれば音楽を聴き放題だ。 首都高の道の整備され、さまざまなルートを選べるようになり、ドライブも格段に便利になったはずなのに・・・。 わざわざ深夜にドライブに行こうなんて思わなくなったし、思えなくなった。 家族がいる、仕事が忙しい・・・なんていうのは口実に過ぎない。 繰り返しになるが要は億劫なのだ。 あてもなく夜のドライブができるってすごく優雅で贅沢な時間だったんだな・・・と思うようになったのはつい最近のことだ。 自由な時間、体力と気力、無性に運転したくなる愛車、どれかひとつ欠けるだけで成立しなくなる。 ありがたいことに、当時は喉から手が出るほど欲しかった「無性に運転したくなる愛車」は手元にある。 しかし、この愛車を走らせるべく、自由な時間とちょっとひとっ走りしようと思えるタイミングは偶然が重ならないと起こらない。 まさに奇跡のようなできことになってしまった。 行くあてもなく深夜の都内や首都高をクルージングしていたのあの頃・・・。 過ぎ去った時間は2度と戻らない。 気づいたときにはいつも遅すぎるのだ。 [画像/Adobe Stock ライター/松村透]
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