オークランド在住のtomatoです。 以前お伝えした通り、公共交通機関が貧弱なニュージーランドではクルマの保有率はほぼ1人1台と高く、スマートフォンと同様にクルマは生活必需品といっても過言ではありません。 ●懐かしい日本車と再会できる国「ニュージーランド」現地レポート https://www.qsha-oh.com/historia/article/tomato-new-zealand-report1/ では、ニュージーランドでクルマを所有する際は、一体どんな車検や税金制度があり、どれくらいの費用が掛かるのでしょうか。 筆者の愛車「マツダ・ロードスター(ND型)」が2023年9月にちょうど更新タイミングを迎えたので、この機会にレポートします。 ■果たすべき義務は2つ ニュージーランドの公道を走行するためには、下記の2つの認可を取得または更新する必要があります。 ・ヴィークル ライセンス (Vehicle Licence) https://www.nzta.govt.nz/vehicles/licensing-rego/ ・ウォレント オブ フィットネス(Warrant Of Fitness) https://www.nzta.govt.nz/vehicles/warrants-and-certificates/warrant-of-fitness/ ●Vehicle Licence (Rego) これは公道の走行許可で、一般的には「Rego」(Registrationの短縮形で、「リジョー」と発音 )と呼ばれています。 とはいうものの、結局のところは税金を徴収する仕組みと考えられ、日本の「自動車税」に相当するかと思います。 ▲実際のRegoレーベル(ナンバー白つぶし) オンライン(または窓口)で費用を支払うことで、上記のような小型のレーベル(カード)が郵送されてきます。 それをフロントガラスの助手席側に掲示することで、プロセスは完了です。 日付形式は日本式やアメリカ式などとは異なる馴染みの薄いイギリス式で、この実例は2024年5月9日ではなく9月5日まで有効という意味になります。 ちなみに、このレーベルを見るだけで年式や車種などの基本的な車輌情報が得られるので、クルマのミーティングなどで会話のキッカケに非常に重宝しています。 そして気になるその費用はというと、筆者のロードスターはもっとも一般的な「ぺトロール(ガソリン)乗用車」カテゴリーに属していることから、最長となる12か月分の費用は(事務手数料が安価なオンライン申請で)$103.68でした。 なお、2023年10月からは価格改定により$106.15と若干の値上がりとなって、11月執筆現在の為替レート(89円/ニュージーランドドル)で換算するとおよそ9,400円。 ここで「あれ?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。 そうです。驚くことに「車輌重量」や「エンジン排気量」などは、金額にまったく影響しないのです。 さらに驚くことに、ニュージーランドには日本の自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)に相当するものも存在しないのです。 といっても、不安になる必要はありません。その代わりとしてACC(Accident Compensation Corporation)という仕組みがあり、なんとニュージーランドへの渡航者も含めて、自動車事故に限らずさまざまな事故での損害を補償してくれます。 したがって、この国では自動車保険といえば、「対人/対物保険」ではなく「対物保険」となります。 ただし、付保すること自体は義務ではないので、ここでは割愛します。 ●Warrant Of Fitness (WoF) これは日本でいう車検(自動車検査登録制度)にあたり、一般的には「WoF」と省略して表現することが多く、犬の鳴き声のように「ウォフ」と呼ばれています。 認可されている整備会社ごとに料金が異なるので一律ではありませんが、一般的には$50~$75(日本円で4,400~6,700円)ほど。 ▲WoF検査作業 ▲実際のWoFレーベル 検査に合格すると、上記のような、小型のレーベル(カード)をフロントガラスに貼りつけてWoFが完了となります。 この実例では、2024年9月まで有効という意味。 ただし、これは月末まで有効という意味ではなく、裏面にある日付が実際の有効期限になるので注意が必要です。 興味深いことにWoFは日本の車検とは少し方針が異なり、車輌の根本的な安全性のチェックが主体となっているようです。 例えば、エンジンオイルの交換はおろか、その状態を確認することもないのが特徴です。 <検査項目>・タイヤの状態(溝の深さ含む)・ブレーキの動作・車体の構造点検(特定の場所のサビは許されない)・ライト・ガラスの安全性・ワイパー、ウォッシャー・ドアの動作・シートベルト(痛んでいないか。正しく、バックルが動作するか)・エアバック・スピードメーター・ステアリング、サスペンション・排気システム(漏れていないか、うるさくないか)・燃料システム(漏れてないか) (ニュージーランドで初めて登録される)新車に関しては、初回のWoFを受ければ、3年間有効となります。 それ以外の車輌に関しては、大量の中古車を輸入するユニークな国だけに、有効となる期間はニュージーランドを含めた世界のいずれかの国で、「車輌が初めて登録された年月日」で決まる仕組み(下表)です。 要は新車でなければ一般的には1年間有効。 ただし、古いクルマは、「リスクが高いのだから、有効期間は6ヵ月だけですよ」となっているのです。 これは走行安全の観点からも理にかなっていると思えます。 なお、WoFで不合格となっても、28日以内に対象箇所を直し、同じ整備工場に持って行けば、ありがたいことに再検査の費用はかかりません。 ■まるで軽自動車並みのコスパ? 驚くことに、一般的な「ガソリン乗用車」であれば、義務はこれだけ! 仮に筆者の愛車が旧車、1990年式の初代ロードスター(NA型)であったとしましょう。 その場合WoFは年に2回更新する必要がありますが、それでもRegoとWoF合わせた年間総額は、(消耗品を除いて)2.5万円程度で済んでしまう計算です。 調べたところ日本国内でクルマを維持する場合、地方の「生活の足」として優遇されている軽自動車ですら自動車税と車検代(年換算)の合計は4.5万円程度となるようですから、ニュージーランドはクルマ好き/旧車好きにとても優しい国といえるのではないでしょうか。 今でもたくさんの懐かしいクルマ達が現役で走っているのにもうなずけますね。 ■編集後記 今回の更新を迎えるにあたり、ここオークランドにて輸入中古車を扱われている「マツダ・ホームグロウン」さんに、エンジンオイル交換といった車輌整備からWoFまでのフルソリューションを行なっていただきました。 実は同社を運営するのは日本国内の正規マツダディーラー「広島マツダ」さん。 実際に作業を担当するメカニックはマツダ車を熟知しているだけでなく日本人なのです。 ただし、WoFに関しては同社は認可を保有していないため、オークランドで20年以上にも渡り自動車整備工場を営んでいる同じく日系の「クリア・モータース」さんがWoF検査作業のみ請け負う形態となっていました。 なお、「クリア・モータース」さんには、今回の記事内容の監修をしていただきました。 この場をお借りして、お礼を申し上げます。 ありがとうございました。 ■取材協力 「マツダ・ホームグロウン」さんhttps://www.maho.co.nz/ 「クリア・モータース」さんhttps://clearmotors.co.nz/ [撮影・ライター / tomato 監修 / クリア・モータースさん]
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