筆者の友人・知人の何人かが自動車関連業や不動産業に従事している。 そこで話題になるのが「ローンに関すること」だ。 個人情報があるので親しい間柄であっても詳しくは教えてくれないが、最近多いのが「クルマのローンを先に組んでいて、そのあとに家を買おうとして住宅ローンの審査で引っかかるケース」だという。 クルマのセールスの友人曰く、旦那さんの方が独身時代に「今のうちに買っておかないと後で買えなくなる」と、勢いで趣味車や自分好みのクルマをローンを組んで契約、その残債がネックとなってすんなり住宅ローンの審査が通らなかった……というケースがしばしばあるとか。 家を買うとなると、結婚して子どもが産まれて・・・といった具合に、比較的若い、いわゆる「子育て世代」が多い。 友人であるクルマのセールスも、「正直1台でも多く売りたいのはヤマヤマだが、子育て家族と商談する場合『すでに持ち家か、あるいは近々購入予定があるか』を聞くようにしている」という。 理由は前述のとおりだ。 筆者自身も、取材を通じ、結婚して子どもが産まれて、せっかく家を建てるならいっそビルトインガレージ付き…といった未来予想図を描いている20代〜30代のクルマ好きの方と知り合う機会が多い。 たしかに、結婚して子どもが産まれたら、家のクルマはミニバンかSUVなど、実用的な選択肢のなかで選ばざるを得ない。 ましてや趣味車を増車するなど論外だ(よほど稼いでいれば別だが)。 筆者はファイナルプランナーのような専門知識を有する立場ではないが、自身の体験と、現場からの声を備忘録的にまとめておこうと思う。 今回は特にそんな方たちに向けた予備知識として、記憶の片隅に留めてもらえたら幸いだ。 ■かつて「月賦払い」なんていわれていた時代もあった 会話のなかで「月賦(げっぷ)」というキーワードが出てきてといってピンとくるのは昭和世代だろうか……。 現代ではローンという言葉の方が一般的だと思う。 職業や年収、クレヒス(クレジットヒストリー)に代表される信用情報……などなど。 ありとあらゆる要素が加味されたうえでの「最大公約数=審査結果または融資額」ということを意味する。 つまり、ローンが組めたということは「一定の社会的な信用があると認められた」わけだ。 いっぱしとして認められた、ということかもしれない。 ■ローンの審査基準は謎。そして一律ではない ローンの審査基準は会社によってまちまちで、A社では断られたけれど、B社ではクリアできたというケースも少なからずあるようだ。 これはクルマおよび住宅ローンいずれも共通していて、いろいろな攻め方があるように思う。 ただ、最初にNGが出たあとすぐに別のローン会社に審査を依頼すると不利という話も耳にした。 イチかバチか的なローン申請をできるだけ避けることはもちろん、普段から支払い関係をクリーンにしておくのが懸命だろう。 また、すでに住宅ローンを組んでいて、ローンや残価設定ローンなどでクルマを購入する場合「高額な住宅ローンを組めるほど支払い能力がある」と評価するか「すでに高額なローンを組んでいる」と判断するケースもあるという。 ■クルマを買う前に押さえておきたい、住宅ローンを組む際にチェックすべきポイント 筆者は、フリーランス時代に2度住宅ローンを組んだことがあるが、その際、別々のメガバンクを利用した。 面談の際に、ここぞとばかりに担当者さんを質問攻めにして教えてもらったことをまとめておきたい。 家を建てる前にクルマが欲しいといって譲らない旦那に頭を抱えているそこの奧さん、これを見せてあげてください。良識ある旦那さんなら、ヘタに統計論とか理詰めで攻めるよりも冷静に現実を受け止めてくれるはずなので。 ●どれくらい頭金を用意できるか 住宅ローンであれば購入金額の20%までが目安とされる。これはクルマも同様だが、決して安くはない金額といえる ●他のローンの残債 特に響いてくるのがクルマのローン。まずこれを完済しないと住宅ローンを組ませてもらえないケースもあるので要注意 ●過去のローン実績(組んだ回数) いわゆる現金派の人がいるが、たとえ高収入であってもローンを組んだ実績がないと未知数と見なされる可能性大 ●過去のローンの完済実績(繰り上げ返済を含む) ここはかなり重視されるようだ。繰り上げ返済も加点ポイントとなる ●職業(正規/非正規/自営業を含む) 会社員だけでなく、公務員や士業、看護師など、安定性や誰もが知るまたは資格を活かして生計が立てられると見なされるようだ。その点、非正規およびフリーランスは不利(過去3期分が判断基準) ●勤続年数 勤続3年以上が望ましいが、最低1年以上であれば可能性はゼロではなさそう。転職直後であっても前職の勤続年数が長いと加点となるようだ ●年収 当然ながら多ければ多いほど有利。年齢が低ければ、年収が低くても将来性(若い)ということで加点となるケースも ●過去のローンのお手つき(滞納)の有無 1ヶ月以上の滞納、3ヶ月以上、複数の滞納でそれぞれ減点(あるいはローン不可)と見なされるようだ 心配であれば、CICに問い合わせて自身の信用情報をチェックしてみるといいかもしれない。 CIChttps://www.cic.co.jp/ CICについて(YouTube動画)https://www.youtube.com/watch?v=wuFubU09uJg ●保証人のおてつきの有無 これ、意外と盲点だという。本人はまっさらでも、保証人になった当人がブラックだったりするとアウト。ローン審査時に初めて知ったというケースもあるので事前に要確認 ●各種税金や保険料の納付状況 会社員であれば強制的なので問題なさそうだが、フリーランスだと忙しさにかまけてつい滞納していた…となりがち。要注意ポイント ■【超重要】携帯電話やスマートフォンの料金滞納は絶対にNG いっぱしの社会人であれば「言わずもがな」かもしれないが、この記事を未成年の方が読んでくれている可能性もある。 これは他のメディアに寄稿している記事で何度も記しているが、携帯電話(現在はスマホだろうか)の料金滞納はぜったいにNGということだ。 「1度くらい滞納しても問題ないでしょ」と思うなかれ。 こういってはナンだが「日常的に使うモノの支払いが滞るようなら、はるかに高額なクルマや住宅のローンの毎月の支払いもきちんとできるか怪しい」と判断されてしまうわけだ。 これは故意に支払いを忘れたケースはいうに及ばず、当然ながら「うっかり忘れていた」も含まれる。 故意だろうがうっかりだろうが、自宅に督促状が届いたら即対応。 もし、手元に現金がなければ、すぐに親族や友人知人に借りてでも(ここでノンバンクに手を出すのは本末転倒だが)対応すべき最優先事項だと断言しておきたい。 ■結論:近々持ち家を検討している人が先にクルマを買うのはアリorナシ? 筆者なりの経験ならびに、セールスの友人・知人たちの見解は「ナシ」だ。 ローンはもちろんのこと、現金一括であったとしても、持ち家を購入するための頭金を削っていることは事実だからだ。 FIREできるほどの資産があったり、年収が何千万もあって、大して気にしなくていいというのであれば話は別だが、少数派だろう。 将来、結婚を約束している相手がいない場合はやむを得ないとしても、数年以内に結婚して持ち家の購入を考えているとしたら……。 ローン(サブスクや残価設定も含む)を組んでクルマを買うのは待った方がいい。 頭金ゼロ、60回払いでミニバンを買ったとして、その残債が住宅ローンの審査のときに引っかかってくる。 かなりの確率で住宅ローンの融資額が減るだけでなく、融資そのものが通らない可能性もある。 または「クルマのローンを完済すれば住宅ローンの審査を通すか、●●●万円まで増やせる」といった条件が課せられたりする。 どうしても欲しいクルマがある、必要に迫られているとしたら、クルマは現金や親ローン(オススメしていいものか………)で対応し、少しでも住宅ローンの融資が通りやすいまたは融資額が増えるようにしたい。 最近はクルマのサブスクも一般化しつつあるとはいえ、借金であることに変わりはない。 解決策として「おまとめローン」のように、家とクルマ、同じタイミングでローンを組んでしまうという手もある。 実際問題、毎月の返済額に驚いて、クルマどころではなくなってしまう可能性大だが……。 ■余談:フリーランスは不利? それほど高額なクルマを購入したことがなかったかもしれないが、筆者がフリーランス時代にもローンは組めた。 しかし、住宅ローンとなるとかなり苦労したことも事実だ。 情けない話ではあるが、何しろ融資額が低すぎた。 審査のとき、売上の金額には目もくれず、年収の数字しか見てくれない。 仮に年間の売上が1000万円だとして、年収を250万円で申告していたら、後者の基準で判定される。 銀行の方に聞いたところだと、3期連続で300万円くらいの年収がないと話にならないらしい。 とにかくフリーランスは社会的な信用が低いということを身に染みて味わった。 テレビで「芸人、家を買う」という企画を観たことがあったが、まさにあれだ。 いまは売れっ子芸人でも、来年、5年後、10年後はどうなっているか未知数だ。 いま以上に売れっ子になって世田谷に豪邸が建てられるレベルに到達しているかもしれないし、「あの芸人はいま?」の特集で紹介されるほど過去の存在になっているかもしれない。 はたまた、体調を崩して療養しているかもしれない。 不確定要素が多く、長期に渡って支払い能力があるかどうかは分からないと判定するようだ。 将来、独立を考えているとしたら、クルマはともかく家は先に手に入れておいた方がいいかもしれない。 はたまた、キャッシュで買えるくらいゴリゴリに稼いでしまえば何の問題もないのだか……健闘を祈る! [画像/Adobe Stock ライター/松村透]
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