2007年に登場したフェアレディZ バージョンNISMOは、2002年から2008年まで発売されていたZ33フェアレディZの限定モデルです。NISMOとオーテックが手を組んで開発し、当時の日産モータースポーツシーンを象徴するモデルでした。今回は、そんなフェアレディZバージョンNISMOの特徴と中古車相場、リセールバリューについて解説します。 日産車カスタマイズを司る“両雄”がタッグを組んだスペシャルモデル 2007年のマイナーチェンジと同時に発売されたのが、フェアレディZバージョン NISMOです。「バージョンNISMO」「バージョンNISMO タイプ380RS」「バージョンNISMO タイプ380RS コンペティション」という3種類のモデルが発売されました。いずれもニスモとオーテックジャパンが共同開発しており、モータースポーツのノウハウが詰め込まれたモデルです。 日産のモータースポーツ参戦と車両開発を担ってきたNISMO(ニスモ)と、日産車向けのカスタマイズパーツを開発・販売してきたオーテックジャパン。フェアレディZ バージョンNISMOは、そんな日産車カスタマイズを司る“両雄”がタッグを組んだスペシャルモデルなのです。 バージョンNISMO 3種類の限定モデルの中でも新車価格が低く、タマ数も多いことから一番入手しやすいモデルが「バージョンNISMO」です。新車販売当時の価格は、449.4万円でした。ノーマルモデルからの変更点はレイズ製鍛造アルミホイール、専用剛性アップボディ、専用サスペンション、YAMAHA製のパフォーマンスダンパーです。 内装に関しても、本革 / アルカンターラのコンビシートのほか専用装備を数多く搭載しています。本革巻ステアリングホイール、シフトノブ、パーキングブレーキレバー、ドアトリム、コンビネーションメーターなど、分かりやすい派手さはないものの、質感と走行性能を向上させるパーツが採用されています。 エンジンはノーマルモデルと同様ですが、同時に行われたマイナーチェンジによりVQ35DEからVQ35HRへ変更されました。出力は初めて300psを超え、313ps / 6,800rpm、36.5kgm / 4,800rpmの数字を誇ります。VQ35HRはVQ35DEを高回転型に再設計しており、そのフィーリングは別物です。VQ35HR搭載のフェアレディZは販売期間が短く、市場に出ている数が少ないため、ハイパワーNAが好きな方にはおすすめのエンジンです。また、VQ35HRに変更されたことでボンネットに膨らみがあるため、VQ35HR搭載モデルであることを一目で見分けることができます。 空力についてはノーマルとは大きく異なっており、専用エアロパーツを装備することで、cd値0.30という当時としては世界最高水準の空力性能を実現しました。これにより、市販車では珍しいマイナスリフトを達成しています。 また、ノーマルでは「乗り味が大型の高級車のよう」といわれていましたが、専用サスペンションとボディ剛性の強化によりスポーツモデルらしい機敏さが加わりました。 レース仕様エンジン搭載モデルも市販化 2022年は新型RZ34フェアレディZの発売とGT500クラスへの参戦が話題ですが、Z33も全日本GT選手権 GT500に参戦した実績をもちます。 R34型スカイラインGT-Rに代わり、2004年から2007年まで参戦しました。中でも有名なザナヴィNISMO Zは、デビューイヤーである2004年の第1戦TIサーキット英田と、第6戦オートポリスでも優勝するなど安定した強さを発揮。2004年だけではなく、続く2005年にはモチュール ピットワーク Zと共にもNISMOとして2年連続のチームチャンピオンに輝きました。 そんなZ33フェアレディZのレーシングスピリットは「バージョンニNISMO タイプ380RS」と「バージョンNISMO タイプ380RSコンペティション」の二つの限定車で体感できます。 バージョンニNISMO タイプ380RS 「バージョンニNISMO タイプ380RS」はレース専用車両である「バージョンNISMO タイプ380RSコンペティション」をデチューンした公道使用モデルです。新車当時の価格は539.7万円で、冒頭に紹介した「バージョンニNISMO」よりも高額なものの、レーシングカーの性能を公道でも味わえる魅力的な一台です。 モデル名にある380は排気量を表し、エンジンは3.5Lから3.8Lにボアアップされています。鍛造ピストン、強化コンロッド、プロフィールやバルブリフト量が見直されたカムシャフトなどに変更され、最高出力350ps / 7200rpm、最大トルク40.5kgm / 4800rpmを発生。レスポンス良くどの回転域からでも胸のすくような加速が得られる感覚は、大排気量NAエンジンの醍醐味です。 バージョンNISMO タイプ380RSコンペティション 「バージョンNISMO タイプ380RSコンペティション」は、スーパー耐久などのレース専用車両で、プライベーターのレースドライバー向けに販売されました。受注生産のみで、価格は2,625万円と驚愕の金額です。しかし、NISMOのレーシングカーをそのまま購入できる「夢のクルマ」といえます。 「バージョンNISMO タイプ380RSコンペティション」に搭載されるエンジンは3.8Lのレーシングエンジンです。MOTEC社製の専用ECMを採用し、最高出力400ps以上、最大トルク43.0kgm以上を発生します。 その他にも、6速クロスミッション、強化クラッチ、メカニカルLSD、ブレンボ社製6ピストンキャリパーと380mm大径ローターを装備。また軽量化のためにドアやボンネットなどにカーボンファイバー、ドアおよびバックドアのウインドウにポリカーボネートが採用されています。 さらに、ロールゲージやバケットシート、セーフティハーネス、消火器、カットオフスイッチ、95L安全燃料タンクなどの安全装備を装着しており、車両購入後すぐに実戦レースへ参加可能な仕様に仕上がっています。 まさに「レーシングカー」そのものであり、中古車市場では滅多に見かけませんが、モータースポーツ好きには憧れの一台です。 日産フェアレディZ バージョン NISMOの中古車市場 フェアレディZ バージョンNISMOの中古車相場は138万円から338万円で、流通量は少ないものの状態の良い車両が多いです。限定車の割には価格が高騰していませんが、今後は純ガソリンエンジン車の減少、大排気量NA車の減少に伴い、価格の高騰が見込まれます。購入を検討している方は早めに市場をチェックするといいでしょう。300台限定のフェアレディZ バージョンニNISMO タイプ380RSはさらに流通量が少なく、2022年8月時点では589万円で販売されています。新車価格を超える金額となっており、今後も値段が下がることは考えにくいでしょう。 そして、旧車王におけるフェアレディZ バージョンNISMOの買取価格は約180万円で、300台限定のバージョンニNISMO タイプ380RSは最大455万円の値がついています。ファンが多いNISMO限定車は驚くほど高い買取額が提示されるケースもあり、売却を考えている方は、一度査定に出してみるといいでしょう。 まとめ 日産 フェアレディZ バージョンNISMOは、性能アップしたVQエンジン搭載モデルやレーシングエンジンを搭載したコンペティションモデルをはじめ、当時の日産モータースポーツを象徴するモデルです。 R34スカイラインGT-Rが2002年に生産を終了し、2007年にR35GT-Rが登場するまでの6年間は、フラッグシップスポーツカーが存在しない時代でした。NISMOとオーテックが手を組み開発したフェアレディZ バージョンNISMOは、そのすき間を埋める存在であると同時に、日産の歴史に残る名車なのです。
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