DIY派旧車オーナーにとってあるある?な失敗談とは
旧車王ヒストリア 2023年03月15日 12:39:20
「昔のクルマに乗る」 ある程度クルマを趣味の対象にしている人であれば、なんのリスクも伴わずに済むと考えている人はほぼいないものと考えます。 「旧車・クラシックカーに乗る」と決めている人のなかには、免許取得年齢になる前から、ありとあらゆる方法で情報収集を始める人も多いと聞きます。 なかにはSNSやイベントで実際のオーナーと交流して早くもお目当ての車両のレクチャーを受けたり、スペシャルショップと懇意になるという話も……。 。 さらに、免許取得年齢になる頃には、このクルマのオーナーになってほしいというオファーを受けるという話も聞きます。 とはいえ、いくら事前に情報収集しても実際に現車を前にすると、文章で読んだり話に聞いていた情報だけでは対処しきれず、思わぬ失敗をしたという人も多いのではないでしょうか。 今回は筆者が実際に経験した失敗についてお送りしたいと思います。 ■注油してはいけない場所に大量のCRC 現在所有しているスバル360の前に、レストアを断念して部品取りに回したレストアベースのス同車を所有していました。 何年も不動状態で、エンジンだけでもかかるようにしようと躍起になったのですが、当時の筆者にできるのはとにかく可動部分にCRCを吹き付けることだけでした。 そのうちに、クラッチハウジングにあったサービスホールを見つけ大量のCRCを吹き付けたところ、実はそのサービスホールはクラッチカバーに刻印された点火タイミングを確認するためのものでした。 当然クラッチカバーはCRCまみれ・・・クラッチディスクはライニングがしっかり残っているにも関わらず潤滑剤がしみ込んで、立体駐車場のスロープもろくに登れないほどのクラッチの滑り具合でした。 ■オイルのグレード・量を間違える スバル360を購入して2年、ある程度は自分でできるようになった頃のことです。 スバル360の主治医から、自分でミッションオイルの交換に挑戦したらと勧められ、まずはBPのギアオイルを2L購入します。 灯油ポンプを使い注油用のドレンボルトの穴から入れたのですが、スバル360のミッションオイルは1.6L。 ミッションオイル規定値になればボルト穴からあふれてくるだろうと勝手に思い込み、気が付いたら結局2L全部使い切ってました。 それでもあふれてくる気配はなく、そのままドレンボルトを締めて乗っていました。 そして楽しみにしていたロングドライブの日、高速道路を走行中に異変を感じます。 エンジンは吹きあがっているのに加速しない。 そこでクラッチをCRCまみれにしたときのトラウマが蘇ります。 クラッチハウジングの点火時期調整用のサービスホールを見ると、オイルのぬめりが光沢を放っています。 どうにかクラッチをなだめながら帰路につき、クラッチハウジングの蓋を開けると、ハウジング内はオイルまみれでした。 規定値を超えたミッションオイルがプライマリーギアのオイルシールからあふれだし、クラッチ周りに侵入。 またもやクラッチディスクをオイルまみれにしてしまいました。 このとき、スバル360のミッションオイルの量はシビアで、オイルジョッキであらかじめ必要な量を計ってから注入することを覚えます。 セリカの購入直後、まだ当時「クラシックカー用オイル」というものがあまり流通しておらず、「鉱物油」を使うといった情報くらいしか出回っていない頃のことです。 その頃、知り合った旧車オーナーも、メーカー純正の鉱物油を入れておけばOKという認識でした。 縁あってトヨタ純正のキヤッスルオイルの鉱物油20L入りペール缶を安く購入でき、オイル交換くらいは自分でしようとしたのですが……。 その後、頻繁なオイル滲みに悩まされることになります。 いくらヘッドカバーガスケットやグロメット類を新品に交換しても、数か月から半年もするとオイル漏れに悩まされていました。 ペール缶のオイルを半分以上使った頃合いで、次のオイルをどうするかを整備工場に相談すると……。 「キヤッスルの10w-30を使っていたの?そりゃ漏れるよ」 まだ、当時はパーツクリアランスが大きい昔のクルマに、現行車向けのオイルを使うとオイル漏れや異音の原因になるという情報が今ほど共有されていませんでした。 以降は、整備工場の勧めるイタリア製の20w‐50の鉱物油を使用し、現在はその整備工場がオリジナル商品として開発したクラシックカー専用の20w-50を使用しています。 昔は20w-50をラインナップするブランドはごく限られていましたが、近年はリーズナブルな物から高級な物まで充実し、旧車には粘度の高いオイルという知識も広く共有されるようになりました。 ■互換性がないことを知らずに年式違いの部品を入手 生産期間が長いクルマは部品が入手しやすいと思われがちですが……。 たしかにあえてオリジナルに拘らず、高年式・後期型の改良型の部品を流用することで強化するというのは常套手段です。 カムやバルブ・変速ギアなど、年式・グレードによってプロフィールの違う部品をいろいろ組み合わせて純正流用によるハイカム仕様や、クロスレシオ・ファイナル変更というのは、一度は考える方も多いでしょう。 ところが、実は長い生産期間の間に細かい仕様変更が繰り返されていて、基本設計は変わらないものの補器類のレイアウトやエンジンそのものが変わっているケースは少なくありません。 なかには、外見は同じでも衝突安全基準の変更でサブフレームの形状そのものが別物といっていいくらい変更されているケースもあります。 1960年代後半からは安全基準、1970年代に入ると排ガス規制が導入され、毎年のように保安基準が目まぐるしく変わります。 そのため同じモデルでも初期型・後期型で基準の変更があった場合、形状や構造が違い初期型の部品では後期型には取付できない、取り付けることはできても保安基準に適合せず車検で不適合になるというケースがあります。 例えば筆者のセリカの場合、1975年以降の排ガス規制後のモデルはホイールベースそのものが違います。 ボンネットもフロントフェンダーはもちろん、ラジエターサポート周りの形状も違うため、フロントセクションの互換性はほとんどないといってもいいくらいです。 また1972年にはフェンダーミラーの構造を可倒式あるいは脱落式にすることが義務化されています。そのためミラー自体の形状は同じでも、ごく初期型のセリカの直付けフェンダーミラーを1972年以降の可倒式ミラーのセリカに使用することはできません。 取り付けは可能ですが、車検場の検査官は各年式と保安基準・排ガス規制の適合を熟知しています。 1972年式以降のセリカに初期型の直付けミラーを取り付けて検査ラインに持ち込むとほぼ確実に不合格になるとのことです(初期型車に可倒式ミラーは問題なし)。 スバル360では年式違いの中古エンジン(中期型)を入手した後に、中期型のクランクシャフトやクランクケースはオイル経路の形状が違うことを知るという失敗をしたことがあります。 2ストロークエンジンでさらに燃焼温度のシビアな空冷エンジンは、オイル潤滑の不備は即ブローにつながります。 他にもピストンスカートの切り欠きの形状も混合気の吸排気動作の「掃気」に影響するため、ピストンの適合には注意が必要です。 純正流用チューンというのは、先人の膨大な試行錯誤や失敗のうえに成り立っているということは頭の片隅に入れておいたほうがいいかもしれません。 ■家庭用塗料をタッチアップに使ってしまう 小物の塗装やちょっとしたタッチアップに家庭用ラッカーを使う。 なかには家庭用ラッカーで再塗装したという人も見たことがありますが、自動車用以外の塗料をクルマに使うのはお勧めできません。 と、いうのも自動車用の塗料は各自動車メーカーの純正色のカラーコードに合わせて調合しているだけではありません。 自動車用塗料は常時直射日光に露光された状態で雨や油脂類・高速走行時の飛び石に耐えられるような耐久性が求められます。 昔、エンジンシュラウドを安い家庭用塗料で塗ったことがあるのですが、あまり綺麗に仕上がらなかっただけでなく、エンジンオイルやガソリンですぐに侵されてしまいあまり長く持たなかったことがありました。 その後、試しに自動車用(正確にはオートバイ用)で塗りなおしたところ綺麗に発色し、多少の油脂類の付着や高温にも耐え、何年も綺麗な状態を保っていました。 また、自動車用塗料は溶剤が強く、家庭用塗料の上から自動車用塗料、特に鈑金修理用ウレタン塗料を上塗することはできません。下の塗膜が上塗り塗料の溶剤に侵されて、ちぢれや剝がれが起こる 「ブリーディング」が発生します。 クルマに使う塗料は必ず、自動車補修用品として販売されている物を使いましょう。 ちなみにクルマのタッチアップ用塗料は、ラッカー系でもかなり溶剤が強いようで、同じラッカー系でも家庭用塗料に上塗りするとブリーディングが発生します。 その代わり自動車用であればラッカーの上からウレタンを上塗りすることにも耐えられるようです。 もし、家庭用ラッカーを使用した車両を鈑金塗装に出すときは、必ず家庭用ラッカーを使った旨を申告し、一度家庭用ラッカーを除去してもらいましょう。 とはいえ、どんな旧車・クラシックカーのスペシャリストも必ず、大なり小なり失敗を経験しているもので、案外「誰もが通る道」なのかもしれません。 もし、若い人が失敗をしているのを見てもあげつらうことなく、優しくどうすればいいかを教えられる、示唆を与えることができるようにありたいものです。 [ライター・撮影/鈴木修一郎] ...続きを読む
情報提供元: 旧車王ヒストリア
記事名:「 DIY派旧車オーナーにとってあるある?な失敗談とは 」