歯学博士・照山裕子の「口から老ける人、若返る人」

「むし歯ではなかったはずなのに歯が割れてしまった」。診療室では、時折そんなケースに出会います。硬いものをかんだ瞬間だけでなく、何げない食事をきっかけに痛みが出ることもあります。歯は人体でもっとも硬いと言われる場所ですが、決して壊れないわけではありません。

歯のヒビや破折には、表面のエナメル質だけに入る浅い線から、象牙質に達する亀裂、歯根が縦に割れる破折まで、さまざまな病態があります。見た目は似ていても、治療の必要性や予後はまったく異なります。

2025年、欧州歯内療法学会は歯の縦方向の亀裂や破折に関する見解を発表しました。ヒビの位置と深さ、歯髄の状態、歯を取り囲む歯周組織の状態を総合して判断することが重要だとまとめられています。単純に「ヒビがあるから抜歯」という話ではありません。

また、割れる原因も1つではありません。<1>強い咬(こう)合力が繰り返しかかる<2>加齢やむし歯などで歯がすり減る<3>大きな詰め物やかぶせ物が入っている<4>過去に根管治療を受けている<5>歯ぎしりや食いしばりがある、などの背景があります。

歯科医院を受診するタイミングがわからないという方も多いのですが、定期的に診てもらっていると予防策が講じられることもあります。かむと特定の歯だけが傷む、冷たいものや熱いものへの反応が続く、歯の一部が欠けた感覚がある、歯ぐきの腫れやうみがある、痛みが消えたり出たりを繰り返す、といった症状がある場合は早めの相談を心がけましょう。

私自身、数年前に何でもない健康な奥歯が欠けました。ここでは書ききれないほどの大変な思いを経て、今は何とか歯を保っています。痛みで眠れない、何事にも集中できないという経験は実に衝撃でした。皆さんには、歯を失う原因がむし歯や歯周病だけではないことをぜひ知っておいていただきたいのです。

情報提供元: 日刊スポーツ_ライフスタイル
記事名:「 むし歯がないのに歯が割れる?見逃したくない小さな亀裂/歯学博士・照山裕子 」