歯学博士・照山裕子の「口から老ける人、若返る人」

「歯ぎしりがひどいのはストレスのせいですよね」。患者さんからよく聞かれる質問のひとつです。実際、睡眠中の歯ぎしりを心理的な負担だけで説明することはできません。睡眠中の脳や自律神経との関係も研究されています。

歯ぎしりを含む「ブラキシズム」には、睡眠中と覚醒中に起きる2つがあります。睡眠時ブラキシズムは、寝ている間に起こる律動的、または持続的な咀嚼(そしゃく)筋の活動。音を立てて歯をこする行為だけではありません。一方、覚醒時ブラキシズムには、上下の歯を繰り返し接触させることや、あごに力を入れて一定の位置に保つことなどが含まれます。

2025年に発表された、専門家たちによる国際的コンセンサスでは、ブラキシズムを必ずしも病気とはみなさず、あごの筋肉の活動として捉えたうえで、歯やあごへの影響を評価する考え方が整理されました。

睡眠中の仕組みも興味深いものです。23年に発表されたレビューによると、歯ぎしりに関連するリズミカルな咀嚼筋活動は、眠りが一時的に浅くなる「微小覚醒反応」や睡眠周期と関係しています。ただし微小覚醒がすべての歯ぎしりの原因というわけではなく、仕組みは未解明です。

一方、日中の食いしばりには、緊張や集中などがかかわる場合があります。パソコン作業中などに上下の歯が触れたままになっていないか、確かめてみてください。安静時は上下の歯が離れているのが一般的です。

起床時にあごが疲れている、歯が欠ける、詰め物が壊れるという症状が続く場合、ブラキシズムが関係している可能性があります。まずは歯科医院で相談してみてください。

歯ぎしりは単なる悪い癖とも、ストレスの表れとも言い切れない現象です。眠っている本人が知らない間に、脳とあごの筋肉が複雑に連動している。その不思議さに睡眠医学の奥深さが見えてきます。

情報提供元: 日刊スポーツ_ライフスタイル
記事名:「 2つのブラキシズム必ずしも病気でない/歯学博士・照山裕子 」