大学生のアイデアが創業444年の老舗の一杯に 大正大学×田丸屋「ラッキーうどん」誕生
創業444年の歴史を持つ水沢うどんの老舗に、大学生たちの新しい感性が加わったら――。そんな世代を越えた出会いから生まれたのが、大正大学メディア表現学科・外川ゼミと「元祖水沢うどん 田丸屋」が共同で企画した「ラッキーうどん」です。2026年9月3日から田丸屋で提供が始まり、いつもの食事に“当たり”を探すちょっとしたワクワクを添えています。
けれど、このユニークな企画は最初から「ラッキーうどん」という形だったわけではありません。学生たちはまず田丸屋や水沢うどんを知ることからスタートし、ツアーやスタンプラリー、さらには「田丸屋をパワースポットに」という案まで、学生らしい視点でアイデアを重ねていきました。
楽しさだけでは実現できない。でも、実現することだけを考えていては人を楽しませられない。その間で何度も試行錯誤しながら、教室で生まれたアイデアは少しずつ“本物の一杯”へ。創業444年の老舗と学生たちは、どのように「ラッキーうどん」へたどり着いたのでしょうか。その舞台裏をたどります。
創業444年の老舗と大学生がタッグ 教室の学びを“本物の現場”へ
東京・西巣鴨にキャンパスを構える大正大学。そのメディア表現学科で学ぶ外川ゼミの学生たちが今回向き合ったのは、群馬県渋川市伊香保町に店を構える「元祖水沢うどん 田丸屋」です。創業は1582年。444年もの歴史を重ねてきた水沢うどんの老舗と、大学でブランディングを学ぶ学生たち。一見すると少し意外にも思える組み合わせから、今回の共同企画は動き始めました。
外川ゼミでは、ブランディングに関する研究に取り組むなかで、学生たちが学んだことを実社会で実践できる機会を模索していました。そこで縁が生まれたのが田丸屋です。学生たちに実践的な学びの場を提供したいという思いから連携がスタートし、田丸屋にも大学へ足を運んでもらいながら、学生との対話を重ねて企画を検討していきました。
とはいえ、最初から「ラッキーうどんをつくろう」と決まっていたわけではありません。初回の打ち合わせでは、何を目指すのか、学生たち自身もどこまで取り組めるのかがまだ明確ではなかったといいます。そこで最初に取り組んだのが、企画を考えることよりも先に「相手を知ること」。田丸屋とはどんな店なのか、水沢うどんにはどんな魅力があるのか。ターゲットや目指すもの、実現できる範囲について一つひとつすり合わせながら、学生たちは少しずつアイデアを具体化していきました。
ツアーから“パワースポット化”まで 学生たちのアイデアが動き出す
田丸屋や水沢うどんを知るところから始まった企画は、学生たちによるアイデア出しへと進んでいきます。最初に挙がったのは、バス会社と連携したツアーや温泉旅館へのポスター掲示、グルメインフルエンサーを起用したSNSでの発信、裏メニューの考案など。どうすれば田丸屋や水沢うどんの魅力をもっと多くの人へ届けられるのか、さまざまな方向から可能性を探っていきました。
アイデアはさらに広がります。水沢うどん街道全体を舞台にしたスタンプラリーやイブニング散歩、田丸屋の歴史やこだわりを伝える卓上POP、ポイントカード、うどん作り体験――。その中にあったのが、ひときわユニークな「田丸屋をパワースポット化」という案でした。学生たちが大切にしていたキーワードは、「すでにあるものではなく、新しい学生らしい視点でやること」。歴史あるものをそのまま紹介するだけではなく、自分たちなりの切り口から新しい楽しみ方を生み出そうとしていたことが伝わってきます。
もちろん、思いついたアイデアをそのまま実行できるわけではありません。学生たちが考えた案を田丸屋にも見てもらい、実現できるのか、企画として面白いのかといった意見を受けながら、何度もブラッシュアップを重ねました。企画の形が見え始めてからも、必要となる経費や店舗でのオペレーションなど、実際にお客様へ届けるための細かな調整が続いていきます。
数あるアイデアの中から次の一歩につながった「田丸屋をパワースポット化」という発想。そこには、田丸屋が長い歴史のなかで大切にしてきたものを学生たちが見つめ直したからこそ見えてきた、いくつものヒントがありました。そして、この少し大胆なアイデアが、やがて現在の「ラッキーうどん」へと姿を変えていきます。
「運が良ければ当たりが出る」――“パワースポット化”から生まれた一杯
数あるアイデアの中で、学生たちがさらに掘り下げていったのが「田丸屋をパワースポット化」という企画でした。きっかけのひとつになったのは、田丸屋にある布袋様の石像です。店では「ほてい様福膳」というメニューも提供されており、学生たちはこうした田丸屋ならではの特徴に着目。「ここにしかないもの」を生かしながら、新しい楽しみ方をつくれないかと発想を広げていきました。
さらに目を向けたのが、女将が一つひとつ手彫りで作成したオリジナルの落款印でした。これを御朱印に見立てたスタンプラリーにすることで、田丸屋ならではの地域性や温かみを感じてもらい、再び店を訪れるきっかけにできないか。そんなアイデアも生まれています。田丸屋からも「パワースポット化」に興味を持ってもらえたことで、学生たちはさらに企画をブラッシュアップ。やがて「運が良ければ当たりが出る」という仕掛けが加わり、現在の「ラッキーうどん」へとつながっていきました。
ただ、“当たり”というアイデアが決まっても、それをどう一杯のうどんで表現するかという新たな課題が待っていました。うどん型のおみくじをつくる、うどんそのものに色を付ける、箸袋やおぼんの色を変える、さらには田丸屋で使われている三角形のざるの形を変える――。学生たちはうどんだけにとらわれず、店にあるさまざまなものへ目を向け、できるだけ新たな費用をかけずにお客様を楽しませる方法を探っていきました。
「面白い」を追いかけるだけでは、実際の店舗では続けられません。かといって実現しやすさだけを優先すれば、人を楽しませるという企画の魅力が薄れてしまいます。その間で学生たちは何度も試行錯誤し、経費や店舗での運用、田丸屋への負担まで考えながら企画を調整しました。当初は6月末または7月初旬を予定していた実施時期も9月3日へ。時間をかけて磨かれたアイデアは、ようやくお客様のもとへ届けられる「ラッキーうどん」という形になりました。
学生たちのアイデアが本物の一杯に 「ラッキーうどん」は9月29日まで
何度もアイデアを出し合い、田丸屋との対話を重ねながら形になった「ラッキーうどん」は、2026年9月3日から実際に提供が始まっています。対象となるのは、田丸屋の「ほてい様福膳」と「だるま福膳」。いずれも2,365円(税込)で、注文した人の中からランダムに、季節にちなんだ形の「あたりうどん」が提供されるという、食事の時間にちょっとした運試しを加えた企画です。
見事“当たり”に出会えた人には、次回来店時に使える「玉子焼き小の無料券」をプレゼント。無料券の有効期限は2027年3月31日までとなっています。その場で楽しんで終わるのではなく、「今度はもう一度、田丸屋へ」と次の来店につながる仕掛けになっているところにも、学生たちが企画を考える中で大切にしてきた視点が表れています。
今回のテーマに据えられたのは、「お客様に小さな幸せと楽しさを提供すること」。食事をするだけではなく、“今日は当たるかな?”という小さなワクワクが加われば、家族や友人との会話が生まれ、その日の食事がいつもより少し印象に残るかもしれません。そんな体験を通じて水沢うどんの魅力を知ってもらい、再び足を運ぶきっかけをつくることも、この企画が目指しているもののひとつです。
「ラッキーうどん」の提供は9月29日までで、毎週水曜日は定休日。学生たちが教室で考え、何度も練り直し、創業444年の田丸屋とともに形にしたアイデアは、いま実際の店舗でお客様へ届けられています。学生たちが話し合いの中で育ててきた“楽しんでもらうための仕掛け”が、本物の一杯として形になりました。
元祖水沢うどん 田丸屋
所在地:群馬県渋川市伊香保町水沢206-1
「ラッキーうどん」提供期間:2026年9月3日(木)~9月29日(火)
定休日:水曜日
公式サイト:https://tamaruya-udon.jp/
教室で生まれたアイデアが、誰かを楽しませる一杯になるまで
「ラッキーうどん」という名前だけを聞けば、楽しくてユニークな企画に映ります。しかし、その一杯が形になるまでをたどってみると、学生たちが経験したのは、アイデアを考える楽しさだけではありませんでした。まず相手を知り、意見を交わし、面白さと実現可能性の間で悩みながら、コストや店舗での運用、田丸屋への負担にまで目を向ける。企画を“考えること”と、実際に誰かへ“届けること”の間には、いくつもの越えるべきハードルがありました。
それでも学生たちは、田丸屋との対話を重ねながら一つずつアイデアを磨いていきました。「田丸屋をパワースポットに」という自由な発想も、そこにある布袋様や女将の手彫りの落款印といった魅力を見つめたからこそ生まれたものです。長く受け継がれてきたものに学生ならではの視点を重ね、新しい楽しみ方へとつなげていく。今回の取り組みには、産学連携だからこそ生まれた面白さが詰まっています。
大学で学んできたブランディングが教室の中だけで終わらず、創業444年の老舗と交わり、実際のお客様へ届く企画になったことも、学生たちにとって大きな実践の機会になったのではないでしょうか。水沢うどんの魅力を伝え、再来店のきっかけをつくり、地域にも新たな楽しみを届けていく。その過程で得た経験もまた、「ラッキーうどん」が生み出した大切なもののひとつに感じます。
何も決まっていなかった最初の打ち合わせから、アイデアを出しては考え直し、ようやくたどり着いた一杯。教室で交わされた学生たちの言葉が、いま田丸屋で誰かの「当たった!」という小さな喜びにつながっています。444年受け継がれてきた一杯に、学生たちが加えた新しい楽しさ。その小さな“ラッキー”は、田丸屋を訪れる人たちの記憶に残る一杯へとつながっていくことでしょう。
大正大学 概要
大正大学は、設立四宗派の天台宗・真言宗豊山派・真言宗智山派・浄土宗および時宗が協働して運営する大学です。
1926年の創立時から「智慧と慈悲の実践」を建学の理念に掲げ、〈慈悲・自灯明・中道・共生〉という仏教精神に根ざした教育ビジョン「4つの人となる」のもと、教育研究活動を展開しています。2026年の創立100周年を「第二の開学」ととらえ、次の時代に向けた歩みを進めています。
公式サイト:https://www.tais.ac.jp/