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壌結合同会社(よみ:つちむすび、所在地:東京都渋谷区)が推進する、「八百結び(R)プロジェクト」。
地域の畜産農家が排出する糞尿や家庭用生ゴミなど、本来廃棄される有機物を独自の“バイオスティミュラント”と掛け合わせて、付加価値の高い農業用資材(産土・培養水)を生成。地域農家に供給することで、無農薬栽培、減農薬栽培をサポートする取り組みだ。
“バイオスティミュラント”は植物に対する非生物的ストレスを制御することにより、気候や土壌のコンディションに起因する植物のダメージを軽減。健全な植物を提供する新しい技術のこと。
壌結合同会社の八百結びプロジェクトでは、土壌微生物の活性を通じて、「地球本来の循環サイクルの実現」を目指す。微生物の活性によって農地の地力を向上させるとともに、収穫された残留農薬ゼロの安全でより美味しい作物は、高付加価値のブランド品として、地域のスーパー、道の駅などで販売。不要なものを八百結び農法によって再生することで、地域循環型の社会を推進している。
壌結合同会社では、「八百結び農法(R)」によって鹿児島県内の圃場でサツマイモ基腐病を克服したと、2024年5月28日に発表した。
鹿児島県内で地方創生に取り組む、錦フロンティアコーポレート株式会社(所在地:鹿児島県錦江町)の協力を得て、鹿児島県南大隅町で「八百結び農法(R)」による実証栽培に取り組んできた成果。
2023年度の実証栽培で、慣行栽培区では防除をしたものの一部基腐病が発生したが、八百結び農法区では基腐病の発生がなかったという。
この成果を受け、2024年度は実施圃場を拡大する。
「サツマイモ基腐病」は、糸状菌(カビの一種)が原因で、主にサツマイモ(ヒルガオ科:かんしょ)に感染する病害。
感染するとサツマイモの地際部の茎が黒変し、病徴が進むと葉や茎が枯死。その後、塊根(芋)が腐敗する。
他の病害に比べて感染力が強く、短期間で被害が拡大。多発した圃場では大幅な減収が見られるなど重大な被害をもたらす。
従来の「サツマイモ基腐病」対策は、病原菌を「持ち込まない」「増やさない」「残さない」の三つが柱。総合的な取組が重要とされ、「種芋圃場は栽培終了時まで徹底的に薬剤で防除する」ために各県において防除対策をまとめた「防除暦」などが整備されてきた。
しかし、薬剤による消毒・防除は、少なからず多くの土壌微生物にもダメージを与える。一方で、「八百結び農法」は消毒を行わず、土壌微生物を活性させる環境再生型の農法。今回も土壌微生物を活性させる方法を用いて、サツマイモ栽培を実行した。結果、土壌微生物が活性して、生物多様性を取り戻した土壌において、サツマイモ基腐病の発生を防ぐことができたという。
慣行栽培区では、防除をしたものの一部基腐病が発生して、発病株の抜取りを行ったためマルチ(株元を覆うシート)が見える状態となった。
一方、八百結び農法区では基腐病は発生しなかった。また、定植日や株間などの条件は同じものの、健康的にイキイキと微生物活性した八百結び農法区では、同日の撮影ながら葉は青々とした色を保つ状態と生育における違いが確認できた。
収穫されたサツマイモは一定期間貯蔵される。収穫から半年が経過し、栽培協力した生産者からは、「八百結び農法区で収穫されたサツマイモは、他の圃場で収穫されたサツマイモと比較して、腐れが出ることなく良質な状態を保っている」との報告が上がっているという。
2023年度の実証栽培の結果を受け、鹿児島県南大隅町のサツマイモ圃場では、2024年度は八百結び農法区を約3haに拡大して、再現性の確認に入る。壌結合同会社はすでに大隅エリアにおける八百結びの産土の増産を完了し、対象圃場への散布を開始している。
なお、壌結合同会社では八百結び農法の対象を“原則、全ての作物”としており、サツマイモだけでなく、多様な作物の栽培で、八百結び農法の普及に取り組む。
すでに導入実績のある作物は、米(水稲)・小麦・とうもろこしなどの穀物、大豆・そらまめなどの豆類、ブロッコリーや春菊・なす・トマトなどの野菜や、玉ねぎ・りんご・いちご・バナナなどの果物、さらには日本茶や、ワイン原料のピノ・ノワールなど、多岐にわたる。
八百結びブランドの公式オンラインショップも開設されており、一部の加工品や、時期によっては作物の通販購入も可能だ。
壌結合同会社は八百結び農法の取り組みを通じ、2050年カーボンニュートラル宣言(2020年10月26日)を受けて農林水産省より発表された「みどりの食料システム戦略(2021年5月)」内で掲げられた「土壌微生物機能の完全解明とフル活用による減農薬・肥料栽培の拡大」「耕畜連携による環境負荷軽減技術の導入」「バイオスティミュラントを活用した革新的作物保護技術の開発」目標への貢献をめざすとしている。