腕時計が男のステータスだった時代は、いまは昔。寂しいようですが、誰もがブランドネームにとらわれない自由な感性で、シーンに合わせてモノを選び・楽しむようになったということでもありましょう。


反面、少しずつ大人になってきたボクらには、いわゆる“いい腕時計”をつけた先輩たちが眩しくも映るのですが、とはいえ大型デパートで誰もが手に入れられる高級腕時計にはやはり惹かれない……。そんなアマノジャクの食指を動かすのは、やはりアンティークウォッチではないでしょうか!



「Sweetroad」は、国内外のアンティークウォッチを広く扱う中古時計販売・修理専門店。アンティークウォッチのいろはを学ぶべく、店長・平野拓生さんを訪ねました。



 


ふたつと存在しない個体の魅力。


−アンティークウォッチの魅力って、ずばり何なのでしょう?


醍醐味は、同じものがひとつも存在しないということでしょうね。製造されてから時間が経つほど、湿気や紫外線はもちろん、さまざまな要因によって個体差が生まれます。たとえば僕の『ロレックス GMTマスター』も、すっかり日焼けしてインデックスが黄色く変色してしまっている。



経年による変化だけでなく、製造された年代によって同じ型番であってもディテールに違いがあることも、ならでは。


1968年製(左)と1981年製(右)のサブマリーナ。よく見ると右の方が、王冠がわずかにスラリとしている。左右で、「SUBMARINER」の表記位置も入れ替わっているのがわかる。

−ディープですね……。同じモデルを何本も集めているマニアがいるのにも納得です。


そんな風に非常に奥が深いにもかかわらず、必ずしも高価なわけではないのも、また魅力です。現行の高級時計を買うよりも、意外と安価に手に入ったりする。特に「オメガ」には10万円前後のモデルも多数存在するので、とりあえずの一本としてはその辺りが狙い目です!


 


最初の一本には、60-70年代モノを狙うべし!


−いくら現行品よりお手頃とはいえ、そこはアンティークウォッチ、扱いが難しそうです。



これも意外に思われる方が多いのですが、実はそんなにデリケートなものでもないんです。特に60-70年代のものは耐震構造も備わっていて、無理な使い方をしない限りは壊れにくい。万一壊れてしまっても、修理やメンテナンスもしやすいですし。そのあたりを入り口にすれば「アンティークウォッチは難しい」という先入観も払拭されるはず!




その魅力は底なし、それでいて、決してとっつきにくくはないことが判明したアンティークウォッチ。少し光が差したところで、じゃあ具体的にどんなモデルを選ぶのがいいの?ということで、「Sweetroad」でも扱っているものを、いくつか紹介してもらいます。


スタンダードな顔が、シーンの垣根を取り払う。


01. OMEGA シーマスター(1966年)



¥98000


「オメガのなかでも、もっともポピューラーなモデルがこれです。綺麗に焼けたオリジナルのシルバーダイヤルが印象的ですが、なにより、オメガを10万アンダーで買えるというのが魅力。無理に背伸びして買った現行品より、そういったものの方が絶対説得力があると思います!」


 


02. OMEGA ジェラルドジェンタ前期型(1968年)



¥118000


「オメガの高級機種。『時計界のピカソ』と評され、あのパテックフィリップのデザイナーとしても知られるジェラルド・ジェンタが手がけたモデルです。ドーム型のプラ風防がなんともいい雰囲気を醸していますよね。



どちらのオメガもスタンダードな顔なので、フォーマルなスタイルにしか合わないと思われがちですが、実はナイロンベルトにも合います。革ベルトの種類によってもかなり印象は変わる。ゴリゴリにアンティークらしいものより、どんなスタイルにもハマるものが、最初の一本としては断然おすすめです」


 


大ぶりのダイバーウォッチでも、国産なら腕に馴染みよい。


03. SEIKO 150mダイバー・セカンド後期モデル(1974年)



¥228000


「世界的に有名な冒険家・植村直己さんが、北極圏12,000キロの距離を走破した際に着用していたモデルです。プロスペックなのはもちろんですが、特に1974年というのは、セイコーが技術投資を惜しまなかった時代。世界基準のクオリティであり、事実、海外でのコレクターも多いんです。


また、人間工学的によくできているのもセイコーならでは。手首に馴染みやすい角度や厚さを緻密に計算して作っている分、着け心地も一級品です」




 


Tシャツ・短パンには、ちょいとチープなものを。


04. TUDOR サブマリーナ(1984年)



¥758000


「夏はTシャツ・短パンといった軽装だからこそ、それだけ説得力のあるものをつけたいものですよね。おすすめは『サブマリーナ』ですが、ガラス風防のものは高級感がありすぎて硬い印象になってしまいます。選ぶなら、極厚のプラスチック風防がやわらかい印象のチュードル。短針がタコ針(針の先端が丸くなっている)で、ちょっと間抜けなのもいいですよね」


 


05. TUDOR オイスター(1965年)



¥218000


「ちなみにチュードルというのは、ロレックスのオイスターケースに、安価なムーブメントを搭載して価格を抑えた、初心者でも入りやすいブランド。『ロレックスのスペックを備えながら、あえてロレックスじゃない』という天邪鬼的な意味でも格好いいですし、職場がお堅く、『いかにもなブランドものは着けられない』という悩みにも応えてくれます」


 


歴史の長さは、愛したひとの多さ。


06. ROLEX エアキング(1964年)



¥318000


「『エクスプローラー』のイメージが強いロレックスですが、あえて『エアキング』を選ぶマニアも少なくありません。デイトも無く、どスタンダードな顔。こちらは、初期型の個体に採用されたバタフライローターを持つ非常にアンティークらしい個体です。


ちなみに歴史あるアンティークウォッチは、それだけ多くの著名人からも愛されています。アラン・ドロンやモハメド・アリが、カルティエの『タンク』をこよなく愛していたのは有名な話。この『エアキング』も、かつてサンローランやディオールのクリエイティブディレクターを務めていた、かのエディスリマンが愛用していたモデルです」




メンテナンスは4年に1度でよし!実は手間いらずなアンティークウォッチ。


−やはりアンティークウォッチと聞いて、どうしても気になるのが、長く付き合っていくためのメンテナンスについてなのですが……。


実は、日頃のメンテナンスってほぼ必要ないんです。それこそ、汗をかいたときに拭き取るくらいのもので。



−では、定期的にお店に持って行き、メンテナンスをしてもらうくらいでいいのですね。


車検と同じで、3−5年に1度はオーバーホールをしなければなりません。とはいえそういう作業ってアンティークウォッチに限らず、機械モノにはつきものですからね。知らないひとからすると、メンテナンス自体ですごく費用がかかるイメージがあるかもしれませんが、うちでは大体2万円くらいで行っています。


 


着用は、シーンを選んで。軽度なアウトドアアクティビティにも。


−ぶっちゃけ、アウトドアとの相性ってどうなのでしょう……?



基本的には、アウトドアに行くなら僕も「G-SHOCK」をしていきます(笑)。適材適所だと思うんです。たとえばフェスや海に行くなら「G-SHOCK」。街なかにしていくならアンティークウォッチ。結婚式みたいな祝いの席なら現行のオメガ、とか。シーンに応じたひとつの選択肢として捉えるのが、本当は良いのかなと。


軽度なアウトドアアクティビティには、着けて行ってもいいと思います。BBQや簡単なキャンプくらいなら。水と衝撃には、くれぐれも気をつけて……。



また、ことファッションとして捉えることにおいては、選ぶモデルやベルト次第でいかようにもアウトドアの雰囲気に合うはず。事実、街でアウトドアマインドを高めるためにダイバーウォッチをつけているひとも多いですよ。


情報提供元: GO OUT
記事名:「 ロレックスやオメガならユーズドが狙い目。プロに聞く、中古ウォッチのいろは。