宮城・栗原の山と暮らしの道具店「ourthing」。栗駒山に登ったら、六日町にも寄っていこう。
宮城・岩手・秋田の3県にまたがる栗駒山。その宮城県側の麓、栗原市の栗駒岩ケ崎には、昔ながらの六日町通り商店街がある。登山口のいわかがみ平から車で約40分。この通りに店を構えるのが、「ourthing 山と暮らしの道具店(アワーシング)」だ。
店内には、軽量なハイキングギアやキャンプ用品と、家で使う生活雑貨が並ぶ。栗駒山で使う装備や登山の記念を探しに寄る人もいれば、日用品を目当てに通う地元のお客さんもいる。
店を営む蘇武(そぶ)さんに、山道具と生活雑貨を選ぶ基準や、六日町での店づくりについて聞いた。
山帰りのハイカーも、近所の人も入りやすい店に。
取材中に訪れたのは、アウトドアをするわけではないという地元のお客さん。靴下やエプロンなど、生活雑貨を見に来る人もいるそうだ。蘇武さんも「みんなウェルカム」と話す。
一方で、見慣れない道具に驚かれることもあるという。ハイキングの装備に詳しい人が気になるような、少しマニアックな道具も扱っている。日々の買い物でふらっと寄れる気軽さと、わざわざ探しに来たくなる品揃えがあるのだ。
店はもともと、同じ通りにある建物の2階で始まった。移転後は、通りから気軽に立ち寄れる1階に。以前の内装を生かしながらDIYで手を加え、明るい売り場に整えたという。
紅葉の季節には、栗駒山に登るため遠方から訪れる人も増える。山をきっかけにourthingを知り、その後は登山の予定がなくても店へ通うようになったお客さんもいるという。平泉や鳴子方面への観光とあわせて、商店街へ立ち寄る人もいるそうだ。
下山後の楽しみを、六日町にもつくりたい。
ourthingがオープンしたのは2017年。栗原市出身の蘇武さんが、仙台でアパレルの仕事やアウトドアショップのバイヤーを経験し、地元へ戻ったことを機に始めた店だ。
場所を選ぶうえで思い描いていたのは、山を下りた後、コーヒーを飲み、アウトドアの道具を見て帰ること。実際に、自身が栃木県の那須でそんなショップに巡り会ったことがきっかけだった。同じような楽しみ方を、栗駒でもできたらいいと考えていたそうだ。
当時の六日町では、カフェ「かいめんこや」など、小さな商いを始める人たちの動きが生まれていた。カフェがあるこの通りに道具店が加われば、山へ来た人が街へ寄るきっかけにもなる。昔からの商店街に出店したのには、そんな理由もあった。
栗駒山は、蘇武さんにとって子どものころから身近な山。学生時代には友人と登ってキャンプを楽しみ、仕事でアウトドア用品を扱うようになってから、登山への関心が深まったという。
2008年の岩手・宮城内陸地震で、栗駒山へ入れなくなった経験も大きかった。いつでも登れるとは限らないからこそ、行けるうちにいろいろな山を歩いておきたいと思ったそうだ。
自分で使って信頼できるものを、使う人に合わせて。
商品を選ぶ基準は、自分で使い、信頼できることだ。
ただし、珍しさや軽量性だけを追いかけるわけではない。訪れる人の経験も、遊び方もさまざまだ。たとえばストーブひとつとっても、アルコールストーブだけでなく、扱いやすいガス燃料式ストーブも取り揃える。そのなかで、ひとりひとりに合わせた提案をしているそうだ。
山道具は蘇武さん、生活雑貨は主に奥様が担当。自然のなかで過ごすのが好きだからこそ、普段使うものにも素材や風合いを大切にする目線が通っている。
取材時には、新米も並んでいた。「うちのお米です」と蘇武さん。店を営みながら米づくりも続け、その収穫も店頭に届けている。稲刈り直後のタイミングで訪れることができたら、ぜひ手にとってもらいたい。
外遊びを広げる道具と、栗駒山にちなんだお土産。
店頭では、山歩きの楽しみが増える道具や、家へ持ち帰りたいものを紹介してもらった。
部屋に飾る山の景色。HIGASHI ALPSのカレンダー。
イラストレーターの落合恵さんが手がける「HIGASHI ALPS(ヒガシアルプス)」は、山をモチーフにした雑貨や出版物を展開するレーベル。ourthingでも長く取り扱っている。
温かみのあるイラストを使ったポストカードや缶バッジが並ぶなか、印象に残ったのが2027年のカレンダー。絵を飾るように山の景色を楽しめ、毎年買いに来るファンもいるという。
落合さんは、槍ヶ岳山荘のTシャツや山小屋のロゴなども手がけている。作家の名前を知らなくても、山でその絵に出会っていた人もいるかもしれない。
単眼鏡ひとつで、いつもの外遊びが変わる。
Nocs Provisions「Zoom Tube 8×32」¥13200
「Nocs Provisions(ノックスプロヴィジョンズ)」の単眼鏡は、遠くの鳥や山の景色を眺めるための道具。紹介してくれた「Zoom Tube 8×32」は倍率8倍。コンパクトで、山歩きにも持ち出しやすい。鮮やかなカラーリングも、精密機器らしい堅さを感じさせない。
小さな子どもがいる家庭にもすすめたい、と蘇武さん。遠くの鳥を大きく眺めたり、普段は見過ごすものを見つけたり。特別な遊び場へ行かなくても、これを持って出かけるだけで自然の見方が変わる。その面白さを、実際に外で試して知ってほしいと話していた。
Nocs Provisions「Photo Rig Smartphone Adapter」¥6050
一緒に購入する人も多いというのが、スマートフォンを取り付ける「Photo Rig」。単眼鏡を通して、スマホで望遠撮影を楽しめるアダプターだ。
眺めていたものを、そのまま写真にも残せる。大きなカメラや望遠レンズを持ち出さずに撮影の幅を広げられるので、荷物を抑えたい山歩きにも面白い組み合わせだ。
栗駒山を着て帰る、オリジナルTシャツ。
Ourthing「Mt.Kurikoma “HIKE” 4.1oz ドライTシャツ」¥6050 / 「Mt.Kurikoma “HIKE” 4.1oz キッズドライTシャツ」
栗駒を訪れた記念に持ち帰りたい、ourthingオリジナル「Mt.Kurikoma」Tシャツ。山の稜線と、標高にちなんだ「1626」の数字をプリントしている。
すっきりとしたデザインで普段も着やすく、山歩きの思い出を日常でも楽しめる一枚。大人サイズだけでなく、子どもサイズも展開しているので、家族でお揃いにしてもかわいい。
栗駒山の小さな記念に。ヤマサンカの限定ピンズ。
小さな山の絵柄が目を引くのは、「山に登る楽しさを、下山してからも分かち合いたい」をコンセプトにしたマウンテンギア&お土産ブランド「ヤマサンカ」のピンズ。山ごとに販売場所を設ける地域限定シリーズで、栗駒山のピンズはourthingで取り扱っている。
帽子やバッグに付けられ、山仲間へのお土産にもぴったりだ。登った山のピンズを少しずつ集めるのも楽しそう。
毎日の掃除や料理に。昔ながらの生活道具。
山道具とあわせて見ておきたいのが、ほうきやちりとり、トタンのバケツ、ざるといった生活道具。自然素材を中心とした日用品を扱う荒物問屋「松野屋(まつのや)」など、暮らしに根差したものもセレクトしている。
昔ながらの道具を素材や佇まいを気に入って選ぶと、日々の家事が少し楽しみになる。使い勝手を聞きながら、家で長く付き合いたい道具を探してみたい。
山へ来た人を、商店街でも迎える。
山を楽しんだ人に、六日町にも立ち寄ってもらいたい。そのための取り組みが、取材時に行われていた「山と商店街」という企画だ。各店に山の写真を飾り、山にまつわる商品を紹介するポップを掲示。飲食店も参加し、商店街全体で栗駒山の季節を盛り上げていた。
蘇武さん自身も商店会の活動に関わり、雑貨店の有志でスタンプラリーを企画するなど、店の外へと取り組みを広げている。周辺には、老舗の豆腐店を改装したブルワリーもあり、買い物や食事を楽しみながら歩いてみたくなる。
2027年には開業10周年を迎える。コロナ禍で一度止まってしまった、お客さんとの交流やイベントも少しずつ再開していきたいそうだ。店内での買い物に加え、人と集まる機会もつくっていこうと考えている。
買い物とあわせて寄りたい、六日町の「かいめんこや」。
取材当日に食事へ向かったのは、同じ六日町通りにある「かいめんこや」。ourthingの出店の話にも登場した、かつて薬屋だった建物を使うカフェだ。
木の柱や梁が残る店内には、本棚やテーブルが並ぶ。建物の趣を味わいながら腰を落ち着けられ、商店街を歩く合間の休憩にもぴったり。
この日いただいたのは、「山と商店街」に合わせた盛り付けのカレー。普段提供しているカレーを、ご飯と付け合わせで山と紅葉に見立てている。
辛さは控えめながら、スパイスの豊かな香りが心地よく広がる。口当たりも軽やかで、ひと口、またひと口と食べ進めたくなる味わいだった。
紅葉の盛りを過ぎた栗駒山を歩く。
ourthingを訪ねた後日、栗駒山へ登った。山頂付近の紅葉はすでに終わっていたが、山肌には笹の緑と草木の黄褐色が重なり、晴れた空の下に稜線がくっきりと見える。
訪れた日は紅葉期のマイカー規制も終了しており、車でいわかがみ平まで上がって登山を開始。中央コースは、ほとんどが石畳や木の階段で整備された区間で歩きやすく、景色を眺めながら気持ちよく登ることができた。
鮮やかな紅葉とは違う、晩秋の山の表情もいい。見頃を過ぎていても、この景色を眺めに来てよかったと思える山行だった。
下山後は「チロル」のとんかつスパゲティで満腹に。
山を下りた後は、蘇武さんに教えてもらった八日町の「和洋レストラン チロル」へ。六日町に隣接する通りにあり、登山帰りのお客さんもよく立ち寄るという。
注文した「とんかつスパゲティ」は、皿いっぱいの麺に、切り分けたとんかつが載る一皿。聞いていたとおりのボリュームで、山を歩いた後の空腹にうれしい。下山後のご飯にすすめてくれた理由もよくわかった。
栗駒山を目指した旅に、六日町で過ごす時間を。
栗駒山への登山を目的に訪れた、宮城県栗原市。麓の道具店ourthingを訪ねたことで、山の景色はもちろん、六日町で道具を見たり、食事をしたりした時間も、この旅の思い出に残っている。
山登りの前後の時間も楽しみが続く街にしたい。その思いで商店街の仲間と取り組むourthingは、栗駒山と六日町をつなぐスポットだ。山へ向かうなら、麓で過ごす時間も旅程に加えておきたい。
住所:〒989-5301 宮城県栗原市栗駒岩ケ崎六日町95-2
Open:11:00〜18:00(水・木曜定休。祝日は営業。農繁期などは変更あり)
TEL:0228-24-8305
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