前回からスタートしたGO OUT WEBの音楽企画「GO OUT MUSIC FILE」、その第2回に登場するのは、今年で結成25年、名曲“My Way”を含むファーストアルバム『Def Tech』のリリースから20年を迎えるDef Techだ。ヒップホップ、レゲエ、サーフミュージックなどをミクスチャーしたハッピーな音楽、ピースフルなメッセージを掲げて駆け抜けた25年間。初期の下積み時代、大ブレイク期、2020年のYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」出演で得た再評価、そして初出演の〈GO OUT JAMBOREE 2025〉への期待などを語る、MicroとShenの軽妙な掛け合いに耳を傾けてみよう。

インタヴュー・文/宮本英夫

こんな音楽売れないよって言われてきた

――Def Techは2001年に結成。いまその頃を振り返ると、どんなことを思い出しますか? 

Shen 俺らは渋谷のClub AsiaとかVUENOSあたりのクラブで育てられたんですよ。「なんで朝3時にライブしないといけないんだ!」とか、ぶつぶつ言いながら(笑)。

Micro リハが夜8時なのに本番は朝4時とか。それがほぼ毎日だったよね。昼、夕方、ゴールデンタイム、深夜と、1日4本を1週間。つまり週に28本、ライブしてたから。

Shen 事務所の社長に言われていたのが、「あんたたち、100回以上ライブをやらないとプロと言えないよ」って。

Micro 「1000本ノックだ!」って言ってた時期。知らないアーティストがいっぱいいるイベントに出たり、アイドル枠の間に出たり(笑)。「今のうちに叩き上げるぞ!」って気合があったよね。デビュー前は本当にすごかった。

Shen でもそのおかげで、ライブのスキルも、マイクの持ち方も、どうやったら人が反応するかとかもわかった。ただいちばんヤバかったのは、お互いの言語がわかんなかったこと。

Micro Shenは英語だけ、僕は日本語だけしか喋れなかった。

Shen スマホでずっと調べて、会話してた。いや、その頃はスマホじゃない、ガラケーだ。

Micro  iモードで翻訳してた(笑)。

Shen そういう意味でも、いろんな壁を乗り越えてきましたよ。

Micro で、僕らの時代から、敬語でステージに立つっていう習慣が始まったんですよ。Bボーイの先輩たちは「お前ら元気か?」だけど、僕らは「皆さん元気ですか!?」。僕らの世代から変わった。ステージの上から「お前ら、調子はどうなんだよ!」って偉そうに喋る先輩たちが、嫌で嫌でしょうがなかったから。僕らの世代からは「皆さん調子はどうですか。これからみんなでいい音に入っていきましょう。ホー!って言ってください」って感じ。ステージのパフォーマンスとして、自分を大きく見せることから、ちょうど切り替わっていった時代。

――なぜ変えようと思ったんですか。

Micro 違和感ですね。先輩たちのステージングは、かっこよかったんだけど、「僕らは違うよな」って思ってた。曲についても、「Jラップのサビは日本語で歌うもんだ。“My Way”の英語で入ってくるサビはありえない」って言われた。そういうところに違和感があったんですよ。

Shen 当時は「こんな音楽売れないよ」ってずーっと言われてた。そこを色々乗り越えてきたし、続けて良かった。25年も頑張ってきたよね。

――ところが2005年の“My Way”のヒットをきっかけに、ファーストアルバム『Def Tech』が280万枚越えのメガセールスを記録。インディーズの記録を塗り替えました。とんでもないことになりましたね。

Micro 事故ですね。宝くじが連発で当たったみたいな感じ。

Shen 完璧に事故った(笑)。あのタイミングであの曲で、制作メンツもバッチリで、バーン!ってなった。すべてが完璧だった。

Micro それまで、事務所からは、バイト代位のお給料をいただいて、プラス俺のお母さんから1000円ずつご飯代をもらってたんですよ。だから、〈1000円ブラザーズ〉とか言って。

Shen 給料から家賃払って、生活費に回したら、ほとんど残らないから。

Micro その1日1000円の使い道は、すき屋、松屋、吉牛とか(笑)。

Shen 電車に乗って帰ったら、1食食べられないからなるたけ歩いて……。

Micro うちに来たら1000円もらえるので、Shenはしょっちゅう来てた。「これで何か食べなさい」とお母さんからもらったあの1000円はでかかった。でも25歳であの生活は、結構きつかった。

Shen きつかったよ。

Micro それが、“My Way”を含めてアルバムがヒットしたあとガラッと変わった。ただ、今思うと、自分たちはそんなに変わんなかったなって思うんですよ。大金を持った時も、1000円暮らしだった時も。見る人の目が変わったり、聴く人の耳が変わったりしただけで、根本は変わんなかった。

Shen でも、そのギャップは辛かった。

Micro うん。自分がもっと変われてたらいいんだけど、そこに追いついてない自分がいたから。生活が変わるわけでも、性格が変わるわけでもない。ヒットが成功とも違うと思うし、成功と幸せも違うと思うし。

Shen 違うね。

Micro みんな有名になりたいって思ったり、モテたいと思ったり、きっかけはそうだったとしても、それが叶ってみると、そこに自分が見合ってないというか、乖離してるものがあって、名前だけが先行していく。人間力をつけないと吹き飛ばされちゃうなって思ってました。

20年を経て世界に届く“My Way”

――それで、2007年から2010年まで一度解散しちゃうんですよね。そこから復活して今に至る。すごいドラマだと思います。

Micro 今がいちばん仲良いしね。

Shen 仕事がなくても会ってる。

Micro プライベートでも遊んでるしね。デビュー前に、今ぐらい思い合って愛し合っていたか?といったら、違う気がする。ずっと一緒にはいたけど、「目標があるから二人で頑張っていこう」っていうのと、今仲良くしてるのとは意味が違うし、今が一番良い。仲良しこよしをしたくてそうなったんじゃなくて、いろいろあった上で、もはや家族以上。Shenといると、誰よりもストレスないわって思う。

Shen 誰よりも歴史長いもんな。人生の半分ぐらいを知ってるから。しかも、この経験をしてる人は俺らしかいない。家族と話しても、俺らの気持ちはわかんない。芸能界の中でいろんなプレッシャーがある上で、「わかるよ~」って言い合えるのはMicroだけ。

Micro だから、次の世代の子たちに本当に「解散はするな」って言いたいですね。

Shen 休止はしていいけど、解散はやめたほうがいい。

Micro やったことの責任が、あとでわかるから。BAD HOPもKANDYTOWNも、いいグループほど早く解散しちゃうけど、ちょっと先を行く先輩としては、休んでもいいから、やめるっていうことはやめたほうがいいと言いたい。実際、(最初の解散で)離れてしまったリスナーもいたし。でも、それが「THE FIRST TAKE」で変わった。

――その、2020年12月に出演したYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で披露した“My Way”が、想像を遥かに超える大反響を呼びます。SNSを通して、当時を知らない若い世代や、海外のリスナーへも凄い勢いで拡散されました。

Micro 今、「THE FIRST TAKE」の“My Way”が5200万以上再生されてて、たぶん当時よりも聴かれてると思うんですよ。ある人には本当に懐かしくて、若い子たちには新鮮に響いている。

Shen 海外のYoutuberとか「THE FIRST TAKE」を見た人のリアクションビデオがすごかった。「ワオ! これはOLD SCHOOLだね」って若い子が言ったりしてて、「そうか、俺らOLD SCHOOLになったんだ」って(笑)。あと「OLD SCHOOLっぽいけど、(ラップだけじゃなく)歌ってる」とか、「何か新しく感じる」とか、「この白人、めっちゃいいこと言ってるな」とか。「やっと俺の英語が届いた人がいた!」って思ったよ(笑)。

Micro 15年間、Shenの歌詞は日本では理解されてなかったんじゃないですかね。

Shen 今は違う時代になったっていう感じがしました。

Micro 「THE FIRST TAKE」のサブスクでの配信のSpotifyとApple Musicのエンゲージメントを見ると、去年で163か国(地域)に聴かれている場所が広がってるんですけど、“My Way”を聴いてるのはだいたい日本より南の島とか、赤道直下のあったかいところ。台湾、ベトナム、タイ、セイシェル諸島、フィリピン、パラオとか、そこに集中してる。アイランド・ミュージックとして聴かれてるみたいです。だからDef Techは寒い地域には届いてない(笑)。

Shen それが現実です(笑)。

Micro でもね、そういうところで聴かれるのはすごく嬉しい。僕ら、ずっとUSばっかり見てきたなと思うけど、韓国の音楽がこれだけすごくなったことも含めると、日本はアジアを見てなかったんじゃないかな?って思うから。ビジネスレベルではアジアを見ていたと思うけど、エンタメとしては、中国や韓国は日本の10年前だと思って見てきて、それが今や逆転してる。僕もそうで、USとかハワイのカルチャーばかり見てきて、美学を作りすぎていたのかな?って。だからここからの5年10年は、今まで見てきたものとは向く方向や尺度が変わっていくんだろうなと思ってます。

Shen グローバルで考える時代。赤道ツアーとか、やってみたいね。これからの時代は、もっと地球を融合するべきだと思うな。アメリカはいろんな変なことやってるし、日本はもうちょっとアジアをリードするべきだと思うね。世界中の人たちが、日本を見て安心しているから。安心な国ですよ。中から見ると色々あると思うんだけど、外から見ると、ちゃんとコアがあって、文化が強い国だから。ちょっと話が飛んだけど。

Micro 僕ら、何か質問されると、人生の答えのほうを言っちゃうんですよ(笑)。音楽の質問が来ても。

海と山、どちらも人間に欠かせないもの

――話を変えて、3月に全国4か所で対バンツアー〈Def Tech“Double Up”Tour 2025〉が開催されます。今年で3年目となるこのツアー、今回はどんなものになりそうですか。

Micro 〈Double Up〉を始めたきっかけは、ワンマンツアーとは別に何か一つ勝負をしていきたいと思った時に、コラボレーションというよりも、一対一でぶつかり合うライブがしたかったから。フェスにもいっぱい出させてもらってるけど、そこではあんまり仲が深まらないんですよ。だけど〈Double Up〉は一対一で、バックステージの過ごし方も含めて、その人たちのライフスタイルも見えてくるし、仲良くなれるチャンス。まず既成事実として一緒にライブをしちゃおうということで、2年前に始めたのが 〈Double Up〉なんです。そのおかげで、2年前に出てもらったCreepy Nutsとか、会いそうで会わなかった人との接点ができたり、去年のKREVAくん――僕が15歳の時、最初に見たライブがKREVAくんなんです――そこで「ああいうふうになりたい」と思った人を、30年近く経って招待するステージを用意できたり。一人一人のアーティストへの思い入れも大きいし、愛のあるライブを、愛のやりとりができるステージが〈Double Up〉だなと思ってます。

Shen 〈Double Up〉のライブでは、何らかの形で一緒に歌うコラボレーションをやってるんだけど、お客さんは何の曲をやるかわかんないし、スペシャルさが生まれてくるのがいちばん楽しい。それと、他のアーティストのパフォーマンスを見るのも勉強になる。どの職業でも、どんなことをやってても、そこなんじゃないですか。人生って常に勉強してる。

Micro 〈Double Up〉の時だけは、僕らも相手のライブをちゃんと見てる。フェスだとあんまり人のライブが見れなくて、みんな自分のことだけやったら帰っちゃうし、一緒に遊べないことが多いから。でも〈Double Up〉は全部見てるし、すごい吸収できてます。

――今年のメンツは、KT Zepp YokohamaにCrystal Kay、Zepp NagoyaにMINMI、Zepp Osaka BaysideにC&K、Zepp HanedaにHY。彼ら4組とは元々、仲いいんですよね。

Micro そうですね。Crystal Kayは10代から知ってるし、今は飲み仲間。元々インターナショナルスクールの繋がり。Shenは東京の学校に行っていて、彼女は横浜に行っていて。Shenの先輩にはVERBAL(m-flo)くんがいたし、同い年には宇多田ヒカルがいた。インターの繋がりってすごいなって思いますね。今回一緒にできるのが楽しみです。

Shen MINMIさんは、MOTHER EARTH(母なる大地)だね。ミュージシャンシップもそうだし、すごくオープンで、人生に関してとか、モチベーションに関してとか哲学的に考えてるし、すごく温かい人。

Micro C&Kは、彼らが売れる前から一緒のイベント出てることが多かった。お互い2人組同士だから、あんまり絡みはなかったけど、「次世代のDef Techだな」ってずっと思ってたんで。キャラもいいし性格もいいし、僕らをすごい慕ってきてくれてて、僕らのファンの人たちもC&Kをちゃんと聴いてくれたらいいなって思います。

Shen HYは、ヒデ(新里英之)さんが「何かやろうよ」っていつも言ってくれてたんですよ。去年、MONKEY MAJIKの〈enigma music fes 2024〉で一緒になって、終わってから打ち上げで話したけど、俺らが考えてることといい意味でベクトルが違うというか、やっぱり沖縄出身の人はちょっと見方が違うんだけど、ハートがすごい伝わってきた。そして彼らも飲むのが大好き(笑)。

――共演ステージ、楽しみにしてます。

Shen 俺らはいつもオープンハーツで話したいし、ヴァイブスを交換したいし、コラボとかは仕事の話だけど、とりあえず人として触れ合いたい。僕たちにとってはたぶんそこなんじゃないかな。〈Double Up〉って出会える場所。もちろんエンターテインメントはあるけど、やりたいことやってるからね。

Micro 頑張ります。ダブルアップってもともとサーフィン用語でもあって、2つの波が重なって共に盛り上がることなんです。今回は3回目の〈Double Up〉だから、波がすごい高くなりますよ。

――最後に、4月13日にトリでの出演が決定した〈GO OUT JAMBOREE 2025〉。意気込みをぜひ。

Micro 〈GO OUT JAMBOREE 2025〉はずっと出たかったんですよ。だけど、さっきも言ったみたいに、Def Techは海のイメージが強いし、キャンプのイメージはないかもと思っていて。。

Shen でも 1年前ぐらいから、ちょっとモード変えようかなと思って。ソロで山のフェスに出たりしてたけど。

Micro Shenはどんどん山のほうに行ってたよね。

Shen 山男になろうと(笑)。ヒゲとグラサンで。

Micro 今年の〈GO OUT JAMBOREE 2025〉には、Def Techが、山に海の神を連れて行きますよ。海のフリークエンシー=周波数を持っていけば、きっと風も雨も天気も味方につけれるので、山の神々と〈GO OUT〉したいです。僕らは今、基本の440Hz(ラ/Aの音)から、432Hz(“ソルフェジオ周波数”の一つ。癒し効果が高いとされる)へとチューニングを変えてみようと思ってるんですよ。川のせせらぎに近いフリークエンシーに落としてみているんです。

Shen 自然に合わせて。

Micro 俺たちと、ポジティブな周波数を合わせようってこと。人間のレベルということじゃなくて、周波数が下の人は引き上げて、上の人は下げて合わせてみようって。

Shen 〈海のフリークエンシーを山に持っていく〉というイメージは完璧だね。トラディショナル・ハワイアンの生活は、朝に山へ行って、水を汲んだり、果物やキノコや葉っぱを取ってきたりして、それから海に行って魚を釣って、ご飯を食べるのが毎日のバイオリズムだったらしい。海と山、マイナスイオンとプラスイオンで、人間的にすごくそのバイオリズムが合ってると思う。だからこそ、今までずっと海に行ってきたから、次に山のほうに行くのは間違いない。

――〈GO OUT JAMBOREE〉ではステージの背景に富士山が見えるんですよ。

Shen 〈GO OUT JAMBOREE〉のライブは、富士山への感謝も込めたいね。富士山は素晴らしい。

Micro 俺は登ったことないけど、Shenは登ったことがあるんだよね。

Shen 僕が16歳の時に、お父さんがミッドライフ・クライシスになって。お父さんが50歳で、突然「富士山に登りたい」って言い出して、登ったことのある日本人の友達と一緒に行こうよとか言うから、「えー、行きたくねぇ」と思ったんだけど(笑)。でも、やってよかった。富士山の上から見た日本の景色が忘れられない。山のエネルギーもすごかったし、火山だから、地球のコアを通してハワイとも繋がってる感じがしたし。だから〈GO OUT JAMBOREE 2025〉、すごい楽しみにしてます。すごく心深く楽しんで、俺らしかできない周波数をそこで出して、富士山にも聴かせてあげたいです。

GO OUT JAMBOREE 2024の画像 Photo by Hikaru Funyu


Def Tech
ハワイ育ちのShen、東京出身のMicroによるユニット。“My Way”を含むファーストアルバム『Def Tech』は2005年に発売し280万枚超のセールス。インディーズのセールス記録を塗り替えた。2020年には結成20周年、デビュー15周年を迎え、11月にYouTube『THE FIRST TAKE』に「My Way」で初出演し、視聴回数は5,000万回を突破現在も更新中。昨年、日比谷野外音楽堂での野外ライブ、全国ホールツアーを敢行した。2025年はデビュー20周年を迎え、リリースやツアーなど勢力的に活動を行う。
Def Tech オフィシャルサイト

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情報提供元: GO OUT
記事名:「 Def Techは今が一番。結成25周年の二人が語る、苦労話と2度のブレイク、〈GO OUT JAMBOREE〉への意気込み「山に海の神を連れて行きます」【GO OUT MUSIC FILE vol.2】