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2020年に待望の復活を果たすことが、通なキャンパーの間で大いに話題となっている伝説のテントブランド「MOSS TENTS(モス テンツ)」。
復活するテントやタープは、実は今年の春開催予定だった『TOKYO OUTDOOR WEEKEND 2020』でお披露目されるはずだったが、あえなく延期に。そして、ついに11月9日、ザ・リッツ・カールトン日光でお披露目された。
画家でもあり彫刻家でもあるビル・モス氏が設立したモス テンツは、1955年に世界初のドーム型テントをリリース。
「テントは人間が住むことのできる芸術作品」というビル・モスの名言のとおり、数々のデザイン賞を受賞する名テントを次々と生み出し、なかにはMoMA(二ューヨーク近代美術館)に永久展示されている名品もあるほど。
ビル・モスが作り上げた数々のテントは、他に類を見ないシルエット・曲線美で、今でも色褪せることのないテントとして人気を集めているが、残念ながらモスのテント部門は2001年に買収されてしまったので、現在では当時のテントはかなり貴重で入手困難となり復活が望まれていた。
そんな中、今回、ビル・モスの代表作ともいえる渾身のテント「Optimum(オプティマム)」と、タープ「PENTAWING(ペンタウイング)」、「PARAWING(パラウイング)」が復刻することが決まったのだ。
今回モス テンツの復刻を手掛けたモスジャパン社の代表:藤澤孝光さんは「ビル・モスのアートとしてのものづくりの素晴らしさにほれ込んだ」そうで、藤澤さんが最初の復刻モデルに選んだテントが、1978年に発表されたコットンテント「オプティマム」。
遊牧民ゲルやモスリン神殿を連想させる優美な曲線で構成される躯体は、ビル・モスが演出する曲線構造を代表する傑作で、数々のデザイン大賞に輝き40年余を経た現代でも唯一無二の存在感を放つテントだ。
「復刻するにあたっては、ビル・モスの遺志を継ぎ、彼が考えたものを忠実に再現することにこだわりました」と語る通り、まずはオプティマムで使われていたコットン生地を再現するところからスタート。福井県の工場で一から生地を作り、当時の生地の張り感を出すために何度も作りなおしたという。
さらに、世界に一つしか現存しないと言われるオプティマム350を入手し、アメリカから送られてきた当時のパターン(型紙)も駆使して、試行錯誤を繰り返しながら忠実に再現したという。
そして、ついに完成したのが、今回お披露目された、オプティマム200とオプティマム350だ。
MOSS TENTS「Optimum 200」
オプティマム200は、広さが200スクエアフィート(約18.5㎡)で、床の形状はY字型。
センターポールで立ち上げてU字フレームで支える構造で、テントの中で大人が余裕で立てるくらい居住性が高い。出入口は1か所だが、ほか2か所にメッシュ付きの大きな窓を備えている。
インナー、フライともにコットン素材。遮光性に優れているので夏は涼しく、インナーとフライの間に空気の層ができるので冬は暖かい。
また、雨の多い日本の気候に対応するためにグランドシートを立ち上がりのある「バスタブ型」に改善するなど工夫も重ねたという。
MOSS TENTS「Optimum 350」
オプティマム350は広さが350スクエアフィート(約32.5㎡)で、床の形状は十字型。
抜群の居住性で、出入口は前後に2か所ある。
こちらはフライが未完成のためインナーのみの展示となっていた。
取材した日はかなりの強風が吹いていたが、特徴的な曲線フォルムがしっかり風を受け流していたのが印象的だった。
このオプティマム350とオプティマム200は、残念ながら一般発売はされず、企業向けの受注生産となる予定。すでに数社から問い合わせがあったそうで、キャンプ場やグランピングフィールドでオプティマムに泊まれる日も近いかもしれない。
MOSS TENTS「19′Pentawing」
タープで復刻されるのは2モデル。まずは、優美な曲線を描く五角形タープ「ペンタウイング」。しっかりした厚みとしなやかさを兼ね備える9 ozの撥水性コットンダック生地を採用。涼しげな生成りのカラーリングで、コットン素材ならではの優しい採光も魅力だ。
すでに先行モデルとして、GO OUT Onlineにて「12′PENTAWING」が発売となっているが、今回、一回り大きい「19′PENTAWING」がお披露目された。今後は、ソロやデュオ向けの12フィートと合わせて、ファミリーやグループに対応できる19フィートの2サイズ展開になるという。
MOSS TENTS「19’ Parawing」
復刻となるもう一つのタープが、モスを代表する美しいウイング型の四角形タープ「パラウイング」。もともとのパラウイングはナイロン生地のタープだったが、今回お披露目されたモデルは、コットン生地を使用。サイズは19フィート。
このコットン素材の19フィートのほか、コットンの12フィート、さらに、ナイロン素材の12フィートと19フィートの4モデルでの展開になる予定だ。
また、価格は未発表となっている。
今回復刻されるテントやタープのほかにも、ビル・モスが生み出した名作は数多く存在する。モスジャパンの藤澤さんには、まだまだ復刻させたいテントがあるはずだ。そこで、モス テンツの今後の展開について、藤澤さんに伺った。
「まずは象徴的なコットンテントを復刻させましたが、今後はナイロン生地を使ったバックパッキングテントも復刻していく予定です」
「大人4人がラクに過ごせる大型ファミリーテント『Encore(アンコール)』と、クローバーをモチーフにしたテント『Trillium(トリリウム)』を復刻する予定なので楽しみにしていてください」
アンコールとトリリウムではフォルムやカラーは当時のモデルを忠実に再現しながらも、生地には最新技術を使ったナイロンが採用される予定。すでにサンプルは出来上がっていて、来春の一般発売を目指して準備しているという。
いよいよ動き出したモス テンツ、今後の展開も楽しみだ。
Report &Text/Shinya Miura
(問)モスジャパン http://mosstents.net/