- 週間ランキング
数日後に迫った「GO OUT CAMP冬2019」もチケットがSOLD OUTするほど冬キャンプは人気となっています。寒さも楽しい冬キャンプですが、その寒さゆえ、テント内でストーブなどの暖房器具を使用する方も多いと思いますが、これ、非常に危険なことなんです!
今回は、薪ストーブを専門に取り扱うアウトドアショップ「iLbf(イルビフ)」のオーナー堀之内さんに、冬キャンプで暖を取る際の注意事項について詳しくお話を聞いてきました。
「室内全体を効率よく温められるのが薪ストーブの特徴です。燃焼室で発生した一酸化炭素は、煙突を伝って外に逃げる構造なので、冬キャンプでは薪ストーブが一番オススメ。ただし、煙突の手入れが不十分だったり、設置方法を誤ると煙が逆流したり、煙突の熱でテントが発火したりする恐れもあります」(イルビフ堀之内さん/以下コメント同)
「もっとも注意すべきは一酸化炭素中毒。煙突がススで詰まってしまうと、気づかないうちにテント内に一酸化炭素が充満していることがあります。設営する前に、煙突の先端までつまりがないように掃除し、1泊以上使う場合には必ず毎日煙突掃除を行ってください。
また煙突の高さが正しく確保されていない、上昇気流が発生せず、テント内に煙が逆流してしまうことがあります。L字型の煙突を使う場合、横に伸びた部分の長さより、縦に伸びる高さを2倍以上確保するようにしましょう」。
「もう1つ注意すべきが、火事。薪ストーブはそのもの自体が非常に高温になりますので、煙突をテント外に出す際に、テントの布地と近すぎたりくっついたりしていると発火します。また接触防止の設備に不備があると、同様にそこから発火することがあります」。
「薪ストーブの使用中、燃焼室や煙突は非常に高温になります。間違えて触らないよう、お子さんがいる場合はストーブガードなどを使って近づけないようにしてください。また、本体から出る輻射熱によりストーブ下の芝生が燃えることがあります。地面にアルミホイルや不燃性の板を敷いたり本体の高さを調整するなどの工夫が必要です」。
☑ 必ず一酸化炭素チェッカーを使用空間内に設置する。
☑ 1時間置きに室内に新鮮な空気を取り込む、吸気を行う。
☑ 燃焼中は常に吸気のための煙突の穴と同等の隙間を開けておく
☑ 薪ストーブが使用可能なモデルのテントを選ぶ。
☑ 2L以上の水を常備しておく。
☑ 薪ストーブの周辺にはなるべく何も置かない。
☑ L字型の煙突を使う場合、煙突の高さは横に伸びた部分の長さより2倍の長さを確保し、正しく設置する。
☑ 使用前には必ず煙突掃除を行う。
☑ 2泊以上使う場合には、翌朝必ず煙突掃除をする。
☑ ストーブガードなどを用いて、ストーブ周辺に触らないよう注意する。
☑ 輻射熱により芝生が燃えないよう、地面にアルミホイルや不燃性の板を敷いたり本体の高さを調整する。
「一酸化炭素は空気とほぼ同等の重さのため、テント内の一箇所留まることなく、まんべんなく充満します。一酸化炭素警報機は、例えば寝室のような、自身が一番長くとどまる場所に置くのがおすすめ。多くの一酸化炭素警報機に使われているセンサーには寿命がありますので、古すぎるものを使用していないか、チェックが必要です。
また、強風などで煙突が外れてしまうと、落下の際にテントへの引火、また火傷の可能性があるだけでなく、煙がサイト内に逆流・充満する可能性があります。強風時はなるべく薪ストーブの使用を控えましょう」
冬キャンプのテントサイトと言えば、大型シェルターに石油ストーブを持ち込むスタイルが一般的になってきましたが、密閉された空間での暖房器具の使用は、事故に繋がる危険がたくさんあります。
薪ストーブ同様に、もっとも懸念される事故は、空気の入れ替えが不十分なことによる一酸化炭素中毒。場合によっては生死に関わる事態に繋がることも……。
「石油、ガス、薪、炭など、あらゆる燃料を燃やす際に発災するのが一酸化炭素。一酸化炭素は無味無臭のため気づきにくく、さらにお酒を飲んでいる場合は、初期症状である頭痛やめまい、ボーッとするような酩酊感をアルコールのせいだと勘違いしてしまうことが多いのです」。
「一酸化炭素中毒に加えて注意が必要なのが、火事です。もしテントにストーブの火が引火してしまった場合、素材の性質上、火は瞬時に広がってしまいます。キャンプでは強風でテントが揺れることもあります。どんなにテントから離した場所にストーブを置いても、絶対に安全ということはありません」
☑ 必ず一酸化炭素チェッカーを使用空間内に設置する。
☑ 1時間おきに必ず換気をする。
☑ 就寝時は必ず暖房器具を消す。
☑ ベンチレーションなど換気口を確保できるテントを使用する。
☑ 2L以上の水は常備しておく。
☑ ストーブの周辺にはなるべく何も置かない。
「テントの出入口やベンチレーションを開けているからといって、室内の空気が流れているとは限りません。換気を行う際は、出入り口のジップを大きく開けて、テントを叩いて空気を振動させて行うのがオススメです。
テントそれぞれで構造が異なるため、空気の流れも異なります。テントに付属する説明書をしっかり読みましょう。やはり冬キャンプで使うテントは、暖房器具が使用可能なモデルを購入することがベストです。ワンポールテントのトップにベンチレーションが付くモデルは、空気が上に流れる構造になっていたり、熱に強い素材を使っていたりするため安心です」。
キャンプの醍醐味のひとつである焚き火だが、暖房代わりに使うのは不向きと話す堀之内さん。
「焚き火や炭火は一酸化炭素の濃度が濃いため、室内で使用するのは非常に危険。テントから離れた場所で、周囲のテントサイトに注意しながら、外で楽しんでください」。
「焚き火をする際に一番気をつけることは、火の粉が飛散し、テントやタープに引火して起こる火事です。そのため、火の粉が出ない薪の燃やし方は、ぜひ覚えてもらいたいですね。水分を含んだ薪は燃やすと火の粉が弾けて危険なので、しっかり乾いたものを使いましょう。
また、段ボールや新聞紙を燃やすことも、火の粉が飛散する理由のひとつ。着火時以外は使わないのが一番です。さらに、必要以上に薪を触らないことも火の粉飛散防止には大事です」。
薪ストーブの取り扱いだけでなく、堀之内さんは冬キャンプの達人でもある。最後に寒い時期のキャンプを楽しむための心得も教えてくれました。
「そもそも、テント内での暖房器具や火器の使用は厳禁ですし、メーカーも推奨していません。また冬のキャンプ場は本来、人が過ごすことができない環境の中です。そのため、暖房ギアがなくても過ごせる防寒着はしっかり用意しましょう。カイロはいざという時に使えるので1箱あってもいいほどです」。
また、防寒以外にも意外な落とし穴があるとか。
「室内を暖めすぎてTシャツで過ごせるほどの室温にすると、トイレなどで外に出た際に温度差により心筋梗塞や脳卒中などの発作を起こす原因に。いきなり外に出ず、一呼吸置いてからテント外に出るようにしてください。また、室内は長袖を着た状態で快適な温度に保つ、ということも大事です」。
寒さだけでなく、ギアの使用にも細心の注意が必要になる冬キャンプ。GO OUT CAMP冬2019の本部では一酸化炭素チェッカーを貸し出ししているので(※数量に限りあり)、持っていない人は必ず借りてください。
また、防寒対策が不十分なまま我慢するのは非常に危険。車のエンジンをかけたままで暖房をかけてやり過ごす人もいますが、騒音で周りに迷惑を掛けるだけでなく、車内にアイドリングによる一酸化炭素がたまることもあり大変危険です。寒いときは我慢せず避難しましょう。
イベント時の夜間は、ふもとっぱらの食堂を薪ストーブをつけて休憩所として開放しているので、少しでも不安な人、眠ろうとしたけど寒くて眠れない人は食堂で寝てください(寝具などはありません)。
冬キャンプ自体が初というキャンパーさんはもちろん、寒い時期のキャンプに慣れている人も改めて注意点を再確認し、楽しくイベントを満喫しましょう!
【取材協力】
「iLbf(イルビフ)」オーナー 堀之内 健一朗さん
焚き火や薪ストーブを専門に扱う、日本で唯一のアウトドアセレクトショップ「イルビフ」のオーナー。