高速バスもQRコードで乗車！その先には何がある？
二次元コードの代名詞となった「QRコード」。URLやメールアドレスなどの情報を格納したり、キャッシュレス決済に使ったりする仕組みとして利用されがちですが、その用途はさらに広がりつつあります。そこで今回、QRコードの新たな使い方の1つとして、高速バスの乗車チケットに用いる活用例をレポートします。
受付から乗車までの時間が短縮。ストレスも軽減
東京や大阪、名古屋、福岡、仙台などの主要都市を結ぶ高速バス。新幹線を利用するより安価な路線は多く、交通費を抑えたい人の移動手段として今なお根強い人気を誇ります。しかし、高速バスを頻繁に利用しない人にとって、乗車チケットの予約方法や乗車時のルールはよく分からないのが実状です。高速バスを運行する事業者ごとにチケットの予約方法は異なるし、乗車時に印刷したチケットが必要なのか、それともスマートフォンの予約画面を示すだけで済むのかも違います。
とりわけ夜行バスは、乗車時の確認に手間がかかりがちです。夜行バスでは乗車時に予約確認書を提示するのが一般的です。もしくは、事前予約した搭乗者の名前を係員に伝えるケースもあります。しかし夜行バスの場合、係員は暗い場所で乗客名簿を確認しなければなりません。数十人分の名簿の中から搭乗者の名前を探し出すのは面倒で、この確認作業に時間を要することで発車が遅れるなんてことも珍しくありません。
そこで、こうした手間を解消する手段としてQRコードの活用が進みつつあります。高速バス事業を展開するWILLER EXPRESSは2024年2月27日、QRコードを使って乗車できるサービスを開始。利用者がスムーズに乗車できる仕組みづくりに乗り出しました。
WILLER EXPRESSのQRコードを使った乗車サービスの利用方法は簡単。利用者にはバス出発時刻の2時間前にメールが届きます。メール本文にあるリンクをタップすると、QRコードが表示されます。これを乗車するとき、乗務員が携行するタブレットにかざせば受付は終了。そのままバスに乗り込むことができます。
係員による乗車時の名前確認は不要で、バスに乗り込むまでに要する時間は15秒程度。QRコードをスマートフォンに事前に表示しておいたり、タブレットの画面とスマートフォンの画面を合わせたりする煩わしさはあるものの、バス利用者の手間は圧倒的に解消されることになります。
高速バスを運行する事業者にとっても、QRコード導入により受付時間の短縮を見込め、定時運行や乗務員の作業負荷軽減も期待できるようになります。
さらに近年は訪日観光客が増加し、外国語でのコミュニケーションや外国語名の確認を求められる機会も増えています。こうしたケースでQRコードを使えば、搭乗者を容易に確認できるようになります。訪日観光客も安心して高速バスを利用できるようになるでしょう。
なお、WILLER EXPRESSのQRコードを使った乗車サービスは、2023年7月に一部路線で先行導入し、テスト結果をもとに改善。その上で今回、全国展開に踏み切りました。WILLER EXPRESSによると、「QRコード乗車サービスを先行導入した路線では、乗客の70％がQRコードを利用している。今後も利用する割合はさらに高まると見込んでいる」と、導入効果が如実に表れているといいます。
QRコード導入を足掛かりにデジタル化に着手
WILLER EXPRESSはQRコードのさらなる活用も見据えます。「QRコードは高速バスの乗車確認作業を効率化するための手段にとどまらない。利用者はもとより、乗務員などのスタッフの作業負荷を軽減する施策での活用も視野に入れる。顧客や乗務員の声をもとにサービスの改善を積極的に図っていく」と、同社のシステム担当である須崎氏は口にします。
さらに、安全な運行体制を構築するための手段として、最新のテクノロジーを徹底活用する姿勢も示します。これにより、「競合他社の高速バスと差異化を図れるようにする。安全性をより打ち出すことで、当社の高速バス事業のブランドを高めていく」（須崎氏）と意気込みます。なお、同社は今後、乗務員が携行するタブレットの機能を拡充し、定時運行を支援したり運転経路をナビゲートしたりできるようにする考えです。
QRコードの活用を機に、新たなテクノロジーを積極的に活用する方針へ舵を切りつつあるWILLER EXPRESS。物流業界や旅客輸送業界が直面する「2024年問題」を乗り切る手段としてデジタルを前提とした事業を確立し、競合他社の追随を許さない境地へと踏み出す構えです。
関連リンク
WILLER EXPRESS株式会社
https://willerexpress.co.jp/