山梨県で収穫されたホップが、24時間以内にビールへと姿を変える。初物には目がない、という人も多いはずだ。実はこのホップ、かつて20年もの間、誰にも使われることのなかった存在だった。なぜ今、再び日の目を見ることになったのか。





“初物”ビールが、8月26日に登場





神奈川県厚木市のクラフトビールメーカー、サンクトガーレン有限会社は、収穫したての国産ホップを使った限定ビール「FRESH HOP IPA」を8月26日に発売する。





使用するのは山梨県北杜市で収穫された「かいこがね」――農林水産省に品種登録された、国産ホップ第1号だ。









収穫24時間以内、香りが消える前に





かいこがねホップは、山梨県北杜市で収穫された直後に神奈川の工場へ持ち帰られ、収穫から24時間以内に仕込みが始まる。





通常のビールに使われるホップは長期保存のため乾燥処理されるが、その工程で香り成分の一部が失われてしまう。乾燥させない摘みたてホップだからこそ出せる、フローラルな柑橘の香りとキリッとした苦味。それが「FRESH HOP IPA」の持ち味だ。





ホップの収穫風景。




20年、誰にも使われなかったホップ





かいこがねは昭和初期、山梨県北杜市で800軒もの農家が栽培していた品種だった。しかし1993年、輸入ホップへの切り替えとともに大手メーカーとの栽培契約が終了。多くの農家が栽培をやめる中、1軒の農家だけが「種を絶やしたくない」と畑の片隅で作り続けた。





その農家が、浅川定良さんだ。「契約終了から20年、誰も使ってくれなかった」と振り返る浅川さんのホップが再びビールになったのは2012年。サンクトガーレンが話を聞き、毎年収穫を手伝いながら全量を買い取るようになった。





ホップ農家の浅川さん(左)とサンクトガーレン岩本(右) ※過去の収穫時に撮影。




グラスに注ぐ、その年一度だけの香り





摘みたてのホップは花なので、収穫後すぐに枯れてしまう。だからこそ「FRESH HOP IPA」は、醸造所とホップ畑の距離が近く、収穫の時期が限られたこの一瞬にしか作れないビールだ。





「初物」と聞くと少し大げさに感じるかもしれないが、実際にグラスに注いでみると、その年だけの香りがはっきりと立ち上る。浅川さんが守り続けた品種が、今年もまた一本のビールとして届く。


情報提供元: DXマガジン_ライフ
記事名:「 20年間誰も使わなかった幻のホップが、ビールになって復活