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一昨年の『麒麟がくる』以来、NHKの大河ドラマが毎週毎週待ち遠しくてたまらない。
去年の『青天を衝け』もそこそこ楽しめたが、今年の『鎌倉殿の13人』は『麒麟がくる』に匹敵……いや! 下手すりゃ、もっと面白い。毎回、極力リアルタイムで視聴するように心がけ、その後1〜2回は必ず録画したものを再チェックしている。
脚本を務めるのは、あの三谷幸喜氏。ギャグとシリアスのバランスをギリギリの高い次元でキープすることに多大な機能を果たしている、適度に時代考証を無視した現代口語をミックスした台詞まわし(※「十三人」をあえて「13人」と算用数字に表記したような)、45分間息をつかせる間もない……けど飽きも疲れも感じさせない絶妙なテンポ感、歴史上に刻まれた数々の有名人物を、史実を100%捻じ曲げない範囲内で奔放にキャラ付けする大胆な解釈──私は正直申して、これまで(※『古畑任三郎シリーズ』も含めて)三谷作品は苦手なほうだったんだが、あらためて! このヒトの底知れぬ才能には完全脱帽せざるを得ない。お見それしましたm(__)m! 三谷さん、スゴすぎですっ!!
キャスティングも、最強にアクが強くて魅力的な役者さんたちが勢揃い!
・毅然とした態度で一度は主役・義時のプロポーズを「お断りします! 」と突っぱね、その直後、壮大なオーケストレーションのBGMをバックに、そのままオープニングへと流入していった「八重」役の新垣結衣
・その義時に「男女の仲なってものはなあ、フラれてからが勝負なんだ」とドヤ顔でアドバイスする「三浦義村」役の山本耕史(※←現妻である堀北真希とのなれそめをまんまなぞった名言)
・とことん悪役なのに、その愛されキャラでどこか憎み切れない「源頼朝」役の大泉洋
・鎌倉時代の御台所という役柄が外見的にもむっちゃハマりまくっている、慈愛に満ちた「北条政子」役の小池栄子
・サイコパス的性格という、これまでにない設定を斬新に演じ切っている「源義経」役の菅田将暉
・謎の刺客(※←歴史上では実在しない人物)として不気味な空気を漂わせる「善児」役の梶原善
・謀反の濡れ衣を着せられ、壮絶な死を遂げた「上総広常」役の佐藤浩市
・結局は誰の味方なのかが読めない、おっかない顔で「コウモリ」的スタンスを綱渡りする「梶原景時」役の中村獅童
・「無能なお坊ちゃん愚将」とのイメージが強い最後の平家の棟梁に気品と哀愁を加えた「平宗盛」役の小泉孝太郎
・「京から来たちょっと底意地が悪いお嬢様」としてチャーミングかつ妖艶なオーラを放つ「りく」役の宮沢りえ
・無骨な髭ヅラとは裏腹な可愛さが好評な「和田義盛」役の横田栄司
・食えないタヌキっぷりが忌々しい、ベテランならではの安定感抜群な演技力が光る「後白河法皇」役の西田敏行
・お笑い界から大抜擢され、その熱演・怪演によって新境地を見いだした「仁田忠常」役の高岸宏行(ティモンディ)と「九条兼実」役の田中直樹(ココリコ)
・後白河法皇が仮病を演じる際、脇に鞠を挟んで脈を止めていたことを明かしたとき、すかさず「まねをしてはいけない」とコンプラ配慮の一言を抑揚なく挟んだ「ナレーション」役の長澤まさみ
……ほか、一回の放送が終わるたび “新しいスター”が生まれ、ネット上を賑わせている。
だがしかし! 今回の『鎌倉殿の13人』で、その錚々たる名優たちにも劣らぬ素晴らしい演技を魅せてくれているのが、主演「北条義時」役の小栗旬なのではなかろうか。
『麒麟がくる』の主演である「明智光秀」役を務めた長谷川博己もそうだったが、たとえば(ストーリーとして)脇役に回ったときの控えめな演技など……役者としての存在感を自在に操る繊細な匙加減が、じつに見事……だと、私は思う。本来は野心に乏しい影の薄い男が、時代に翻弄されながら柳のごとくゆらりゆらり上へと登りつめていく的な「飄々とした出世譚」のほうが今の時代はウケるのかもしれない。
あと、あまりネット住民のあいだではフィーチャーされていないものの、義時と政子の妹である「実衣」役を務める宮澤エマも、地味ながらなかなかにイイ味を出している……と、私は評価したい。粛清に次ぐ粛清といった物騒な展開の連続のなかで、彼女のおっとりかつなんとなく天然チックなとぼけた演技は、お約束のような弛緩タイムとして、毎度欠かせない “箸休め”となっている。三谷脚本のコミカル部門を担当する隠れキーマンの一人だとさえ私は激推ししているのだが、いかがだろう?