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『文春オンライン』が、「美容室で美容師さんとおしゃべりしなければならないのがしんどい」と薄々かつ常々から悩んでいるヒトたちのために、美容師目線からアドバイスをする……みたいな趣旨の記事を配信していた。
文春と言えば「文春砲」なる代名詞的ワードで広く知られ、かつては新語・流行語大賞にベスト10入りしてしまうくらいまでにスキャンダル系の時事ネタにめっぽう強い印象があるが、こうしたタイムリー性は低い“あるあるネタ”でも、念入りに取材して、しっかりしたモノを書いているんだなぁ……と、いささか上から目線で恐縮ではあるけれど(笑)、あらためて感心した。で、今回のその「しっかりした記事」の内容であるが、とりあえずは、美容師さん側の言い分を聞いてみよう。
美容師は、よりよいヘアスタイルを作るために、お客様のシチュエーションに配慮したい、という思考が働いています。例えばお堅い仕事なのか、カジュアルなファッションでも許されるライフスタイルなのか。TPOに合わせて、ヘアスタイルの幅は大きく変わります。ですが、初対面でいきなり「職種」や「プライベート」などの話をするのも不躾なので、他愛もない雑談から情報を引き出そうとしています。
美容師にとっての商品は、カットしたヘアスタイルだけではありません。お客様が滞在した時間もまた商品であり、(中略)例えば、「旅行先の美味しいお店」や「スポーツの最新情報」など、お客様が得する情報を教えてあげれたらいいし、「同郷の話」や「共通の趣味」などによって、お客様との共通点
を見出したいと思っています。
なるほど……。そんなようなことを考えて、美容師さんたちは矢継ぎ早に話しかけてくるのか……と理解した。いったん店内で「客とスタイリストの関係」が成立してしまったら、飲食やアパレルの接客よりも対面する時間は圧倒的に長く、しかも1対1の“ガチンコ”ゆえ、技術だけじゃなくトークも磨かなきゃいない美容師さんのお仕事って大変だなぁ……とも思った。
とは言え、「二人だけの空間で美容師さんとおしゃべり“しなければならない”あの気まずさが苦手」なヒトもけっこう多いみたいで、私もどちらかと申せば得意ではなかったりする。そして、その手のタイプのヒトたちに、本記事の取材を受けた美容師さんが提案する克服術(回避術?)は、かいつまむと以下のとおりである。
・初回に根掘り葉掘り聞いてこなかった美容師さんを次回も指名する
・雑談ではなく、本題である「髪」について質問する
・「話しかけないでオーラ」を出したり、スマホや読書に熱中するのではなく、「美容室は苦手でして」「本を読んでもいいですか?」と一声かける(髪をいじる際に必要なやりとりも恐る恐る話しかけねばならないことにつながるから)
ん〜……どれもこれも正直なところ、抜本的な解決策には程遠い気もしなくはないが、一つこの美容師さんが、すごく納得できるコメントをなされていた。
お客様が美容室を訪れるのは大体1〜3ヶ月に一度、毎回1〜2時間ほど滞在することになります。これだけの時間は、例えば仲の良い友達にもなかなか用意できないことが多く、必然的に美容師は「頻繁に会っている人」になります。
つまり、「美容師さん選び」は「友だちや恋人探し」に似ている部分が多く、だとしたら“苦手”と感じてしまうならば、その対象は“美容室”ではなく“美容師さんのパーソナル”ってことになるわけだ。そして「ほとんど会話がなくても一緒にいるだけで心地良い友人、もしくは恋人」っていうのも確実に存在するわけで、美容室とは極論「髪をきっかけとする出会いの場」であることを、我々ユーザーサイドも、ある程度は自覚せざるを得ないのかもしれない。それがイヤなら、もう10分でカットを済ましてくれるスピード床屋にでも通うしかない。アソコだと理容師さんも会話しているヒマなんてないから、滅多にしゃべりかけてもきませんしね……?