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※このコラムはネタバレを含んでいます。
■アムロとシャアが舌戦を交わした『逆シャア』
アムロ・レイとシャア・アズナブルの戦いが描かれた初代『機動戦士ガンダム』。初代『機動戦士ガンダム』は宇宙世紀0079年を舞台としており、その後の宇宙世紀0093年を描いたのが、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(以下、『逆シャア』)でした。
主人公であるアムロと、その運命の宿敵であるシャアの最終決戦が描かれた『逆シャア』では、シャアはネオ・ジオン再興を宣言し、腐敗した人類を地球から締め出すために「地球寒冷化作戦」を敢行するのです。「地球寒冷化作戦」とは、2つの小惑星を地球に落とし、地球を一度人間が住めない環境にしようという非情極まりない作戦。
地球に住む何十億人の命を奪うという大きな業を背負うことを覚悟のうえで、シャアは地球環境を最優先に考えたのでしょう……。
さて、そんな『逆シャア』では、アムロとシャアがお互いの感情を剥き出しに、主義主張をぶつけ合うシーンがあるのです。
――とあるコロニーで偶然鉢合わせになったアムロとシャアは、お互い馬乗りの殴り合いにまで発展しながら、こんな舌戦を繰り広げました。
アムロ「俺たちと一緒に戦った男が、なんで地球潰しを!?」
シャア「地球に残っている連中は地球を汚染しているだけの、重力に魂を縛られている人々だ!」
シャア「地球は人間のエゴ全部を飲み込めやしない!」
アムロ「人間の知恵はそんなもんだって乗り越えられる!」
シャア「ならば、今すぐ愚民ども全てに英知を授けて見せろ!」
アムロ「貴様をやってから、そうさせてもらう!」
■やっぱりアムロはシャアに論破されていた…
――また最終局面にて、νガンダムに乗り小惑星の落下を防ごうとするアムロに対して、シャアはこうも主張していました。
シャア「けっきょく、遅かれ早かれこんな悲しみだけが広がって、地球を押し潰すのだ。ならば人類は自分の手で自分を裁いて、自然に対し、地球に対して、贖罪しなければならん。アムロ、なんでこれがわからん」
シャア「そうか。しかし、この暖かさを持った人間が地球さえ破壊するんだ。それをわかるんだよ、アムロ!」
アムロ「わかってるよ! だから世界に人の心の光を見せなけりゃならないんだろ!?」
…………お気づきでしょうか?
アムロがシャアに反論する形で発した言葉に、解決に向けての具体案はないのです。
アムロは「貴様をやってから、そうさせてもらう!」と言っていますが、地球に住む人類(愚民)に英知を授ける方法には言及しません。
アムロは「わかってるよ! だから世界に人の心の光を見せなけりゃならないんだろ!?」とは言っていますが、“人の心の光”はとても抽象的な表現ですし、“人の心の光”を見せることでどう地球環境が改善されるかには言及しません。
アムロの主張は正しく聞こえますが、解決に向けての具体案を示していないため、「理想論でしかない」と断罪されてしまえばそれまで。
みなさんのまわりにも、社内の会議で反対はするけれど具体的な解決策(方法論)を示さない、そういう人いませんか? アムロがまさに“そういう人”になってしまっていたわけです。
逆にシャアは地球保全を最優先として、隕石落としで地球に住む人類を抹殺・粛清するという具体策を強行しようとします。シャアの思想・行動には賛否があるでしょうが、反対するだけで解決策を明示できなかったアムロは、論破されたと言っても過言ではないでしょう……。