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ネット版の『ザ・テレビジョン』が、俳優の吉田鋼太郎(61)が某番組で、その昔に舞台を中心として活動していたころ、「俺はテレビなんか出ねぇよ」と突っ張っていたが、そのじつは「テレビの仕事がなかっただけ」だった……という内情を、謙遜を交えながら告白する記事を掲載していた。
インターネットが全盛を誇る近年ではあれ、なんだかんだ言って“メディアの王様”は、今でもテレビである。「頻繁に」であろうが、「ピンポイントなタイミングで効果的に」であろうが、テレビへの露出度が我々視聴者にとって、“そのタレントの売れ具合”を測る一つの目安となっているのは間違いない。
……と、そんなことを考えていたら、ふと、かつて大人気を博した生放送の歌番組『ザ・ベストテン』で、一部のアーティストがベスト10入りしたにもかかわらず「出演拒否」の意志を示し、スタジオに姿を現さなかったケースがいくつかあったのを思い出した。
「出演拒否」の第一号は、中島みゆきだったという。他にも私がパッと頭に浮かんだかぎりの面子を並べてみると、山下達郎・オフコース・チューリップ・南こうせつ・矢沢永吉……といったところの“大御所”がズラリ! あと、小林麻美やEPOもそうだった。
当時、「ニューミュージック」なるジャンルで括られていたアーティストを中心に「テレビ出演を辞退することが反体制的な美学」とされていた時代だったのだろう。たしか、その「出演できない」理由は
・ レコーディング中
・ コンサート中、もしくはリハーサル中
・ ファンと直接向き合えるライブを大切にしたい
・ テレビでは自身を上手く表現できない
……あたりだったと記憶する。ちなみに、ミスチルも『イノセントワールド』で初めてレコード大賞の座を獲得した1994年には、授賞式を「海外でレコーディング」なんて理由をつけ、欠席していましたよね?
そして、前述した豪華絢爛なるアーティストの皆さまも21世紀を迎えたぐらいからは、徐々にテレビへの露出を厳選的に解禁していくようになり、永ちゃんにいたっては、すでに日産やモルツのテレビCMでも顔馴染み状態(※山下達郎だけは相変わらず頑なにテレビ出演を拒否している印象はあるが?)──もはや、テレビは一応「王様」とは呼べども「体制側の象徴」としての体(てい)をなすほどの力は失いつつあり、アーティスト側からすれば「付き合い方次第では利用価値の高いメディアの一つ」、いわば「パパ活で複数の男性と交際する女子大生にとっての、もっともお金を持っているおじさん」的な存在なのかもしれない。
『ザ・ベストテン』に話を戻そう。久米宏とともにMCを務めていた黒柳徹子が、最終回で「このところ、出演しない人が増えて、ランキング番組が成り立たなくなってしまいました…」みたいな発言をなされていたおぼえがあるが、あらためて振り返ってみると、テレビの衰退は1980年代後半から勃発した「出演拒否ブーム」をきっかけとしてはじまり、さらにはこれからもじわじわと静かに進行していくのではなかろうか?