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■「切る」ではなくて「刺す」になったワケ
高級料亭から街の居酒屋まで、和食を扱うお店ならばどこでもメニューとして加えている刺身。魚介類を細かく切って作る料理なのに、なぜ「刺身」というのでしょうか。
島国である日本には、古来より魚を生で食べる文化があったといいます。以前は、魚の身を細かく刻んで、酢で和えていたそうなのですが、室町時代の末期になると、刺身のように大きめに身を切り醤油に浸して口に運ぶという、現在に通じる食べ方が確立していったようです。
当初は「切り身」と呼ばれていたとのこと。ですが、切り身の状態では魚の種類がわからなくなってしまうため、並べた切り身に尾びれを刺して盛りつけていたところから、「刺身」へと呼び方が変化していったという説が有力なのだとか。また、当時は武家社会であり、「切る」という言葉が忌み嫌われていたことから、「刺す」を使うようになったとも言われているそうです。
■「お造り」の語源とは
生魚を切った料理の呼び方には、もうひとつ「お造り」というものもありますよね。この言葉が生まれたのは、関西地方だと言われています。関西では、「切る」と同じく「刺す」も、縁起が悪いとして忌み嫌われる言葉であったため、魚を切ることが「作る」と呼ばれるようになり、そこから、魚の切り身を「お造り」と言うようになったのだとか。
生け簀で泳いでいた魚を、生かしたまま切り身にする「活き造り」の豪勢なイメージからか、現在では、船盛や尾頭つきなど豪華に盛りつけられたものは「お造り」、そうでないものは「刺身」と呼び分けられることも多いそうです。
■菊の花が添えられているのはなぜか
刺身にはよく菊の花が添えられていますが、その理由についても、知らない方が多いのではないでしょうか。
もちろん、彩りを加える飾りという側面もあるのですが、もう一つの大きな理由が、菊の花に含まれている成分に殺菌作用があるため。今のように、流通技術や冷蔵技術が発展する以前には、食中毒などを防ぐ効果が期待されていたようです。
ちなみに、刺身のツマとして乗せられているのは食用菊であるため、食べることができます。ビタミンCやビタミンB、カリウム、カルシウムといった健康によい栄養素が豊富に含まれており、残さず食べてしまった方がいいそうですよ。