6月30日に行われたF1第9戦オーストリアGPで、ホンダのパワーユニット(PU)を搭載するレッドブルが優勝した。ドライバーはマックス・フェルスタッペン。F1で「ホンダ」が優勝するのは、2006年8月のハンガリーGP以来、13年ぶりのことである。ホンダは1964年から始めたF1プロジェクトの各参戦期間で、次のような勝利数を数えている。



 






  • 第1期:1964年〜1968年 2勝

  • 第2期:1983年〜1992年 69勝

  • 第3期:2000年〜2008年 1勝

  • 第4期:2015年〜 2勝





ホンダは2015年にマクラーレンにPUを供給することで、PU時代のF1参戦を始めた。PUとは、エンジンと2種類のエネルギー回生システムを組み合わせたハイブリッドシステムを指す。エンジン(ICE)は1.6L・V6シングルターボ。これに、運動エネルギーと熱エネルギーの回生システムを組み合わせている。運動エネルギー回生システムは制動時に、熱エネルギー回生システムはエンジンの排気から、それぞれモーター/ジェネレーターユニット(MGU-KとMGU-H)を使ってエネルギーを回収し、電気エネルギーに変換する。変換した電気エネルギーはバッテリー(ES)に蓄える。





第3期までの活動と現在のプロジェクトで根本的に異なるのは、エンジンだけの性能を高めればいいわけではないことだ。エンジンとMGU-K、MGU-Hをどう上手に使い、限られたエネルギーを有効にスピードに転換するか。PU時代はエネルギーマネジメントが重要になる。



 





ホンダは2018年にパートナーをトロロッソにスイッチすると、2019年からは、前年に4勝を挙げたレッドブルもパートナーに加え、2チーム4台にPUを供給することになった。新たにパートナーに加わったレッドブルが、ホンダに13年ぶりの勝利をもたらしたのだ。レッドブルは第11戦ドイツGPでも勝利を挙げている。レッドブルと組むまでの最上位は、2018年第2戦バーレーンGPの4位だった。





なぜ、ホンダは急に強くなったのか。9月5日、第14戦イタリアGPのパドックで、F1プロジェクトリーダーの田辺豊治氏に理由を聞いた。



 





──なぜ、ホンダは急に強くなったのですか?



田辺:ホンダ、ホンダといいますが、結局、レッドブル・ホンダです。オフシーズンテストでは、メルセデスやフェラーリと、レッドブルのギャップは大きかったと認識しています。シーズンが始まってから、PUはスペックアップにともなってパフォーマンスと信頼性を上げています。





──ホンダは第4戦でスペック2、第8戦でスペック3、第13戦でスペック4のPUを投入しています。



田辺:チームは(優勝した)第9戦オーストリアGPで、新しいフロントウイングを投入しています。これがある意味答えで、クルマ全体のパフォーマンスが上がり、トップチームに近づきました。オーストリアの優勝に関していうと、気象コンディションを含めて、我々のPUはパフォーマンスを落とすことなく走れる状況でした。



 





──気温が35℃に達する猛暑でした。



田辺:はい。メルセデスは高い外気温のなかで、通常のコンディションなら出せるパフォーマンスを落として走らざるを得なかった。フェラーリはタイヤに苦しんでいました。我々も高外気温に対して妥協を強いられた部分がありましたが、パフォーマンスダウンの幅が小さかった。そのため、いい結果が得られました。





──2勝目を挙げた第11戦ドイツGPは、雨が降ったり止んだりの難しいコンディションでした。



田辺:スタートでは(優勝したフェルスタッペンは)ウェット路面に足をすくわれましたが、チームのストラテジーとドライバーの集中力、それらすべてが噛み合うことで勝つことができました。我々ホンダとしてはスペック1からスペック4まで、信頼性と性能をバランスさせながら投入し、パフォーマンス向上に寄与しています。それぞれのスペックが空回りせず、クルマのパフォーマンス向上と合わせて結果につながっています。



 





──スペック3では、ホンダの航空エンジンに採用されている技術をターボチャージャーに入れることで、ターボの効率が向上し、その効果でMGU-HとICEの使い勝手が増してPU全体の底上げにつながったと説明を受けました。10月13日に決勝レースが行われる第16戦日本GPもスペック4で臨むことになります。スペック4のアップデート内容を教えてください。



田辺:MGU-KとMGU-Hはスペック3と同一です。ICEの性能をアップしました。





──鈴鹿サーキットで行われる日本GPに向けて、何か特別な準備をしているのでしょうか。年間21戦のうちの単なる1戦という認識でしょうか。



田辺:21戦のうちの1戦ですが、準備はしています。いま持てるもののなかで最大のパフォーマンスを発揮できるよう考えながら、準備を進めています。限られたエネルギーをエンジンに使ったほうがいいのか、リカバリー(MGU-Hの回生)に使ったほうがいいのかは、サーキットの特性を含めてバランスをとる必要があります。そういったことも含めて、準備を進めています。



 





──そもそもですが、2019年にレッドブルと組んだことが、ホンダが急に強くなった理由と考えていいでしょうか。



田辺:全体のパフォーマンスは、シャシーとPUとチームのストラテジー、それにドライバーのパッケージで決まります。そのパッケージとしてはレッドブルのほうが(トロロッソより)高いものを持っています。我々は同じPUを両チームに供給していますが、明らかに差が出ている。今年急にホンダが強くなったのは、チームの実力込みだと思っています。



 



──ありがとうございました。


情報提供元: citrus
記事名:「 なぜホンダF1は急に強くなったのか?