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膝の上でノートパソコンを開き、ちょっとした隙間時間に仕事をこなす。普段何気なくしているこの仕事のスタイルが男性機能に悪影響を及ぼしているという事実は、あまり知られてない。
問題は熱。パソコンが発生する熱が、我々男性の股間に“悪さ”をするのだ。精子を作る精巣は、陰嚢内にあることで、体温より2度くらい低い35度程度の温度に保たれている。このことが精巣が精子を作るために重要であり、温度が上昇すると生殖細胞の分化が抑制され、アポトーシス(細胞死)が増加するのだ。
そう、精巣は熱に弱い。男性不妊症の原因として知られる精索静脈瘤においても、血流の逆流により精巣温度が上昇することが造精機能障害の原因のひとつと考えられている。
だから私たち男性不妊の医師は「股間クールビズ」を推奨している。夏だけではなく、冬も意外と股間は暖まったり蒸れたりするので注意が必要である。ピタッとする下着やズボンはなるべく避けたほうがいいだろう。
■サウナ好きに子だくさんはいない?
では、直接陰嚢が温まるお風呂はどうか? サウナや長風呂は健康にとってプラスの効果もあるが、ピタッとする下着などと同様、温度ストレスにより精子に関しては悪影響を与えることが以前から報告されている。
ある研究によれば、精液所見が正常な男性群がサウナを一定期間行うことで精液所見が悪化、精子のミトコンドリア機能なども低下した。しかし、サウナ習慣をやめてしばらくたつと精液所見が回復したと報告されている。今後子づくりを控えているサウナ好きの男性はいったん習慣をやめることを勧めたい。
無類の長風呂好きだった患者が、精子無力症(精子の運動率が悪い状態)であることが分かり、短時間の入浴に切り替えるよう伝えたところ、精子の状態が好転したケースもあった。
■Wi-Fi接続した膝上パソコンだとさらに…
話をパソコンに戻そう。膝上パソコンは熱だけでなく、Wi-Fiが精子に悪影響を与えるという報告もある。マウス、ラット、さらにヒトにおいて、Wi-Fiより発せられる電磁波に暴露されると精子の運動率や濃度が低下したりDNAの損傷が増加することが報告されている。このメカニズムとしては精索静脈瘤と同じく電磁波が精巣における温度上昇、酸化ストレス物質の増加・抗酸化力の低下を引き起こすことが原因と考えられている。
ピシッとタイトなスーツを着て、移動中も膝上パソコン+Wi-Fiでテキパキ仕事をこなす男。一見カッコいいかもしれないが、実は精巣にかなりよくないことをしていることを、キモに命じたほうがいい。