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『アンチエイジングに勤しむ日本は息苦しい』──そんな、なかなかに挑発的なタイトルの記事をPRESIDENT Onlineが配信していた。
「若さ」を保つことは本当に必要なのか? PRESIDENT Onlineの取材に応える、化粧文化に詳しい駒沢女子大学の石田かおり教授は、
「今は誰もが同じような外見を目指して、すぐに効果が出る『ファストビューティー』が求められている。だが、同じ外見の人はいない。人それぞれ・年それぞれの美しさを考えるべきではないか」
……と語る。
誰もが“わかりやすく”「若くて、健康で、美しく」見えるよう、即効性や合理性の高いアイテムやサービスに飛びついてしまう「性急なアンチエイジング現象」──たしかに健康面でのアンチエイジングはQOL(=クオリティ オブ ライフ)の向上に直結するので大変けっこうなこと……だが、アンチエイジングを美容で追究する「ファストビューティー」への特化は、必ずしもけっこうなことばかりだとはかぎらない……と、石田教授は指摘する。理由は、
問題なのは、ファストビューティーの画一性。みなが認める価値に留まり続けることに疲れたら、あるいは別の価値観を求めたくなったら、本人にとっては不本意でも社会的価値に反する生き方を迫られることになってしまう。外見表現の画一性は生き方の自由をも制限する可能性があり、それゆえ社会の閉塞感に結びつく
……からである……らしい。
私も外見に関しては、50歳を過ぎたあたりから、いろいろな試行錯誤を繰り返してきた。たとえば、若いころは「ハゲたらスキンヘッドにすればいいや」と意気込んでいたくせに、いざ5年ほど前から本格的に頭髪が薄くなってきたら、決して安価ではないリアップを定期購入し、チビチビと塗りはじめた。(効く・効かないは抜きにして)もっとも馴染み深いアンチエイジング法の一つだと言えよう。白髪染めまでには今のところ手を出していないものの、とくに白髪が目立つ側頭部と顎ヒゲはなるべく短く刈るようにもした。これも消極的な白髪防止、すなわちアンチエイジングの一環だと解釈できなくもない。いっぽうで、本来は派手な色の洋服を好む私なのに、周囲の「年相応」なる無言の同調圧力に負け、最近はモノトーン主体のコーデに甘んじてきたりもした。
でも、今年あたりから、そういうことをいちいち考えることが面倒くさくなって、これらのアンチエイジングやアンチ・アンチエイジングに対する“気配り”を一切やめてしまった。ハゲは現状残っている髪でどうにか誤魔化す、白髪は生やしっぱなし、赤だろうがオレンジ色だろうがヒョウ柄だろうが迷彩柄だろうが着たい服を着る、チ○コが勃たなくなったらバイアグラに頼らず前戯をひたすら頑張る……ようやく加齢に対するコンプレックスから解き放たれ、心底から「自分は自分」と開き直ることができるようになったのだ。
ただ、赤面モノの気障でベタな表現ではあるのだけれど、「精神のアンチエイジング」ってヤツはここ数年、人一倍意識している。
みうらじゅんさんは「何歳になっても人から叱られることこそが最大のアンチエイジング」とおっしゃっていた。とても名言だと私は思う。人生の先輩風(かぜ)を吹かしまくり、他人から叱られるスキをも与えない大御所サンに今後の伸びしろを期待できるはずもない。あと、なにかのトラブルに見舞われたとき、たとえば旅先で道に迷った際、すぐ地元の通行人に道を尋ねるのではなく、若い世代が普通にやっているように、まずスマホを頼って、Googleマップで調べてみる──こういったエイジレスな“歩み寄り”を“迎合”としか見なせないのなら……それはアナタの頭の膠着を匂わせる黄信号の点滅だと自覚すべきだろう。