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「あんましハネないので、なるべく書くのはやめてください」と、チクリcitrus編集部から釘を刺されている野球ネタではあるのだけれど、今日だけは書かせていただく(※「今日“だけ”」ではなく、けっこう勝手に何度も書いちゃってはいるのだがw)。
5月29日に甲子園で行われた阪神×巨人戦──阪神・高山俊外野手(26)が同点の延長12回一死満塁から、右越えに自身初のサヨナラ本塁打となる1号満塁ホームランという劇的な幕切れ! 本拠地での巨人戦の連敗を「9」で止めると同時に、2位浮上を導いた。巨人戦のサヨナラ満弾は球団史上初で、貯金は今季最多の「5」。3年前の新人王が鮮やかによみがえった。
ダイヤモンドを一周して歓喜の渦に包まれる高山の頭を率先してバシバシとシバいているのは……なんと! 背番号88──現・阪神タイガースの総指揮官を務める矢野燿大監督であった。本来ならベンチにドカッと座って最後に祝福の声をかけるのがセオリーであるはずなのに……こんな監督、これまで見たことない。
「矢野ガッツ」なるワードが、ちまたで津々と浸透しつつある。万一、我らが阪神タイガースが優勝でもしてしまった日には(※この「万一」といったネガティブマインドはトラ党が少なからず潜在化に棲まわせる“トラ”ウマだったりする)今年の新語・流行語大賞にも選出されかねない勢いだ。
矢野サンみずからが事あるごとにベンチ内で頻繁に、なりふりかまわず見せるガッツポーズ──このパフォーマンスは、今季から就任した清水雅治ヘッドコーチの発案であるらしい。3月に行われた野球日本代表・侍ジャパンにコーチとして派遣されていた同氏が、対戦相手のメキシコ代表の選手が安打を放つたびに塁上からベンチに向けてガッツポーズをしていたのに目をつけ、監督に導入を提案。チームとして「どんどんガッツポーズをして喜ぼう」と号令をかけたという。
翌29日にされた発売トラの御用新聞『デイリースポーツ』に掲載されていた矢野サンの前日コメント集「矢野監督の超積キョ句」に目を通してみよう。
(テレビ会見)
──今の気持ちは?
「野球ってすごいですね。こんなドラマが。興奮しました」
──(ウォーターシャワーで)びしょ濡れです。
「なんぼ濡れてもいいです。毎日やりたいです」
(中略・囲み取材)
──高山の劇的弾。
「去年2軍で苦しい時期を過ごしているけど、本当に心の成長ってすごくあって。そういうのを見てるんでよりうれしい」
──延長12回は木波が粘って四球。
「もうみんなでかい。551の蓬莱(のCM)や。(好機で)ある時、ない時ばっかりやって(笑)(※←東京在住のゴメスには少々意味不明)」
──「矢野ガッツ」も連発した。
「ナンボでもしたいわ。最高やぞ。選手のみんながすごい」
「陽気が取り柄な東大阪あたりにある町工場の若社長」を彷彿させる、脳天気っぷり&関西弁全開のインタビューである。が、じつのところ、本来の矢野サンはこういうキャラクターではない……との噂もある。なにを隠そう、私も何度か矢野サンとは飲みの席でご一緒させていただく機会があったのだけれど、たしかにそのときはもっと物静かな印象を受けた。
「監督たる立場にある者が、あんなにはしゃぎするのはいかがなものか!?」みたいな批判の声もなくはない……と聞く。その論調が正しいのか、間違っているのかは、シーズンを終えて結果がはっきりするまで、迂闊なジャッジはできない。でも、矢野サンが“本来のキャラ”を封印してまで、先頭を切って“お手本”となり、昨年は最下位に甘んじてしまったチームのなにかを本気で変えようとしている、その姿勢と瞬発力は、とりあえず現時点でも評価してかまわないのではないか?
「まずは選手在りき」の発言を小マメに挟む気配りを忘れず、テレビカメラにとらえられる回数も日に日に増えつつある満面破顔の「矢野ガッツ」を、私も一度でも多く“確認”できることを心から願っている。そして、コレもまた紛れもない“ファンサービス”の一環だと、惜しみない称賛を捧げたい。