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いきなりで恐縮ではあるのだが、親愛なるcitrus読者の皆さまは「#KuToo」なる言葉をご存じだろうか?
グラビアアイドル兼ライターの石川優美さんが行っている「女性へのヒール靴強要の廃止を呼びかける運動」のことで、「靴と苦痛と#MeToo」をかけ合わせた造語である……らしい。AbemaTIMESによると、その言いぶんは以下のようなものである。
「女性というだけでヒールやパンプスを履かされている職場は少なくない。ハイヒールやパンプスを否定しているのではなく、履きたくない女性もいるので、その人たちのことも考えてほしい」
「マナーやTPOはもちろんある。実際に(石川さんは)葬儀のバイトを行っているので、スニーカーで出勤というのではない」
「ヒールやパンプスである必要はあるのか? 男性と同じ革靴を履くことができれば、仕事の負担は大幅に減るし、効率も良くなる」
そして、この案件に関して実際に街のリアルを調査した『Abema的ニュースショー』(AbemaTV)では(3月10日放送)、女性から
「お客さんと会う仕事だと男性もスーツなので、ヒールもしょうがない」
「ヒールじゃなかったらイヤ。見た目的にキレイ感がない」
「ブライダルのバイトをヒールでやっていたが、(脚が)死ぬ」
「男性も一度ヒールで出勤してみればいい」
……など、ヒール擁護派から反対派まで、さまざまな意見が聞かれたという。
すみません。(少なくとも)仕事中の女性の足元とか、私はこれまで全然気にしてませんでした。あと、ヒールのある靴って、履き続けていたらそこまでしんどいんですね……それも知りませんでした。すいません。てなわけで、私はファッションとしてのトータルコーディネイトがおかしくなければ、別にヒールでもパンプスでもローファーでも、場合によっちゃあスニーカーでも全然かまわない派だったりするのだけれど、「靴と苦痛と#MeTooのかけ合わせ」といったセンスはなかなかに洒落ているとは思うものの、スローガンとして掲げるにはいささか唐突……正直あまりピンと来ないのもまた事実であった。これって……(特殊な接客業以外で女性にヒールやパンプスを露骨に、もしくは暗に強要する企業なんかがまだ実在するならば)「女性差別」ってよりは個人と企業との労使問題じゃないのか? だったら、主張する相手は漠然とした「日本or世界」より、「経営サイド」に絞ったほうが世間に与えるインパクトも強いのでは……?
そんな私のささやかかつボンヤリとした違和感を、同番組中で完璧なロジックをもって明文化してくださったのが、東京大学大学院卒業の元日経新聞記者で、元セクシー女優でもある鈴木涼美さん(35)である。ゴメス的にはものすごく真っ当だと納得できることをおっしゃっているので、ここは一言一句漏らさず、正確に読み取っていただきたい。
「こういった運動は世界各地で起こっている。一部賛同は得られるがそれ以上の広がりがない、乗らない女性が多いことを考えると、女性がキレイでいることは社会的要請である一方、女性自身の普遍的な欲望でもある」
「そのような女性の人生がパッとしないのは、男女差別のせいではない。アナタの不幸は、アナタが女だからということではない。今は女性差別という言葉が便利に使われているが、何でもそのせいにしてストレスを発散しているように見える一方、他にある幸福の道を自ら見えなくしている」
これが仮に男性による発言だったとすれば、どうだろう? 下手すりゃ山火事クラスの大炎上……なんて騒ぎになっていた可能性も充分にあり得る。これを女性の立場から、しかも一般論でいうところの社会的弱者とされるセクシー女優(=AV女優)の経験もある鈴木氏が発言なさっているのが、とにかく大きいと思う。
「女性がキレイでいることは女性自身の普遍的な欲望でもある」──そう。だから、急進的なフェミニストが格好の攻撃の対象とする「ミスコン」に応募する女性は、今でも後を絶たないのだ。鈴木氏の一見挑発的とも取れるこうした論旨に、やはり女性の立場から異を唱えるのはかまわない。だが、それと同時に「自分がキレイであることを証明するため嬉々としてミスコンにエントリーする女性」や「合コンで男性からワリカンを提示されたとき、あかるさまにご機嫌斜めになってしまう女性」に向けても、教育的指導の声をあげてこそ「真の男女平等」なのではなかろうか。鈴木涼美サン……インリンや佳子様よりも、私が現在もっとも会ってみたい女性の一人である。