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デューク東郷ことゴルゴ13(通称G)について、元外務相主任分析官の佐藤優氏と作者のさいとうたかを氏が語り合う、なかなかに興味深い短期集中連載を『NEWSポストセブン』が配信していた。
文中で、ゴルゴがこれだけ愛される理由を「彼は冷血一辺倒に見えるが、じつはヒューマンだから」だと佐藤氏は分析し、そこから以下のように対談は流れていく。
佐藤:いまはスパイ衛星の感度もあがっていて、敵の居場所を突き止めることが容易になりました。AI搭載の兵器も続々出てくるでしょうから、ますますスナイパーの居場所はなくなるように見えます。でも、人工衛星やAIには、裏切り者を見分ける能力はありません。ヒューマンなゴルゴならそれができる。
さいとう:ゴルゴは勘が研ぎ澄まされていますから。
佐藤:いやいや、その“勘”こそ、人間と機械の重要な違いです。
その気になれば、一人の最重要犯罪者が世界中のどこにいても人工衛星だとかGPSだとかで特定できそうな現在社会における壮大なるリアリティーの欠如を「勘が研ぎ澄まされていますから」の一言で片づけてしまう乱暴さはいかがなものか……と思わなくもないけど(笑)、こうやって華々しい実績と知性を持つ大の大人が首を揃えて「たかが漫画(されど漫画)」について真剣に討論するような企画が、私は決して嫌いじゃない。
ただ、最初は(さいとう氏自身が)10話で終わらせるつもりだったのに、いつのまにか半世紀もの長寿連載と相成ってしまったという『ゴルゴ13』が、ゴルゴの実年齢をはじめとする、もはや払拭しきれない多くの矛盾をはらんでいるのは紛れもない事実であって、それらとどう向き合っていくかは、作者側だけではなく読者側にも課せられる“今後の課題”だろう。
とりあえず、「なぜ、ゴルゴがこうも長生きできているのか?」については「世界の首脳たちがゴルゴを抹殺する以上にゴルゴを必要としているから」との理由が、作者側の(連載を続けられる)“後ろ盾”だ。
では、我々読者側にとっての“後ろ盾”とは一体なんなのか? 私は「ゴルゴの実年齢をはじめとする、もはや払拭しきれない多くの矛盾」に“目をつぶる”ことだと考える。わかりやすく表現してしまえば、
「ゴルゴだからしょうがないよね…」
……って感じである。でもしかし! この「しょうがないよね…」は、もちろんのことどんな漫画にでも適用されるような“暗黙の了解”ではなく、サザエさんやドラえもんクラスの“継続を力”とするマンネリズムを味方につけた名作にのみ許される“錦の御旗”なのではなかろうか。
ところで、私は今回の対談でもさいとう氏が語っている
人間ひとりの命も、蟻一匹の命も、同じ重さと考えたら、人を殺すことにいちいち躊躇しません。平気で引き金を引ける。その代わりゴルゴは、蟻一匹たりとて無駄に殺したりはしない。それは必然ではないから。
……といったゴルゴの死生観が大好きだったりする。私の人生にどんなかたちで活かせばよいのかは不明でこそあれ、大いに肝へと銘じたい。