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とあるSM系バーで知り合ったヒデオさん(38歳)は、「Mだけど痛いのが好きなわけではない」と言う。彼はとにかく屈辱感を味わうと勃起してしまうのだ。だがもちろん、「信頼関係のある人から侮辱されたい」のであって、知らない人に侮辱されたいのではない。
■痛いのが好きなわけではない
彼が好むプレイは、尿道に医療用のガラス管を挿入すること。壮絶な痛みがあるらしい。ガラス管は針の先ほどの細さのものから、えっと驚く太さまでさまざまだ。彼は現在、ボールペンの芯くらいなら「余裕で入る」とか。
「痛いのはイヤなんです。だけど『こんなのも入らないの』と女王様に侮辱されたい。だからどんどんチャレンジしてしまう」
チャレンジして挫折するたび、女王様から罵声が飛ぶ。そうすると彼はこの上ない快感を覚えるのだ。挑戦していくMなのだろう。そしてMが常に主役でいたがるのは、女性も男性も同じ。彼もガラス管を入れられて悶絶している自分を見てもらうのが大好きだという。
「苦痛に悶えているときに冷たく笑ってほしいんですよね。一緒に痛い顔をしないでほしい。なかなかそういう細かい好みはわかってもらえないけど」
冷たく笑ってもらいたい。その複雑さを理解するのはむずかしい。
■犬として生きるうれしさ
もうひとり、自分でも持て余すような複雑な心理を話してくれたのは、シゲハルさん(42歳)だ。彼は「犬として叱られたい」という欲望がある。
店の入り口で、彼は下着姿になり、女王様に首輪とリードをつけられる。そして四つん這いで歩き回るのだ。
「本当は公道でこういうことをしたい。だけどそうはいきませんからね、そこが寂しいところです」
好きな女王様の犬になりたい。それが彼の心情だ。女王様は彼の気持ちをわかっている。ときどき、「どうして粗相をするの」とお尻を叩く。すると彼は舌を出してうれしそうにお座りをするのだ。
シゲハルさんは既婚者。一時期、妻にセックスのときぶってほしいとか、言葉で責めてほしいと頼んだこともあるが、うまくいかなかった。それ以来、妻とはセックスレス。
「そもそもセックスが好きなわけでもないので。僕はいたぶられたいだけ。本当は妻の犬になりたいけど、そんな願いは叶わない。だからここで欲求を満たしているんです」
妻にリードを引いてもらって、四つん這いで公道を歩く。確かにそんな夢は叶わないだろう。決してかなわない夢を追いかけているシゲハルさんがどこかせつなく見える。