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平成時代を当時の新語・流行語で振り返るコラムをお届けします。今回は「1997年(平成9年)」編です。
この年、国際社会では香港の中国返還という大きな出来事がありました。国内では89年導入の消費税が3%から5%にアップ。翌年の長野五輪開催を控え、長野新幹線が開業しました(現・北陸新幹線の部分開業)。サッカーでは日本代表がW杯への初出場を決め、その試合が「ジョホールバルの歓喜」として語り継がれています。
■【失楽園】空前のブームによって変化する恋愛観
95年9月から96年10月にかけて日本経済新聞で連載された小説『失楽園』(渡辺淳一)が話題になりました。なにしろドロドロの不倫(50代男性編集者と40代間近の女性とのダブル不倫)と過激な性描写を扱う小説が、お硬い経済紙の紙面に登場したのです。電車などでこの小説を楽しむ男性たちの姿は、ワイドショーなどで格好のネタとなりました。
さらに97年には単行本・映画版・ドラマ版が相次いで登場。ブームを確固たるものにしました。ちなみに単行本の発行部数は上下巻合わせて300万部を突破。映画版(役所広司・黒木瞳)の動員数は250万人を突破。ドラマ版(古谷一行・川島なお美)の最高視聴率は27.3%を記録しました。映画版の観客はその過半数が女性。これについて、90年代初頭から話題になっていた「セックスレス」の影響を指摘する論調もありました。いっぽうドラマ版を巡っては、テレビにおけるヌード描写の是非を問う議論も起こりました。
世間では、不倫することを「失楽園する」と表現するように。男性週刊誌では「失楽園したい女ベストテン」などと題した特集が登場するほどでした。同年の新語・流行語大賞では「失楽園(する)」が年間大賞を受賞しています。
■【たまごっち/ポケモン】品薄で勃発した“たまごっち争奪戦”
この年は「たまごっち」と「ポケモン」などの育成ゲームがブーム化しました。架空のペットを育てる卵型の携帯ゲーム『たまごっち』(バンダイ)は1996年11月に登場。当時の女子高生が火付け役となり、97年ごろ爆発的なブームとなりました。これは携帯用テトリス(多くは非正規品)に次ぐミニゲーム機の流行でした。世間では仮想ペットをリセットすることの是非が議論になったり、たまごっちの死を悲しむ人の姿が話題になったり、レア度が高いとの噂で白いたまごっちの取引価格が高騰したり、たまごっち狩りをする不届き者が現れたり、様々な狂乱が起こりました。そんな中『ぎゃおッPi』なる便乗商品まで登場。香港やブラジルでは本家よりも人気でしたが、ブームの終焉と共にひっそりと姿を消しました。
いっぽう携帯用ゲーム機の分野では、任天堂ゲームボーイ(89年発売開始)用のソフトである『ポケットモンスター赤・緑』が96年2月に発売開始。97年にはそのアニメ版の放映も始まりブームが加熱しました。当時の人気ぶりを象徴する出来事のひとつが「ポケモンショック」。これはアニメ版ポケモン(97年12月16日)を見ていた全国の子供750名が、光過敏症の発作を起こした出来事のこと。現代のアニメでよく見る「部屋を明るくして離れてみてね」という注意書きの契機になった出来事でもあります。このような出来事が起こるほど、当時の子供にとってポケモンは大きな存在でした。
※ほかにもこんな新語が……
新語・流行語:ナオミよ(CMに登場したスーパーモデル、ナオミ・キャンベルの台詞)、パパラッチ(ダイアナ元皇太子妃の交通事故死を受けて)、生活習慣病、金融ビッグバン
商品・サービス・コンテンツ:もののけ姫、タイタニック(以上映画)、ベルギーワッフル、プリウス(自動車)、キシリトールガム
■【まとめ】形を変えて今も進化を続ける携帯型育成ゲーム
たまごっちとポケモンには「現役の定番商品」という共通点があります。例えばたまごっちシリーズの場合、世界での累計出荷台数が8000万を突破しました。最新のものは「遺伝」をテーマにしており、異性のキャラクター同士が「結婚」すると、両親の要素を受け継ぐ「たまごっち」が生まれます。共働き家庭の増加を背景に、お世話できないときにキャラクターを預けられる機能も付きました。またポケモンシリーズも累計出荷本数が3億を突破。後継ソフトが継続中のほか16年には『ポケモンGO』が世界的ブームになりました。いずれのシリーズとも「携帯・通信・育成」といった現代的ヒット要素とともに進化を続けています。