まもなくに迫ったサッカーW杯に、アンドレス・イニエスタのヴィッセル神戸入り……と、本来ならサッカー一色になっても然るべきの日本のスポーツメディアが、悲しいことに「日大アメフト部反則問題」で連日埋め尽くされている。



 



「盗人にも三分の理」とはよく言われるが、ここまでヒール役がわかりやすい醜態をさらし、一方的な攻撃を受けるケースは、あらゆる信念・思想を含む言論がインターネット上に“並列”されながら入り乱れる昨今では、むしろ稀なのかもしれない。



 



一コラムニストとして、とりあえず“多数派”とは真逆の視点から物事を洗い直す、もっとぶっちゃけてしまえば、主流的な世論のアラ探しから始めてみる習性が染みついているこの私ですら、さすがに本案件に関しては、日大側を擁護できる要素を一つたりとも発見することができない。つまり、なにをどう捻って書いても、結局は“他の大勢”と同じになってしまうのである。だから、私はこの問題について、今まではあえて原稿で触れることを避けていた。しかし! これだけは炎上覚悟で異を唱えておきたい。



 



J CASTニュースが配信していた『現役部員「集団告発」も!? 日大アメフト、メディアに証言続々』なるタイトルの記事を読んだ。まあ内容自体は、すでにあちらこちらでも散々書き尽くされた後追いの寄せ集めにすぎないのだけれど、私が気になったのは、文中にあった落語家の立川志らく(日大出身)の発言と、記事下にあるコメント欄だ。



 




「彼らはスポーツマンなら全員公の場に出てきて、何があったか言うべきです。何があの時指示されていたのか、みんな選手は知っているはずなんだから」

(※5月24日放送TBS系情報バラエティ番組『ひるおび』立川志らくの発言)




 




「仲間、部員、一致団結して立ち上がる時でしょうね。」




 




「日大の学生・付属高に通う未来の後輩達の為そして何よりケガをされた関学の選手、ならびにアメフトはじめスポーツを愛する日本中の人々に再び夢を与えてくれるのは部員の方々の真実の告白だと思います。あなた方の勇気ある行動を心から信じたいと思います」




 




「現役アメフット部員による告発を期待したい」




 




「今、立ち上がらなかったら先々、絶対に後悔する」




 



さて。上述した一連の“主張”に目を通して、citrus読者の皆さまは一体どんな感想をお持ちになったことだろう? 



 



私はすごく怖いと思った。なにが「怖い」って、「指導者側のウソ(とされている文言)を告発する」という、日大現役アメフト部員たちにとっての“権利”が、いつの間にか世論の勢いに乗じて“義務”へと化しつつあるフシが見られるのがおっかないのである。



 



もちろん、顔を出してでも告発したいなら、くどいようだがそれは“権利”なのだから、そうすればいい。もし、それを個人なり何人かなりが本当にやったんだとしたら、その勇気には惜しみない賞賛を贈りたい。だが同時に、陰でマスコミやスポーツ庁や第三者委員会や警察にこっそり告発したり、あくまでダンマリを決め込む“権利”をも持つ現役部員たちを、どうして我々が責めることができようか。



 



150名もいる部員のそれぞれには、さまざまな事情や考え方が混在する。温度差も大なり小なりはあるはず。それこそ、勇気を持って先日単独会見に臨んだ当該選手に「もうこれ以上、騒ぎを大きくしないで…」と複雑な想いを抱いているチームメイトだって、実在しない可能性はゼロじゃない。



 



スポーツマンをいたずらに過大評価してはいけない。どうか「スポーツマン=潔い」みたいな先入観は、いったんキレイサッパリと捨て去ってもらいたい。彼らは将棋やブラスバンドじゃなく、たまたまアメフトに青春を賭けることを選んだだけの、どこの大学にもいる若者、学生さんであることを忘れてはいけない……気がする。


情報提供元: citrus
記事名:「 日大アメフト問題で思う。「スポーツマンを過大評価してはいけない」