いくつになっても新しいことにチャレンジするのは素晴らしいことだ。それで対価を得るわけでなくても、チャレンジ自体が心身を活性化させるのは間違いない。だが、そういうことをよしとしない人もいる。

定年後は自由を満喫

昨年、60歳で定年退職したマリさん。3歳年上の夫とは結婚30周年を迎えたところだ。二人の子どもたちはすでに独立し、夫婦二人の生活である。

「定年になってからは、自由を満喫しています。今まで習い事1つできなかったので、毎日のように地域のサークルを見学して歩き、実際に始めたのは合唱とヨガ。そして今年から、実はヒップホップダンスを習っています」

夫は65歳が定年なので毎日出勤しているが、マリさんは「主婦からも卒業させてもらう」と宣言した。

「とはいえ、全ての家事をやらないというわけではないんです。私自身が家で夕飯をとるときは夫の分も作りますし。ただ、私が友達と食事をするときは『明日は夕飯、自分ですませて』ということになる。夫は『オレはまだ働いているのに』とぼやいていましたが、いいかげんワンオペ主婦から退職させてと強引に押し切りました」

みっともないとののしる夫

合唱とヨガについては夫に一応、報告はしたが、ヒップホップダンスを習っているとは言っていなかった。ただ、近所の仲よし主婦には話しており、彼女も「私もやりたい。今度、見学に行かせて」という話をしたばかりだった。

「ある日、夫が帰ってくるなり、『きみは何をやってるんだ』と言うんです。何の話と聞いたら、『なんとかダンスをやっているらしいな』と。ああ、ヒップホップのことねと言うと、『いい年してみっともないことはするなよ』ですって。どうしてよ、今はシニア向けのダンススクールもあるのよと言っても聞く耳をもたない。ひたすらみっともないと繰り返されました」

ヒップホップダンスは今、シニアの間でも流行しており、全国大会もあるほどだ。夫はそれを知らなかったし、若い者がやっていてもみっともないのにシニアがやるのはもっと悲惨だと言いつのった。

「何かヒップホップに恨みでもあるんでしょうかね。私は分かった、やめるからととりあえず言っておきました。夫はそれ以来、まだやっているのかとは言わなくなった。やめたと信じていたいんでしょう」

この人との老後はつらいなとマリさんは感じている。

短絡的で保守的な夫

60歳を過ぎて、「ただ平凡な毎日を過ごすのがつまらなくなってきた」と言うのは、ユウコさん(63歳)だ。この先、20年生きるとしても、ただ孫の顔を見るのが楽しみなシニアにはなりたくないと感じていた。

「そこで一念発起して、大学の政治学部の講義の聴講生になりました。これがなかなか面白くて。翌年はもう1科目追加しました。勉強しなおして大学に編入しようか、あるいは大学院に入ろうかとも考えています。ところが夫は私が政治や社会を学ぶことに大反対なんですよ。あんなに保守的な人だと思わなかった」

政治など学んで何になる、政治家になるつもりか、何か企んでいるのか、今さらデモにでも行くつもりかと、夫はせせら笑うように言ったという。

「政治や社会を学ぶだけで、そんなふうに思うなんておかしいよと私は言いました。短絡的すぎるとも言った。夫はものすごく怒っていましたが、私は何を怒っているのか分からない。夫がまるきり知らない他人に見えましたね。もともと新しいことを受け入れたがらないし、勉強している私を見て『なんだか辛気くさいな』と嫌みを言うような人ですが、それでも政治を勉強しているだけで何か企んでいるのかという言い方はどうなんだと思います」

夫に人生を邪魔されたくない

ユウコさんは、それを機会に夫と寝室を別にした。夫は何も言わなかった。同時にどんどん会話も減っていった。夫とは何も分かり合っていなかったんだという失望感が大きかった。

「夫の方も、こんな妻だと思わなかったと感じているのかもしれません。でも人間、やりたいときにやりたいことをやった方がいいと思うんです。実は私、大学では政治学部だったんですよ。でも当時はあまり勉強していなかった。今になってもう一度学んでみると、学ぶってすごいことだと思うんです。知らないことを知るのは人としての基本なのではないかと。新しい友人もできたし、今が本当の青春みたいな気分なんです」

生き生きと学ぶ妻が、夫にはまぶしく、うらやましいのかもしれない。ユウコさんは学び続けるために夫を説得するつもりはない。自分がやりたいことは淡々と続けていく。夫に人生を邪魔されたくないという気持ちが強いと、彼女ははっきりと言い切った。
情報提供元: All About
記事名:「 「主婦はもう卒業させて」還暦過ぎて“学び直し”を始めた妻に、夫が浴びせた「まさかの言葉」 」