「日が短くなると気持ちが落ち込む……」寒くなる時期の憂うつ感は、うつ病の可能性も
All About 2026年10月29日 00:00:00
Q. 日が短くなると、毎年気持ちが落ち込みます。対処法はありますか?
Q. 「毎年、秋になって日が短くなっていく季節は、なんとなく気分が沈んでやる気が出なくなります。寝ても寝ても眠く、甘いものばかり食べてしまい、自己嫌悪です。気の持ちようだと思ってがまんして過ごしていますが、何か対処法はないでしょうか?」A. 日照不足による「冬季うつ病」の可能性も。適切に対処しましょう
日が短くなる秋から冬にかけてだけ、うつ症状が出るタイプのうつ病があります。一般的に「冬季うつ病」と呼ばれるもので、精神医学的には「季節性感情障害(SAD:Seasonal Affective Disorder)」と言います。主な原因は日が短くなることによる「日照不足」です。春や夏は過ごしやすいシーズンで、活動的になる人も多いでしょう。その分、秋や冬に気分の不調が起きても、「寒さのせい」と見過ごされがちです。しかし、日照不足は気分や活動力の低下に強く影響することが医学的にも分かってきています。
まだ完全には解明できていない点があるものの、日光と「セロトニン」の関係である程度説明できる状態です。「セロトニン」は神経間の情報伝達を担う物質です。不足するとうつの直接的な原因になると考えられています。一方、睡眠と覚醒のリズムを作る「メラトニン」は夜間に分泌が増え、日中は日光で抑えられます。日光が網膜を通じて脳に届くと、セロトニンの作用が強まり、メラトニンが抑えられて気分が快適になります。
日が短くなり日照量が減ると、この仕組みが十分に働かなくなり、うつ状態になると考えられています。
冬季うつ病の症状は、一般的なうつ病とほぼ同じです。次のようなサインに気付いたら注意しましょう。
・気分が落ち込み、以前は楽しめていたことに興味が持てない
・疲れやすく、ぐったりして活動量が減る
・眠気が強まり、睡眠時間が長くなる
・食欲が増え、特に甘いものが欲しくなる
冬の日照時間が極端に短いフィンランドやスウェーデン、アラスカなどでは、発症率が人口の10%近くかそれ以上に及ぶと報告されています。日照量の多い地域から移住した人は、もともと住んでいる人よりもさらにリスクが高いとされています。
対処法としては、残念ながら一つの正解はないのですが、まずは「気合の問題だろう」「努力が足りない」などと考えて自分を追い込まないことです。症状が軽い場合は、無理をし過ぎず、適度にリラックスする時間を作ったり、好きなことをしてリフレッシュしたりするのも有効ですが、うつ病の一種であることに変わりはありません。つらい状態が続くときは自分で解決しようとせず、精神科や心療内科に相談してください。
また、年末が近づくほど多忙になる仕事や、年末年始の帰省ストレスなど、日照時間以外に憂うつ感に明確な原因がある場合は、冬季うつ病とは区別が必要です。原因を考え、適切に対処するようにしましょう。
中嶋 泰憲プロフィール
千葉県内の精神病院に勤務する医師。慶応大学医学部卒業後、カリフォルニア大学バークレー校などに留学。留学中に自身も精神的な辛さを感じたことを機に、現代人の心の健康管理の重要性を感じ、精神病院の現場から、毎日の心の健康管理に役立つ情報発信を行っている。 情報提供元: All About