「私は大事にされてない」弟だけ歯列矯正、塾送迎……。“ブラザーペナルティ”に苦しんだ女性の決断
All About 2026年10月28日 00:00:00
このところ話題になっている「ブラザーペナルティ」とは、家庭内で弟より姉に経済的な制約がかかるという研究で使われている言葉だという。
弟優先だった母
「私は2歳違いの弟がいます。私の小学校の入学式に母は弟の面倒をみなくてはいけないからと来なかった。代わりに祖母が来ました。卒業式のときは弟が風邪をひいたからと来なかった。どちらも祖母が弟の面倒をみればいいだけのことなのに。私は大事にされていないと思っていました」マヨさん(46歳)は苦笑しながらそう言った。弟が親にしてもらって彼女がしてもらえなかったことは、歯の矯正、スイミングスクール通い、塾への送り迎えなどがある。
日常生活の中でも、弟が小学校に入学してから、マヨさんはずっと弟のランドセルを持たされていた。学校の正門が見えてくると、弟はランドセルをひったくるようにして駆け出していく。小さいうちから、弟は姉が自分の言いなりになると思い込んでいるところがあった。宿題をみたり、学校に持っていくものを確認したりするのもマヨさんの仕事となった。
「さすがに中学生になると、弟自ら姉に依存するのはかっこ悪いと思うようになったようで、外では普通に振る舞っていましたが、家ではけっこう私に命令していましたね。母も『お姉ちゃんなんだから、そのくらいしてあげて』という感じ。母は週に数回パートで働いていましたが、そのたびに『弟のおやつはこれ、塾に行く前にはこれを食べさせてやって』と朝、私に言いつけるんです。
私も部活があったし、中3になると受験勉強もしたかったのに、『あなたはいいのよ、地元の短大に行って早く働いて結婚するのが親孝行なんだから』って。でも弟より私の方が勉強はできたんです」
難関校に合格した私に母は
担任の先生に説得されて、県内随一の受験校に挑戦、合格した。父や親戚は褒めてくれたが、母は仏頂面だった。弟がその高校に受かるとは思えなかったため、「あんたは弟に恥をかかせた」というのだ。「その言葉で私はついにキレました。心の中で母に絶縁をつきつけた。弟がその高校に行きたければ努力すればいいだけのこと。ふざけるなと思いましたね」
高校が自宅から遠かったため、彼女は親戚の家から通うようになった。親戚に話をして、やっと自分が特殊な環境で育ったことに思いが至ったという。
自立して頑張っていたのに
その後、マヨさんは東京の大学に進学、ようやく自分の人生を切り開くことができた。念願だった歯の矯正も、就職後、自分で実現した。「弟は結局、地元から通える大学に進学し、地元で就職しました。それなのに母は私に連絡してきて、『あんたの会社で弟を雇ってもらえないか聞いてみて』と言うんです。さすがに『ふざけたことを言わないで』と電話をたたき切りました。あれが今までで一番気持ちがよかったかもしれません」
30歳で同僚と結婚、二人の娘を授かった。男女一人ずつであっても、自分は絶対に平等に育てると決めていたが、娘二人だったことにホッとしたのも現実だという。10年前に弟は結婚し、2年前に父が亡くなったため弟一家が母と同居するようになった。
「でもすぐに弟から連絡があって、『妻とおふくろが合わなくて、毎日が地獄。お姉ちゃん、おふくろを引き取って』って。何を言ってるの、あんたの方がお母さんから恩恵を受けているのだから、あんたが面倒みなさいって言ってやりました」
だがすぐに母から涙ながらの電話がかかってくる。あんたしか頼れない、ここにいたら私は死んでしまう。息子はかわいいけど嫁が冷たいと。芝居がかった言い方だった。今さらどうして娘に頼る気持ちになれるのか、マヨさんには不思議でならなかった。
全てから解放されたい
「いっさい無視しましたけど、去年の秋、母が入院したと連絡がありました。さすがに見舞いくらいしなければと思って顔を見に行くと、『あんたのせいでこうなったんだから。弟は悪くない。あんたに思いやりがないからよ』と責められました。いくつになっても変わらないんですね。あげく、入院費は私に払えって。弟は会社をクビになったとか。義妹は離婚をほのめかしていました。全て母親のせいなんですよね。私は黙って病室を出ました。もう解放されてもいいだろうと思った」今年の春、母はあの世へ旅立った。マヨさんは葬式にも参列しなかった。下の娘の入学式が重なったからだ。「私は自分の子どもたちを優先させる。平等に」あらためてそう誓った。
「四十九日に実家に帰り、香典として20万、弟に渡しました。遺産相続も放棄した。もう関わらないでという意思表示です」
夫は心配していたが、その後、マヨさんは全てから解放された気持ちになった。心の鉛が溶けて出ていった。そんな気分ですと言う彼女の表情は明るかった。
情報提供元: All About