美容整形をしたい場合、行くところは整形外科、と思っていたのですが、友人に「顔の傷あとなら形成外科だよ」と言われて混乱しています。そもそも“整形”って美容整形のことじゃないんですか? 名前がそっくりなので、どちらに行っても同じだと思っていたのですが、本当は何が違うのでしょうか?

Q. 整形外科と美容外科と形成外科はどう違うのでしょうか?

地方で美容クリニックが近くにありません。一重まぶたを二重にするような「プチ整形」なら、整形外科で受けられますか? 「美容整形」や「美容外科」と「整形外科」はまったく別のものなのでしょうか? 近くの病院には「形成外科」という診療科もあるようですが、違いがよく分かりません。

A. いずれも名前の似た診療科ですが、扱う範囲は異なります

「整形外科」「形成外科」は、いずれも“形を整える”イメージがあるため混同されがちです。しかし、実は成り立ちも扱う範囲も異なる、別の診療科です。簡単そうな手術であっても、いわゆる「プチ整形」を整形外科で受けることはできません。

簡単に言えば、「整形外科」は骨・関節・筋肉・神経といった「運動器」全体を診る科です。もともとは、くる病や結核、内反足など、主に骨の変形のある子どもを治療する分野として、18世紀のフランスで始まった診療科です。その後、大人のけがや機能回復も扱うようになり、現在に至ります。日本では明治時代に訳語が統一され、「形を整えれば機能も正しくなる」という意味が込められて「整形外科」という名称になりました。

一方「形成外科」は、主に体の表面を治療する科です。二度の世界大戦での負傷者の治療をきっかけに技術が発展したと言われています。形成外科は大きく分けると「再建外科」と「美容外科」の2つに分かれます。「再建外科」は、けがややけど、がんの手術、生まれつきの異常などで損なわれた体の形や機能を、元の状態に近づけるための治療を行う科です。これに対し「美容外科」は、病気ではない部位の見た目を希望にあわせて変える治療を行います。

これらの診療科は、名称でしばしば混乱されますが、「形成外科」が1975年、「美容外科」が1978年に標榜科として認められるまでは、いずれも「形を整える」という意味で「整形外科」と名乗っていたことも一因でしょう。最近一般的に言われる「美容整形」「美容整形手術」は俗称で、正式には「美容外科手術」と呼ばれます。先述の通り、形成外科から分かれた美容外科の領域で、骨・関節・筋肉・神経を診る整形外科とは別物です。

また、費用面にも大きな違いがあります。例えば病気やけがによる障害の治療には健康保険が適用されます。一方で、二重まぶたの手術やシワ取り術、豊胸術など、美容上の理由で受ける手術には健康保険が効かず、自費診療になり、負担する費用は大きく異なるケースが多いです。

・整形外科:骨・関節・筋肉・神経などの運動器を診る
・形成外科:主に体の表面を治療する(再建外科・美容外科)
・美容外科(いわゆる美容整形):二重まぶた・シワ取り・豊胸など美容目的の手術を行う
※指の切断などの場合、骨にも皮膚にも関わるため整形外科・形成外科をまたいで治療が必要になることもある

なお、中国では整形外科は「骨科」と呼ばれています。日本でも「整形外科」を「運動器科」に名称変更する案が出たことがあるほど、診療科名と実際の中身のずれは実は根深い問題なのです。

3つの診療科の共通点を挙げるとすれば、いずれも「形を整えることで機能や満足感を高め、生活の質を上げる」という本質は同じでしょう。違いを知っておけば、困ったときに受診先を選ぶ助けになるはずです。

山田 恵子プロフィール

東京大学医学部卒業。整形外科専門医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医、認定産業医。東京大学医学部医療情報経済学客員研究員、ハーバード大学研究所客員研究員等を経て、現在、東京大学医学部附属病院整形外科。勤務医として診療にあたりながら、女性の健康をサポートする情報を幅広く発信している。
情報提供元: All About
記事名:「 「プチ整形は整形外科でOK?」「二重は美容整形科?」 整形外科・美容外科・形成外科の違いと使い分け 」