長年思い描いてきた「豊かな暮らし」が、老後生活の足かせに……。専業主婦を取り巻く環境が大きく変わる中、過去の価値観を手放せないことで思わぬ落とし穴にはまるケースが増えています。

経済ジャーナリスト・荻原博子さんの著書『定年後のお金の悩み、解決します』では、定年後に「年金+α」のお金で暮らすための資産の守り方や活かし方、健康寿命を延ばしてお金を賢く使う生活術をわかりやすく解説しています。

今回は本書より、長く専業主婦だった女性が老後を迎える前に見直すべき「価値観」と、「仕事との向き合い方」についてお届けします。

「人から尊敬される仕事」にこだわる落とし穴

妻の働き方について考えてみましょう。

今の30代から40代は、女性も働き続けるのが一般的になっています。一方で、50代から60代では、主に専業主婦として家庭を支えてきたという人も多いかもしれません。

ただ、世の中はすでに大きく変わっており、これからは女性が働くことがごく当たり前になります。

そのような話をすると、専業主婦の中には「私も働いて自己実現をしたい」と言い出す人がいます。誰でもできる仕事ではなく、人から尊敬されるような、ちょっと羨ましがられるような職業につきたいと思うのです。

けれども、それまで仕事のキャリアを積み重ねてこなかった人に、「私は安い賃金で働くような人間ではない」「掃除や洗い場の仕事はイヤだ」「人から尊敬される仕事がしたい」などと言って、仕事を選り好みしている余裕はありません。

専業主婦が当たり前だった時代はもう終わっています。専業主婦というのは、家では大きな存在であっても、社会的にはキャリアのない人と見なされがち。雇う側としては、何を任せていいかわからないので、まずは掃除や皿洗いなどの単純作業からやってもらおうとなりますが、プライドがそれを許さないのでしょう。けれども、そこを乗り越えなければ、安定した生活にはつながりません。

一方で、仕事を続けてきた女性は、仕事には嫌なことばかりが山のようにあって、プライドなどなくなって当たり前ということが身に染みています。

仕事なんてそんなものだから仕方がないと、なんとかやってきた人たちは、働くというのは基本、理想の具現化でも自己実現の場でもないということをわかっているので、どんな仕事でも続けることができるのです。

憧れの「バブル妻」が老後の足かせに?

アラフィフ世代の美しい読者モデルが登場し、ゆとりある暮らしを披露する女性誌があります。

綺麗なお家に友人を招くホームパーティー、優しい夫と過ごす豊かな休日など、誌面に登場する彼女たちの素敵なライフスタイルに憧れて、その世界観の中で生活したいと願う女性も少なくありません。

雑誌の編集者に聞いたところ、そのような理想像はもう20年ほど前から基本的に変わっておらず、それに惹かれて読み続ける読者がいると言うのです。私はそんな恵まれた専業主婦たちを「バブル妻」と呼んでいます。

けれども、世の中は変化しています。若い女性たちの価値観はすでにそのような世界にはありませんし、現実も変わっています。そのような価値観をあくまで理想の姿として憧れるのはいいですが、その世界に自分も浸りたいと考えたまま年齢を重ねると、現実や周囲の人たちとのずれに苦しむことになります。

長く専業主婦を続けていると、家庭内では自分の意見が大体通ります。外の社会ほどの理不尽な扱いを受けることはそれほどありません。そのため、社会に出た時に、自分の意見が通らなかったり、邪険にされたりして、「こんなはずじゃない」「自分はこんな扱いを受けていい人間じゃない」と不満を溜めてしまいがち。

妻が専業主婦として家庭にいた間、夫は厳しい社会を潜り抜けています。それがどれほど大変なものかを理解せずにいると、夫婦の間で意見が合わないことが出てきてしまうでしょう。

早いうちに、価値観のすり合わせをしておかないと、2人で一緒に豊かな老後を過ごすことが難しくなってしまいます。そのためにも、専業主婦だった妻にも、実際に働きに出てみることをおすすめしています。

働きに出て社会の荒波に揉まれれば、世の中がこれほど厳しい場所だったのかと実感することができて、「夫があんなに家で元気がなかったのは、仕事が大変だったからなんだ」と理解できるようになるかもしれません。

著者:荻原 博子(経済ジャーナリスト)
1954年、長野県生まれ。明治大学文学部卒業。家計経済のパイオニアとして活躍。著書に『年金だけでも暮らせます』(PHP新書)『投資なんか、おやめなさい』(新潮新書)など。
情報提供元: All About
記事名:「 「私は安い賃金で働く人間ではない」定年後に苦しむ“バブル妻”が捨てられないプライドの落とし穴 」