冬の入り口の夕方、境内から「よぉーっ、シャシャシャン」という手締めが響いてくる。あの音を聞くと、今年もあと少しなのだと気づかされます。

酉の市は、11月の酉の日に開かれる商売繁盛のお祭り。金銀や福を「かき込む」縁起物の熊手を求めて、商店主も会社員も、ただ賑わいを見に来た人も、同じ参道に集まります。

2026年の酉の市は、一の酉と二の酉の2日間。

この記事では開催日を整理したうえで、熊手発祥の社から総本社まで、商売繁盛を願うならおさえておきたい8つの神社をご紹介します。


酉の市とは?熊手が商売繁盛の縁起物になった理由


酉の市は、日本武尊(やまとたけるのみこと)をお祀りする大鳥神社・鷲神社などで、11月の酉の日に行われる祭礼です。「お酉さま」「大酉祭」とも呼ばれ、開運招福と商売繁盛を願う江戸時代からの秋の風物詩として親しまれてきました。


主役の熊手には、二つの由来が語られています。ひとつは、日本武尊が東国平定の帰途に社前の松へ武具の熊手を掛け、戦勝を祝ったという故事。もうひとつは、焼津で火攻めに遭った際、武器でもあった熊手で草をかき集めて難を逃れたという伝承です。もともとは農具や農産物を商う実用的な市でしたが、熊手が「福や金銀をかき込む」道具になぞらえられ、やがて縁起物として飾り立てられるようになりました。


熊手と並ぶ名物が、里芋の一種である八頭(やつがしら)です。ひとつの株からたくさんの芋が育つ姿が子孫繁栄に、「人の頭になる」という語呂が出世につながるとされています。なお酉の日は12日ごとに巡るため、11月に3回ある年は「三の酉」まで開かれ、火事が多いという俗信も語り継がれてきました。


2026年の酉の市はいつ?一の酉・二の酉の開催日一覧


2026年の11月に巡ってくる酉の日は2回。三の酉のない年です。多くの神社では、この日程に合わせて熊手市が立ちます。


  • 一の酉:2026年11月7日(土曜日)

  • 二の酉:2026年11月19日(木曜日)

  • 三の酉:2026年はありません


覚えておきたいのが、酉の市は日付ではなく暦の「酉の日」で決まるということ。年ごとに曜日も回数も変わります。2026年は一の酉が土曜日にあたるため、日中から混み合いそうです。二の酉は平日の木曜日で、その年の締めくくりとなるため、仕事帰りの時間帯に人出が集中しやすくなります。


また、新宿の花園神社をはじめ、本祭の前日の夜に前夜祭を行う神社もあります。この場合は11月6日(金曜日)と11月18日(水曜日)の夜も熊手市が立ちます。埼玉県内では12月の酉の日に開催する神社が多く、次にご紹介する鷲宮神社もそのひとつです。


【酉の市発祥をたどる】江戸の熊手市が生まれた社


【東京都】鷲神社(おおとりじんじゃ)


浅草の鷲神社は、全国で最も知られた酉の市が立つ社です。江戸時代には「鷲大明神社」と称され、開運を招く強運の守り神として庶民の信仰を集めてきました。


ご祭神は、開運・開拓・商売繁昌の神とされる天日鷲命(あめのひわしのみこと)と、日本武尊の二柱。社伝では、日本武尊が東国征討の帰途にこの社へ立ち寄り、社前の松へ熊手を掛けて勝ち戦を祝ったのが11月の酉の日であったことから、その日を例祭と定めたのが酉の市の起源と伝えられます。隣接する長國寺はかつての別当寺にあたり、神仏習合の名残から現在も両社寺で同時に市が開かれます。


酉の日の当日午前0時(前日深夜12時)、一番太鼓が打ち鳴らされるとともに酉の市が始まり、熊手の御守が授与されるのがこの社ならでは。社務所前の「なでおかめ」も、撫でる場所ごとにご利益が変わると伝えられ人気です。


【東京都】大鷲神社(おおとりじんじゃ)


足立区花畑に鎮座する大鷲神社は、「花畑おとりさま」の名で親しまれ、酉の市発祥の社とされています。由緒をたどるなら、まず訪れたい一社です。


ご祭神は日本武尊。東国平定の偉業への報恩感謝から祠が奉斎されたのがはじまりと伝わり、応永年間(1394年から1428年)には11月の酉の日に例祭が営まれ、門前に立つ市は「とりのまち」と呼ばれました。これが今日の酉の市の起源とされています。江戸時代にはこの花又の社を「本酉」「大酉」、浅草を「新酉」と称して区別していたことも、発祥の地であることを物語ります。


酉の市の夜には花火が打ち上げられ、静かな社叢がひと晩だけ華やぎます。お札と稲穂を添えた小ぶりの熊手「かっこめ」も授与され、最初の一歩にもぴったりです。


【規模で選ぶ】関東三大酉の市に数えられる社


【東京都】花園神社(はなぞのじんじゃ)


新宿総鎮守の花園神社は、浅草・府中と並ぶ関東三大酉の市のひとつ。繁華街のただ中で開かれるため、仕事帰りに立ち寄れる通いやすさを誇ります。


ご祭神は倉稲魂命(うかのみたまのみこと)、日本武尊、受持神(うけもちのかみ)の三柱。徳川家康の江戸入府以前から鎮座していたと伝わり、内藤新宿が開かれてからは町の守り神として崇敬を集めてきました。酉の市は、かつて境内社であった大鳥神社のご祭神・日本武尊にちなみ、明治時代から尊の命日とされる11月の酉の日に営まれるようになったものです。


この社の酉の市に欠かせないのが、参道脇に立つ見世物小屋です。全国でも数少なくなった興行が今も掛かり、怪しげな看板の前で足を止める人が絶えません。


【東京都】大國魂神社(おおくにたまじんじゃ)


府中の大國魂神社は、約1900年の歴史を持つとされる武蔵国の総社。三大酉の市のなかでも境内が広く、ゆったりと熊手を選びたい方に向いています。


ご祭神は、福神・縁結び・厄除けの神として知られる大國魂大神(おおくにたまのおおかみ)。酉の市は、拝殿の西側に鎮座する末社・大鷲神社の例祭として営まれます。大鷲神社はかつて武運長久の神として武士の信仰を集め、のちに庶民のあいだで開運の神として広まりました。江戸時代には商人や水商売の人々に加え、豊作を願う農民にも親しまれてきた歴史があります。


当日は長い参道の両脇に露店が並び、おかめ面や米俵、招き猫、千両箱を飾った熊手が壮観です。神楽殿では江戸の里神楽も奉納されます。


【総本社をたずねる】お酉さま信仰の源へ


【大阪府】大鳥大社(おおとりたいしゃ)


堺市に鎮座する大鳥大社は、全国の大鳥神社と大鳥信仰の総本社とされる和泉国一之宮。関東中心の行事と思われがちな酉の市ですが、その信仰の源はこの地にあります。


ご祭神は日本武尊。伊勢国能褒野(のぼの)で亡くなった尊の御魂が八尋(やひろ)の白鳥となって飛び立ち、大和の琴引原、河内の古市を経て、最後に舞い降りたのがこの地であったことから社が建てられたと伝わります。白鳥が降り立った際、一夜にして樹木が生い茂ったという伝説から、神域は「千種の杜(ちぐさのもり)」と呼ばれています。


うっそうとした鎮守の森が凛とした空気を保つ広大な境内も見どころ。御朱印には白鳥伝説にちなむ「八尋白鳥」の印が押され、酉の日に参拝する「酉の日参り」も行われています。


【埼玉県】鷲宮神社(わしのみやじんじゃ)


久喜市の鷲宮神社は「関東最古の大社」「お酉様の本社」と称される古社。11月に予定が合わなかった方に、もうひとつの機会を残してくれる神社でもあります。


ご祭神は天穂日命(あめのほひのみこと)と、その御子である武夷鳥命(たけひなとりのみこと)、そして大己貴命(おおなむちのみこと)。かつては「鷲宮大明神」「大酉元祖」とも称され、酉の市はもともとこの地で栄えたものの、江戸へ分祀されて本家を譲ったという伝承も残ります。関東神楽の源流といわれる鷲宮催馬楽神楽(さいばらかぐら)は国の重要無形民俗文化財です。


この社の大酉祭が開かれるのは、11月ではなく12月の初酉の日。2026年は12月1日(火曜日)にあたります。熊手を求める露店が社頭に並び、神楽の音が師走の境内に響く一日です。


【街に根づいたお酉さま】地元で愛される熊手市


【東京都】大鳥神社(おおとりじんじゃ)


目黒駅からほど近い大鳥神社は、大同元年(806年)の創建と伝わる目黒区最古の神社。最も古い江戸図とされる長禄の江戸図に「鳥明神」として記され、江戸九社のひとつに数えられてきました。


ご祭神は日本武尊で、国常立尊(くにのとこたちのみこと)と弟橘媛命(おとたちばなひめのみこと)を相殿にお祀りしています。日本武尊が東征の折にこの社へ立ち寄り、部下の眼病平癒を祈願したところ願いが叶ったことから「盲神(めくらがみ)」と呼ばれ、それが訛って「目黒」という地名になったという説が残る、街の名の源となった神社です。


酉の市では御神前に八頭の芋と熊手が奉られ、社殿で太々神楽の熊手の舞が奉納されます。「おおとり」の響きが大きく利を得る「大取」に通じるとされ、商売繁盛の神として信仰されてきました。


【神奈川県】金刀比羅大鷲神社(ことひらおおとりじんじゃ)


横浜市南区に鎮座する金刀比羅大鷲神社は、「横浜のお酉さま」として知られ、浅草・堺と並んで日本三大酉の市に数えられることもある一社です。


大鷲神社のご祭神である天鳥船命(あめのとりふねのみこと)は、その御名にちなんで宝を運ぶ鳥船、すなわち鳳凰や大鷲と結びつけられ、十二支の酉とも深い関わりを持つと伝えられます。酉の市はもともと「鳥街(とりまち)」とも呼ばれた大鷲神社の例大祭で、古くは武家の祭礼でしたが、やがて商人や花街の人々のあいだに開運守護の信仰として広まりました。


熊手は「酉(鷲)が取る」に通じることから福をかき集める縁起物とされ、開運守を添えた授与品も用意されます。当日は周辺道路に交通規制が敷かれるほどの人出です。


熊手を授かる前に知っておきたい酉の市の作法


熊手の選び方と、粋な受け取り方


熊手選びには、江戸から続く流儀があります。最初から大きなものを求めず、小さめのものから始めて翌年から少しずつ大きくしていくのが「運を育てる」買い方とされてきました。商いが軌道に乗るのと歩調を合わせて、熊手も育っていくという考え方です。


  • 初めての年は無理をせず、手に持てるサイズから始める

  • 翌年以降は前の年より少し大きなものを選び、福を積み重ねる

  • おかめ、招き猫、小判、米俵など、願いに合う飾りが付いたものを選ぶ

  • 熊手商とのやり取りを楽しみ、まけてもらった分はご祝儀として渡すのが粋とされる

  • 受け取ったら熊手商と手締めを交わし、福を呼び込む


ご祝儀と手締めは、酉の市ならではのやり取りです。値切ることそのものが目的ではなく、互いに気持ちよく一年の商いを祈るための作法だと考えると、初めてでも自然に楽しめます。


熊手を飾る場所と、一年後の納め方


持ち帰った熊手は、福をかき込む向きに気を配って飾ります。人の出入りがある場所の、目線より高い位置に据えるのが一般的です。


  • 玄関や店先など、人が出入りする場所に飾る

  • 目線より高い位置に、見上げる形で据える

  • 熊手の先が入り口を向くように向きを整える

  • ほこりを払い、一年を通してきれいな状態を保つ


そして忘れたくないのが、一年後のこと。熊手は一年間の福をかき集めてくれた縁起物ですから、翌年の酉の市に古い熊手を持参し、感謝を伝えて社寺に納めてから新しいものを求めるのが本来のかたちです。参道で去年の熊手を抱えた人と新しい熊手を掲げた人が行き交うのは、この習わしがあるからこそ。まずは参拝を済ませ、それから熊手を選ぶ順序も心に留めておきたいところです。


来年の商いを、熊手ひとつぶん大きく


2026年の酉の市は、11月7日(土曜日)の一の酉と、11月19日(木曜日)の二の酉。埼玉の鷲宮神社のように12月に大酉祭を営む社もあり、選択肢は思いのほか広がります。発祥の地をたどるなら足立の大鷲神社、賑わいを味わうなら浅草や新宿、信仰の源に触れたいなら堺の大鳥大社。同じ酉の市でも、社ごとにまとう空気はずいぶん違います。


熊手は、買った瞬間に何かが変わる魔法の道具ではありません。ただ、玄関に掲げた熊手を毎朝見上げるたび、今年こそという気持ちを思い出させてくれる存在にはなります。小さな熊手から始めて、来年はひとまわり大きく。そうやって一年ずつ福を積み上げていくのが、江戸から続く商売繁盛の願い方です。


なお、開催日程や授与品の内容は変更となる場合があります。お出かけの際は、各神社の公式サイトで最新情報をご確認ください。


YOKKA編集部

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【2026年酉の市】商売繁盛の熊手を授かる神社まとめ|開催日一覧

情報提供元: YOKKA
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