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越後の名峰弥彦山(やひこやま)の麓に鎮座し、地元の人たちに“おやひこさま”と呼ばれる「彌彦神社(いやひこじんじゃ/やひこじんじゃ)」。創建は2400年以上前で、神武天皇(じんむてんのう)の命を受け越後国(新潟県)に渡り、漁業や塩造り、酒造りを広めたといわれる天香山命(あめのかぐやまのみこと)を山頂に祀ったことが起源といわれています。
関越自動車道を東京方面から関越トンネルを抜け、新潟方面を目指してしばらく走ると左手に2つのピークを持つ山が見えてきます。平野の中にぽつんとあり、いやが上にも目に入ってきます。向かって右側が弥彦山(標高634m)、右は多宝山(標高634m)です。
「彌彦神社」へは北陸自動車道へ乗り継ぎ三条燕ICでおり、新潟平野の田園地帯を走り約13km、30分ほどで到着です。鉄道だと上越新幹線燕三条駅からJR弥彦線が出ており、終点弥彦駅で降りると1kmほどです。
無料の駐車場が朱塗りの大きな鳥居の脇にあります。それが一の鳥居(国の登録有形文化財)です。一の鳥居は8.5mほどある大きなものですが、2本の親柱が数cm浮いています。
これは、水害対策のため最初から浮かせて造営したとのことです。現在の鳥居は1916年(大正5年)に再建されたもので、補強の柱や親柱の中心部分に鉄芯が入れられ、しっかりと倒れないようになっていますが、江戸時代にはじめて建てたときはどうやって支えていたのでしょうね。まさか本当に宙に浮いていた…?
一の鳥居を入るとすぐに小川が流れていて、そこに一風変わった橋が架かっています。赤い半円形になっている屋根付きの橋です。これは「玉の橋」といい、神様だけが渡ることができる橋で、明治末までは社殿前にあったようです。
一の鳥居から、うっそうとした緑の中参道を進み、途中左へ曲がり二の鳥居を越えた正面が「随神門」、その奥が拝殿です。
彌彦神社の建物は1912年(明治45年)に、門前町から起こった大火によりほとんどが焼失してしまいました。拝殿(国の登録有形文化財)も1916年(大正5年)に建立されたものです。拝殿の奥の本殿(国の登録有形文化財)は見学はできません。
弥彦山の山頂には奥社「御神廟(ごしんびょう)」が建てられており、天香山命とその妻熟穂屋姫(うましほやひめ)が祀られています。
表参道を神札授与所から右に入ると、「日本鶏舎」と「鹿苑」があります。「日本鶏舎」には新潟県の地鶏、蜀鶏(とうまる)や尾長鶏(おながどり)、東天紅(とうてんこう)、小国鶏(しょうこく)といった珍しい日本在来のニワトリが飼育されています。動物園でもなかなか見ることのできないニワトリも多く、大変貴重です。
蜀鶏は声良鶏(こえよしどり)、東天紅(とうてんこう)と並んで日本三大長鳴き鳥のひとつで、国の天然記念物です。鳴き声は10秒以上も続きます。
「鹿苑」の鹿はフェンス越しに眺めます。エサをあげることができますが、あげられるものは何かを事前に社務所に問い合わせてください。
随神門への階段の手前を右に入ると、摂社(せっしゃ)、末社(まっしゃ)と呼ばれるこぢんまりした社が並んで建っています。摂社とはご祭神の子孫の神様を祀る神社で、末社は彌彦神社とゆかりの深い神社の分社です。
真ん中にある摂社“勝(すぐる)神社”は、天香山命の5男、建田背命(たけたせのみこと)を祀っている神社です。ご利益は勝負運ではなありませんが、隣接する弥彦競輪場の勝負師たちが“勝”を願って参拝に訪れるそうです。
一番右側にある茅葺きの社は十柱(とはしら)神社で、唯一明治の大火で焼失しませんでした。1694年(元禄7年)に長岡藩主牧野氏が奉納したもので、国の重要文化財に指定されています。十柱神社と呼ぶようになったのは明治以降で、天香山命と信濃川治水工事にかかわる土・水・山・野・海・川などの神様をあわせて10神を一緒に祀っています。
二の鳥居の右側に何本もの枯れた幹から枝を伸ばしている大木があります。椎(しい)の木で彌彦神社のご神木です。ご神木となった由来は「天香山命が持っていた椎の杖を、地面に立てると、そこから芽を出した」というもので、彌彦神社の場所がここに定められたとされています。
この椎の木は明治の大火のとき、火に包まれ枯れてしまったと思われていましたが、脇から次々と芽を出し復活しました。そのことから不老長寿の木として崇められています。すごい生命力ですね。
国の登録有形文化財である手水舎(ちょうじゅや、てみずしゃ)の近くに、赤茶けた大きなタンクが展示されています。一見神社とは関係ないもののように見えますが、歴史的に深く関係がある遺産です。
新潟県は日本一の原油・天然ガス産出県です。今でも少なくなりましたが、いくつかの油田があります。油田は最盛期の昭和30年頃までは彌彦神社近くの海岸に多くあり、掘削の前には必ず彌彦神社にお参りして、油田発見と安全を祈願していました。
このタンクは明治時代に石油会社が使っていた日本初の石油精製装置で、日本に2台しか残っていないため本当に貴重な産業遺産です。
「彌彦神社」のシンボルはウサギです。表参道のお土産店にはかわいいウサギの形をした「玉兎」が売られています。「その昔弥彦山に住んでいたウサギが、夜な夜な里に下りてきて作物を食い荒らし、農民を苦しめていました。そこで、天香山命がウサギたちを集めてお説教したところ、里に下りてこなくなった」という当地に伝わる伝説が元になったお菓子で、江戸時代には造られていたようです。
https://www.yahiko-jinjya.or.jp/
弥彦山山頂に向かうには、拝殿の右脇からは奥社「御神廟」に向かう登山道があります。弥彦山は634mとそれほど高い山ではありませんが、歩いて登るにはしっかりとした装備が必要です。
簡単に登るには、彌彦神社から10分ほどのところにある山麓駅から「弥彦山ロープウェイ」を利用します。山頂駅から御神廟へは徒歩で約15分、のんびり歩ける距離です。
山頂には展望レストランもあり、目の前に日本海が広がります。
「弥彦山パノラマタワー」は弥彦山スカイライン駐車場、標高約520m地点に建つ展望タワーです。展望室がゆっくり回転しながら登って行き、最高点は地上約100m、ほぼ弥彦山と同じ標高になります。360度の大パノラマが楽しめ、見通しのよい日には佐渡島まで眺望できます。往復は約8分です。
https://www.hotel-juraku.co.jp/yahiko/
余暇プランナー
雑誌などの取材や撮影で日本全国まわっていたら、いつのまにか47都道府県制覇してました。取材して歩く中で必ず行くのが神社。というのも祖父が仏式から神式に変えたため、行事はいつも神社か神主が来て祝詞を上げるという家柄、お寺には縁がなく、どうしても神社に親しみを感じてしまいます。参拝すればやはりお願い事は必須です。でも神様だって得手不得手はあるので、その神社の神様が一番叶えてくれそうなお願いをすることにしています。